空き家を売りたいときの売却方法と流れ・メリットと注意点
空き家とは、1年以上居住者や使用者がいない状態の建物を指します。空き家状態のまま放置していると、建物の老朽化や倒壊のほか、害虫の発生やその他のリスクが発生します。
近年では空き家を有効活用するさまざまな方法が登場しており、「空き家バンク」もその一つです。
この記事では、空き家を売りたい方のために売却に関する方法・メリット・売却の流れを紹介します。売却といってもいくつかの方法があり、手順も異なります。空き家の売却を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
空き家の売却方法
空き家の売却方法は、空き家とその敷地をそのまま売却する方法、解体し更地にしてから売却する方法の2通りに加えて、不動産会社への買取依頼や空き家バンクを経由した売却が選べます。
それぞれの売却方法についてみていきましょう。
関連記事:空き家が売れないケースとは?売却のコツと具体的な方法について
方法①そのままの状態で売却する
空き家と敷地をそのままの状態で売却する方法は、建物を壊したり内部をリノベーションしたりする手間をかけなくて済むため、コストを抑えたい場合に適しています。
ただし、そのままの状態ということで建物の劣化(老朽化)程度によっては買い手がつきにくい場合も少なくありません。
倒壊や破損した建物はそのままでは住めないので、必ず修繕や建て直しをしなければならず、居住にかかる費用を考えて購入を躊躇する可能性があります。
築年数に関わりなく売却が成功するケースもあります。保存状態の良い古民家であれば、経年劣化も含めた味わいを求めて買い手がつくことがあります。都心部や大都市圏にある空き家も、立地条件によってはすぐに買い手が見つかる可能性があるでしょう。
方法②空き家を解体してから売却する
空き家と土地がそのまま売れない場合は、解体して更地にすると売却しやすくなります。
建物がある状態では、その建物が使えるかどうかが重視されますが、更地なら購入後すぐに土地そのものを使えます。土地の特徴や瑕疵を把握しやすく、宅地として登録されている土地を農業用にすることも可能なため(場所によります)さまざまな買い手の目に留まりやすいのです。
空き家を解体するだけではなく、解体後に瓦礫を撤去してきれいに整地すると、さらに買い手がつきやすくなります。整地とは、建物が残っていない状態にしてから土地を地固めし、平坦にならす作業です。
整地をすることで土地全体の外観が整うので、次の買い手や土地の購入希望者からも好印象が得られるでしょう。
方法③不動産会社に買い取ってもらう
所有者自身で空き家の買い手を探す見込みがなければ、空き家のある地域の不動産を扱っている業者などに相談し、買取を検討するのも一つの方法です。
同じ不動産会社でも、仲介や直接買取など提供しているサービスは異なります。どのような相談が可能なのか、どのような物件を扱っているのかを確認し、不明な場合はメールや電話で連絡のうえ、空き家の売却が可能か確認をとってください。
不動産会社の多くは新築・中古に関わらず多くの建物や土地を扱っており、空き家もその一つです。特に近年では、空き家を有効活用するために政府や自治体も取り組みを始めている状況です。
買取相談に応じている会社は物件の確認・査定を行っているので、物件を手放したい旨を伝えてみてはいかがでしょうか。
方法④空き家バンクを利用して売却する
空き家バンクとは、日本全国の自治体がそれぞれの地域の空き家を所有者から募り、情報を掲載する制度・サービスの名称です。
かつては空き家問題を解消するためのサービスとして提供されてきましたが、現在では地方への移住・定住やワーケーションの促進、宿泊施設などにも活用されるようになりました。
空き家バンクに登録された建物情報はリアルタイムに掲載され、買い手が見つかったものは掲載から外れていきます。所有者自身で買い手を探す必要がなく、売りたい人と買いたい人の双方をサイト上でマッチングする仕組みです。
空き家バンクを活用すれば、専用のホームページで常時買い手を募集できるので、不動産会社に依頼せず空き家バンクから売却が進められます。
空き家を売却するメリット
空き家は老朽化するほど資産としての価値が下がってしまいます。メンテナンスにもコストがかかるため、建物・土地はできるかぎり有効に活用したいところです。
ここからは、空き家を売却する際に期待できる3つのメリットを確認していきましょう。
メリット①維持費がなくなる
空き家を売却すると、税金や管理費用といったさまざまな維持費がかからなくなります。
空き家を所有し続けるためには、土地や建物などの不動産にかかる「固定資産税(都市計画税)」に加えて、火災保険・水道・電気・ガスなどの契約が必要です。
定期的に敷地内を回り、ゴミやホコリをきれいに取り除くために清掃も行わなければなりません。所有者自身ではなく管理会社に依頼する場合は管理費用として請求されます。
設備が壊れていたり屋根や外壁が剥がれてきたりした場合は、そのまま放置しているとさらに破損が進んでしまうため、修繕をしなければなりません。
建物の劣化具合や立地環境にもよりますが、高額な管理費用がかかってくる場合もあるため、維持費がかからないように売却を進めたいところです。
メリット②管理の負担を軽減できる
空き家といっても、清掃や設備のチェックは定期的に行わなければなりません。具体的には、以下の項目を一つずつ満たしていく必要があります。
【空き家管理のチェック項目】
管理前の準備 |
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修理・相談先の確認 |
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建物の老朽化の防止 |
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トラブルの早期発見 |
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周辺環境への配慮 |
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空き家管理では、清掃や点検作業の前に服装や清掃用品の準備をしなければなりません。漏電や故障など、緊急に対応が必要になった場合に備えて業者への連絡先も控えておく必要があります。
敷地と建物内の見回り以外には、町内会や周辺地域への連絡・挨拶が必要になる場合もあります。空き家の売却では、建物や土地を次の所有者に引き渡すため、維持管理のための時間や費用は一切発生しません。
メリット③近隣住民への迷惑を減らせる
空き家を売却すれば、メンテナンスや清掃にかかる負担だけではなく、近隣に迷惑をかける心配もなくなります。
メンテナンスをしていない家は、ごくわずかなヒビ割れや歪みが原因となって老朽化していきます。地震や台風のような災害で、建物が歪んだり外壁が剥がれたりするトラブルが発生しやすく、古い木造家屋では倒壊のおそれも出てきます。
周辺の家と距離が離れている場合でも、台風や強い風によって敷地内の物が飛ばされ、周辺の家に飛び込むおそれもあります。降雪や積雪のある地域では空き家とその敷地に雪が積もったままになり、道路を塞いだり隣家に迷惑をかけたりする場合があります。
耐震工事を施している頑丈な空き家でも、室内に湿気がこもりダニやカビが発生する、害虫や害獣がすき間から入り込んで住みつくケースが考えられます。人の居住や使用がないために、本来防げるトラブルが放置状態となり、近隣に思わぬ迷惑をかける可能性があるのです。
空き家を売却する場合の流れ
空き家を売却する方法としては、不動産会社の絞り込みと決定、査定依頼や問い合わせを経て、仲介会社の選定・売り出し価格の決定へと至ります。買い手が見つかったタイミングで交渉に入り、双方が納得すれば売買契約が成立します。
それぞれの流れを詳しくみていきましょう。
関連記事:空き家の活用方法10選!空き家を収益化をするアイディアを紹介
①査定を依頼する
まず、空き家のある場所を取り扱っている不動産会社を探します。地域密着型の会社から、全国の不動産を幅広く扱っている大手まで、いろいろな不動産会社をチェックしてください。
会社選びのポイントとして、古い不動産物件や空き家の売買に実績があるか、強みをもっているかを確認しましょう。
古い空き家については、会社によっては「売却が難しい」「売却できるかがわからない」と伝えられる可能性もあります。築古や経年劣化の程度が激しい空き家については、取り扱いが可能かをまず確認するようにしてください。
不動産会社が見つかったら、空き家を売却したいという旨を伝えます。申し込み後に、現地調査を行わない机上査定か、または実際に建物の状態を目視する訪問査定が行われます。
②仲介会社を選定する
査定は1社だけではなく、複数の会社に依頼すると良いでしょう。同じ建物でも、会社によって見積もり額が変わる場合があります。
3社程度から見積もりをとり、その後売買を仲介してくれる1社を選定します。個人売買は専門的な知識やリスク回避のための対策が必要なため、慣れていない方は仲介を依頼しましょう。
不動産取引では、売り手と買い手の間で仲介を行うために媒介契約を締結します。媒介契約には3つのタイプがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
【媒介契約の種類】
一般媒介契約 | 空き家の所有者が複数の不動産会社と契約を結ぶ |
専任媒介契約 | 1つの不動産会社のみと契約するが、所有者自身でも買い手を探せる |
専属専任媒介契約 | 1つの不動産会社のみと契約し、所有者は買い手を探せない |
一般媒介契約とは、所有者自身が複数の不動産会社と契約し、買い手探しを依頼できる方法です。所有者自身でも買い手を探せるので、自由度の高い方法といえるでしょう。
専任媒介契約・専属専任媒介契約はどちらも1社のみと契約します。専属専任媒介契約は買い手探しも含め、すべてを不動産会社に依頼する方法です。所有者側でも買い手を探したい場合は、専任媒介契約が適しています。
場合によっては、仲介形式ではなく買取を提案されることがあります。買取とは、不動産会社が直接空き家とその敷地を買い取って、改修や解体を施して売り出す方法です。
仲介と買取のどちらを選ぶかは、空き家の状況や所有者の意向にもよるため、話し合いによって納得をしたうえで、方向性を決定してください。
③売り出し価格を決定する
査定の結果を受けて、売り出し価格を決定します。売り出し価格が決まったら、不動産会社が責任をもって空き家の情報を掲載し、買い手を募ります。
不動産会社のホームページでは、住所・売り出し価格・土地面積・建物面積・間取り・築年月が画像とともに掲載されています。
外壁や屋根の再塗装・リノベーションやリフォームの有無・車庫やガレージの有無・用途地域・接道状況といった細かい情報が記載されていれば、買い手とのマッチングがスムーズです。
老朽化した空き家などは買い手がつくまでに数ヶ月以上の期間がかかる場合もあるため、時間をかけたくない場合は売り出し価格の変更や買取も含めて検討しましょう。
④買主と交渉する
買い手が購入を申し出ると、不動産会社が仲介に入ります。売り手に対して買い手がついた旨を連絡し、売り手と買い手の間で売買契約を結びます。
売買契約の際には、契約書への押印や手付金の受領、仲介手数料の支払い(50%)を順に行い、物件の引き渡しへ移ります。
⑤契約後に引き渡す
契約が成立したら、物件を買い手に引き渡します。不動産会社に成功報酬として仲介手数料の残り50%を支払い、鍵の引き渡しを行って空き家の売却は終了します。その後固定資産税や確定申告を行い、精算を済ませればすべて完了です。
空き家の売却にかかる費用
空き家の売却にはさまざまな費用がかかります。仲介手数料・相続登記費用・印紙税について確認していきましょう。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に仲介を依頼する際に支払うサービス料金です。
数多くの不動産を扱う会社が、所有者の資産である土地や空き家の情報を適切に取り扱い、責任をもって買い手を探すために支払う料金でもあります。
相続登記費用
相続登記費用(相続による所有権移転登記)とは、土地・建物の所有者が亡くなった際に、遺産として引き継いだ方の名義に変更する手続きのことです。※1
申請方法は相続人が申請書を作成して申請する「本人申請」と、司法書士に代理を依頼する「代理申請」の2種類に分けられ、費用には以下の項目が含まれます。
【相続登記費用】
- 登録免許税
- 書類の取得費用
- 司法書士への報酬
- 申請にかかる交通費など
上記のうち、登録免許税は不動産の固定資産税評価額に0.4%の税率がかかります(2025年3月31日までは免税)。免税を受けるためには、免税の根拠となる法令条項を申請書に記載します。
不動産の価額が100万円以下であれば、2025年3月31日までは登録免許税の免税措置が適用になりますが、相続登記自体は必ず行わなければなりません。※2
登記が完了していないと相続した空き家を売却できないため、早めに登記の手続きを済ませておきましょう。
※1参照元:法務省「相続登記はお済みですか?」
※2参照元:法務省「相続登記の登録免許税の免税措置について」
印紙税
印紙税とは、契約書や領収書の作成時に文書に課される税金のことです。
印紙税法(別表第1に挙げられている課税物件表に詳細が記載)では、主に商取引で交わされる文書が課税の対象となります。このうち、不動産取引では「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機又は営業の譲渡に関する契約書」や「地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」が該当します。
空き家を売却し、取引金額が1万円以上であれば必ず印紙税が発生します。売却価格が600万円の場合、印紙税は5,000円です(2024年1月現在)。※
【印紙税(本則税率と軽減税率)】
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
※参照元:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
不動産譲渡の際にかかる印紙税は、2024年3月31日までに作成される10万円以上の契約書について軽減措置の対象となっています(2024年4月1日以降は、以下の本則税率に戻ります)。
費用を抑えて空き家を売却するためのコツ
空き家の売却時、少しでも費用を抑えて売却を進めるためには、公的制度や優遇税制の利用を検討してみてください。
相続または遺贈によって取得した家屋・敷地等を2016年4月1日から2027年12月31日までの間に売却し、さらに一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得金額から最高で3,000万円まで控除が受けられます。※1
また、空き家を解体して売却する際に、地方自治体が設けている補助金制度を利用できる場合があります。一例として、埼玉県秩父市では危険な空き家を解体し、敷地の有効活用を進めるために、最大30万円の「空き家解体補助金」を助成しています。※2
関連記事:空き家の解体費用の相場を紹介
※1参照元:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
※2参照元:秩父市「空き家解体補助金を助成します」
空き家を売却する場合の注意点
空き家の売却方法として、「名義変更の確認」「地盤の状態確認」「更地にするタイミング」の3点が重要です。それぞれの注意点について、詳しくチェックしていきましょう。
関連記事:空き家の解体に補助金が使える?その理由と条件について解説
注意点①空き家の名義変更がされているかを確認する
空き家の名義変更が行われているか、早めに確認をしてください。
共有名義の場合は全員の合意がなければ、すべての土地や建物を売却することができないため、共有者全員に連絡のうえ、売却の相談を行ってください。
注意点②地盤の状態を確認する
空き家に多くみられる「隠れた瑕疵」の問題にも注意が必要です。
隠れた瑕疵とは、見た目だけではわからない欠陥部分のことで、具体例では泥や水分を含んだ「軟弱地盤」が挙げられます。
土地の特性にもよりますが、地盤の状態が悪ければ買い手がついた後に瑕疵担保責任を求められる可能性が高くなります。地盤に問題があるときは事前に調査のうえ、告知を行って買い手の了解を得る必要があります。
注意点③更地にするタイミングを図る
更地にして売却する場合は、タイミングをよく考えて実施しましょう。
建物を壊し更地にすると、「住宅用地の特例」と呼ばれる税の軽減措置の対象ではなくなってしまいます。すでに住宅と呼べる建物が存在していないので、固定資産税が引き上がってしまう可能性があるのです。
固定資産税は毎年1月1日時点で土地がどのような状態であるかによって決まります。1月1日の時点で更地であると特例から外れてしまいますので、タイミングに注意してください。
さまざまな方法を検討して空き家を活用
今回は、空き家の売却方法や売却の流れ、売却にかかる費用について紹介しました。
従来では不動産会社に仲介を依頼し、買い手を募集する方法が一般的でしたが、現在では日本全国の自治体が「空き家バンク」を提供しています。
建物と土地をあわせた売却以外では、土地のみの売却や不動産会社による直接買取、空き家バンクを経由して第三者へ貸し出すことも可能です。多角的な視点で、空き家の有効活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。
空き家活用・運用の【あき家ZERO】ではオーナー様にとって利益のある空き家活用サービスをご提案・提供いたします。
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この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。