空き家の年間の維持費は約30万くらいって本当?
「空き家の維持にかかる年間費用総額とその内訳は?」
「空き家を維持するうえで注意すべきことや放置するリスクは?」
「空き家を有効活用する方法が知りたい」
空き家は、たとえ使っていなくても、所有しているだけで維持費がかかります。
本記事では、空き家の維持費について、網羅的に解説していきます。
空き家を何とかしたい、空き家を活用して利益を出したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
空き家を放置するリスク
空き家を放置すると、維持管理費や固定資産税の支払いなどの経済的負担が発生するだけでなく、資産価値の低下や火災、倒壊などのリスクが高まります。
また、犯罪の温床になりうるという点でも周辺環境への悪影響があり、行政からの指導や勧告を受ける可能性もあります。
くわえて、特定空き家に指定されると固定資産税が増額される可能性もあるため、放置せず適切な対策を取ることが重要です。
関連記事:空き家の放置リスクとは?手放したい方におすすめの処分方法5選
空き家の維持には費用がかかる?
空き家の維持費用には、いくつかの主な費用がかかります。
まず、固定資産税や都市計画税は、所有する空き家の価値に基づいて発生する税金です。
所有者は所有地や建物の評価額に応じて支払う必要があります。
次に、空き家を保護するための火災保険料です。
災害や事故による損害をカバーし、所有者の財産を守る役割があります。
さらに、空き家に必要な水や電気の利用料金。
定期的な水の使用や電気の点灯を維持するために支払われます。
最後に、管理費用として、空き家の管理・維持に関連するさまざまな費用がかかります。
たとえば、清掃や草取り、定期的な点検や修理などのために発生するコストです。
これらの費用は、少なくとも年に20万円程度はかかると見積もられており、場合によっては100万円弱ほどかかります。
詳しくは後述します。
空き家の所有者は、これらの費用を考慮し、定期的な維持費用を支払って、空き家を適切に管理する必要があります。
関連記事:空き家を管理する方法と注意したい潜在リスク・コストと対策方法
空き家の維持にかかる年間費用総額とその内訳
空き家の維持にかかる年間費用総額は、およそ20〜100万円です。
ここからは、以下の6つに大別して内訳を見ていきます。
- 清掃費
- 修繕費
- 税金
- 水道・光熱費
- 保険料
- 交通費
それぞれ確認してください。
清掃費
空き家の維持費用には、清掃費も含まれます。
空き家は長期間使用されていないため、ホコリや汚れ、ゴミがたまります。
これらをきれいにするために、定期的な清掃が必要です。
清掃業者に依頼する場合、人件費や清掃道具の使用料などがかかります。
清掃費用は、空き家が汚れた状態を防ぎ、環境を清潔に保つために必要な費用です。
清掃費用は他の維持費用と比較して比較的少額ですが、放置すると徐々に汚れや傷みが進行し、後の修復費用が高額になる可能性もあるため、定期的な清掃は重要です。
修繕費
空き家の維持費用として、修繕費も重要な要素です。
空き家は定期的な利用や管理が行われていないため、建物の老朽化や劣化が進行します。
壁や床の傷み、屋根の漏水、配管の老朽化などが問題となり、修繕が必要になります。
修繕費は、建物の状態や範囲によって異なりますが、建物次第で数十万円以上かかることもあります。
これには専門業者の料金や素材の費用が含まれるのが一般的です。
定期的な点検や予防メンテナンスを行うことで、修繕費を抑えることもできますが、放置すると修繕費用は増加し、建物の劣化や価値の低下を招く可能性があります。
税金
空き家の維持費用には、固定資産税と都市計画税が含まれます。
固定資産税は、所有者が所有する土地や建物の評価額に基づいて課税されます。
年に一度、地方自治体からの通知に基づいて支払われます。
都市計画税は、土地の利用状況に応じて課税される税金であり、固定資産税と一緒に徴収されることが一般的です。
これらの税金は、空き家の所有者が負担するものであり、所有地や建物の評価額に応じて異なります。
定期的に支払われるため、空き家の所有者はこれらの税金を維持費用の一部として予算に考慮しなければなりません。
以下で簡単な計算方法について説明いたします。
固定資産税
固定資産税の税率は自治体により異なる場合がありますが、1.4%が一般的と言われています。
例えば、固定資産税の評価額2,000万円の場合の空き家や建物を所有している場合、固定資産税はこのように計算します。
例)2,000万円 × 1.4% = 28万円
都市計画税
都市計画税の税率も自治体により異なる場合があります。必ず対象の自治体をご確認ください。
0.3%が一般的と言われています。
例えば、固定資産税評価額2,000万円の建物を所有している場合、都市計画税は以下の計算で算出されます。
例)2,000万円×0.3% = 6万円
また、土地が住宅用で200㎡以下の場合、固定資産税評価額が1/3に減額となる優遇措置が国から設けられています。
固定資産税評価額2,000万円の土地を所有している場合だと、都市計画税はこのように算出されます。
例)2,000万円×1/3×0.3% = 約2万円
固定資産税評価額2,000万円の建物を所有している場合
固定資産税と都市計画税で年間、約8万円がかかることになります。
水道・光熱費
空き家の維持費用の内訳には、水道・光熱費も含まれます。
空き家を維持するためには、定期的な水道や電気の使用が必要です。
水道費は、給水会社からの基本料金や使用量に応じた従量料金から成り立ちます。
光熱費は、電気やガスの使用料金であり、空き家の規模や使用状況によって異なります。
年間で計算すると、これらの費用はおおよそ3万円弱ほどになることが多いです。
電気やガスの使用量を最小限に抑えるためには、不要なライトや電化製品の使用を避けることや、省エネ対策を行うことが重要です。
これらの費用は、空き家の所有者が維持費用の一部として考慮する必要があります。
保険料
空き家の維持費用には保険料も含まれます。
保険料は、空き家を保険でカバーするために支払われる費用です。
空き家は、放置されることにより火災や盗難のリスクが高まります。
そのため、所有者は保険に加入することが一般的です。
保険料は、保険の内容や保険会社によって異なりますが、年間で1万~5万円程度です。
保険に加入することで、火災や盗難などのリスクに備えることができます。
ただし、保険料は維持費用の一部として予算に考慮する必要があります。
また、空き家の状態を適切に管理し、防犯対策を行うことで、保険料の節約にもつながります。
交通費
空き家の維持費用の一部として考慮される「交通費」は、所有者が空き家の管理や点検のためにかかる交通費を指します。
所有者が遠方に住んでいたり、空き家が都市や田舎の中心地から離れている場合、空き家への交通手段(車、電車、バスなど)を利用する必要があります。
これには、ガソリン代、公共交通機関の運賃、駐車料金などが含まれるのが一般的です。
交通費は、定期的に発生しうるだけでなく、突発的な点検や手続きのためにも発生します。
所有者は、交通費の料金を予算に含め、維持費用の一部として確保する必要があります。
管理費
所有者が空き家の維持のために、自分で管理できれば管理費はかかりません。しかし、遠方に住んでいるなど、自力での管理が難しいこともあるでしょう。
このような場合、空き家の管理を管理会社へ委託するという選択肢もあります。
管理会社へ委託すると、室内の換気や点検、通水や雨漏りの確認、災害時の見回りなど、空き家の管理を代行してくれるので遠くに住んでいても安心です。
費用はサービス内容によって変わりますが、1カ月5,000円~10,000円、年間で60,000円~120,000円ほどになります。
適切な空き家の管理は、不動産価値にも影響するため、年間予算に含めておきましょう。
空き家を所持することで年間どれだけコストがかかる?
清掃費:0(自分で行う場合)~30,000円(3ヶ月に1回業者に委託を想定)/年
修繕費:0(自分で行う場合)~100,000円(業者に委託)/年
税金:80,000円/年
水道・光熱費:3,000円/年
保険料:10,000~50,000円/年
交通費:20,000円(車で行ける同県内・3ヶ月に1回の訪問を想定)/年
管理費:60,000~120,000/年
上記を合計すると約403,000円です。毎年40万円近くの出費が出ることがわかります。
そのため空き家を所持していることは年間のコスト的にも馬鹿にならないことがわかりますね。
空き家を維持するうえで注意すべきこと
空き家は適切に維持しないと、さまざまなリスクが生じます。税金面で損など、場合によっては近隣の住民とトラブルになることも考えられます。
空き家を維持するのであれば、つぎのような点に注意しましょう。
- 建物の破損や倒壊で保安上の危険がある
- ゴミの放置による異臭や動物・虫の繁殖など衛生上有害である
- ゴミや落書きの放置や立木・雑草の繁殖など景観を著しく損なう
- 不審者の侵入や落雪など生活環境の保全に著しい悪影響がある
この状態が続くと「空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」により特定空き家として認定されます。
空き家を維持する際には、定期的に利用するか、保安上・衛生上のリスクに十分注意しつつ、特定空き家にならないようにする必要があります。
また、空き家が自宅から遠いなどの理由で管理が難しく、もし管理会社にお願いする場合は委託料も気にしなければなりません。
管理会社やサービス内容にもよりますが、1カ月5,000円〜1万円程度が目安です。
仮に1カ月1万円とすると、年間で12万円かかることになります。
サービス内容は、状況確認、換気、雨漏り確認、水道・電気のチェック、郵便物の回収などが挙げられます。
関連記事:空き家の運用方法や注意点を紹介
特定空き家への指定
通常、不動産を所有していると固定資産税がかかります。しかし、空き家の場合「住宅用地の特例措置」が適用され、きちんと管理・維持すれば固定資産税が優遇されます。空き家が建っている土地の固定資産税が最大6分の1、都市計画税が3分の1になるというものです。
ただし、空き家を放置していると「空家等対策特別措置法」によって、「特定空家」に指定され、この税金の優遇が受けられなくなります。
国土交通省は、特定空家に指定される条件を次のように定義しています。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態”
(引用:国土交通省 空家等対策特別措置法について)
特定空き家に指定されても、指摘された箇所をきちんと修繕すれば、特定空き家の指定を解除できますが、できるだけ上記のような状態にならないように適切に管理しましょう。
近隣トラブル
空き家の管理が行き届かず、特定空き家に指定されるような状態になってしまうと、近隣住民とトラブルになることがあるため、注意しましょう。
たとえば庭の手入れ不足による多量の雑草は、害虫の発生や防犯面での不安を招きます。また経年劣化による家屋や塀が倒壊するなど、隣家に被害が出てしまうことも考えられます。このようなトラブルにおいての責任は、空き家の所有者が負うことになります。損害賠償を求められるケースもあるため、管理が難しい場合は、管理会社に委託するなど、適切に管理しましょう。家屋の劣化も防げます。
空き家を有効活用する方法
最後に、空き家を有効活用する方法について紹介して終わります。
一般的には、以下の3つのいずれかが推奨されます。
- 売却する
- リノベーションする
- 建て替える
- 更地にする
それぞれ確認してください。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
売却する
空き家を有効活用するのに一番手軽な方法は売却することです。売却すれば、空き家の年間維持費約40万円を支払う不安もなくなります。
人が住まなくなった家はどんどん劣化していきます。また、戸建の場合、築年数が20年を超えると、建物の価値はほとんどなくなり、古家付きの土地(現状渡し)としての価値しかなくなります。
そのため、売却するなら早いに越したことはありません。空き家になって3年以内には決断しましょう。
リノベーションする
空き家をリノベーションして賃貸やコワーキングスペースとして貸し出す方法は、地域のリソースを活用し、新たな活性化を促す有効な手段です。
リノベーションによって空き家を魅力的なスペースに変えることで、住居や働き場所を求める需要に応えることができます。
賃貸として貸し出すことで地域に新たな住民を呼び込み、地域経済の活性化にもつながるでしょう。
また、コワーキングスペースとして貸し出せば、フリーランスやスタートアップ企業などの働き方の多様化に対応し、交流やアイデアの創出を促進します。
これにより、地域の文化や産業の発展に寄与することも期待できるかもしれません。
リノベーションを通じて、空き家問題の解消と地域の活性化を同時に実現することが可能です。
建て替える
空き家を建て替えてコインランドリーなどの施設にすることは、地域の需要に合ったサービスを提供し、地域の便益を向上させる効果的な方法です。
建て替えにより、老朽化や機能不足の問題を解消し、新たな施設を提供できます。
コインランドリーは、忙しい現代社会で洗濯に時間を割けない人々にとって便利な利用先です。
とくに、近隣に学生寮や住宅が集中している地域では需要が見込めます。
地域の住民が利用することで、近隣の経済活動が活性化し、地域の魅力向上にも寄与できるでしょう。
さらに、建て替えによって新たな雇用も生み出され、地域の雇用促進にも一役買います。
空き家を建て替えることで、地域のニーズに合わせた施設を提供し、地域経済の活性化に貢献できます。
更地にする
空き家を更地にして駐車場などのニーズに応えることは、地域の利便性向上や収益の確保につながる有効な方法です。
とくに、都市部や商業地域では駐車場不足が問題となっていますが、空き家を更地にすることで駐車スペースを増やすこともできます。
これにより、地域の住民や来訪者は車を停める場所に困ることがなくなり、街の交通や商業活動が円滑化するでしょう。
また、駐車場の運営によって収益を得ることも可能です。
地域住民や企業からの駐車料金により、空き家の維持費の一部を捻出できるだけでなく、地域の財源としての活用もできます。
更地にすることで、空き家が問題となっている地域の景観も改善され、街全体の魅力が高まることでしょう。
関連記事:空き家の解体費用の相場を紹介
空き家の維持費はおよそ20〜100万円
空き家の維持には、およそ20〜100万円の費用がかかることがあります。
これには、定期的な点検や清掃、防犯対策、保険料、税金などが含まれます。
また、建物や設備の劣化や修繕が必要な場合は、それに応じた費用も発生します。
ただし、具体的な金額は物件の大きさ、築年数、使用状況などによって異なるため、個別の見積もりが必要です。
適切な維持管理を行うことで、長期的な経済的負担を軽減できます。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
この記事の監修者
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。