空き家を売りたいときの売却方法と流れ・メリットと注意点
空き家とは、1年以上居住者や使用者がいない状態の建物を指します。空き家状態のまま放置していると、建物の老朽化や倒壊のほか、害虫の発生やその他のリスクが発生します。
近年では空き家を有効活用するさまざまな方法が登場しており、「空き家バンク」もその一つです。
この記事では、空き家を売りたい方のために売却に関する方法・メリット・売却の流れを紹介します。売却といってもいくつかの方法があり、手順も異なります。空き家の売却を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
空き家の売却方法
空き家の売却方法は、空き家とその敷地をそのまま売却する方法、解体し更地にしてから売却する方法の2通りに加えて、不動産会社への買取依頼や空き家バンクを経由した売却が選べます。
それぞれの売却方法についてみていきましょう。
関連記事:空き家が売れないケースとは?売却のコツと具体的な方法について
方法①そのままの状態で売却する
空き家と敷地をそのままの状態で売却する方法は、建物を壊したり内部をリノベーションしたりする手間をかけなくて済むため、コストを抑えたい場合に適しています。
ただし、そのままの状態ということで建物の劣化(老朽化)程度によっては買い手がつきにくい場合も少なくありません。
倒壊や破損した建物はそのままでは住めないので、必ず修繕や建て直しをしなければならず、居住にかかる費用を考えて購入を躊躇する可能性があります。
築年数に関わりなく売却が成功するケースもあります。保存状態の良い古民家であれば、経年劣化も含めた味わいを求めて買い手がつくことがあります。都心部や大都市圏にある空き家も、立地条件によってはすぐに買い手が見つかる可能性があるでしょう。
方法②空き家を解体してから売却する
空き家と土地がそのまま売れない場合は、解体して更地にすると売却しやすくなります。
建物がある状態では、その建物が使えるかどうかが重視されますが、更地なら購入後すぐに土地そのものを使えます。土地の特徴や瑕疵を把握しやすく、宅地として登録されている土地を農業用にすることも可能なため(場所によります)さまざまな買い手の目に留まりやすいのです。
空き家を解体するだけではなく、解体後に瓦礫を撤去してきれいに整地すると、さらに買い手がつきやすくなります。整地とは、建物が残っていない状態にしてから土地を地固めし、平坦にならす作業です。
整地をすることで土地全体の外観が整うので、次の買い手や土地の購入希望者からも好印象が得られるでしょう。
そのままの状態で空き家が売れない場合、室内をリフォームして印象をよくする方法もあります。壁紙や床材、水回りがきれいだと印象はずいぶん変わるでしょう。古い造りを活かして古民家風にリノベーションし、価値を高めて売却するのもおすすめです。
ただし、リフォーム費用は売主である空き家の所有者が負担しなければならないため、まとまったお金が必要となります。また、状況によってはリフォーム費用が上乗せできず利益どころかマイナスになってしまうことも考えられるため、慎重に検討しましょう。
方法③不動産会社に買い取ってもらう
所有者自身で空き家の買い手を探す見込みがなければ、空き家のある地域の不動産を扱っている業者などに相談し、買取を検討するのも一つの方法です。
同じ不動産会社でも、仲介や直接買取など提供しているサービスは異なります。どのような相談が可能なのか、どのような物件を扱っているのかを確認し、不明な場合はメールや電話で連絡のうえ、空き家の売却が可能か確認をとってください。
不動産会社の多くは新築・中古に関わらず多くの建物や土地を扱っており、空き家もその一つです。特に近年では、空き家を有効活用するために政府や自治体も取り組みを始めている状況です。
買取相談に応じている会社は物件の確認・査定を行っているので、物件を手放したい旨を伝えてみてはいかがでしょうか。
方法④空き家バンクを利用して売却する
空き家バンクとは、日本全国の自治体がそれぞれの地域の空き家を所有者から募り、情報を掲載する制度・サービスの名称です。
かつては空き家問題を解消するためのサービスとして提供されてきましたが、現在では地方への移住・定住やワーケーションの促進、宿泊施設などにも活用されるようになりました。
空き家バンクに登録された建物情報はリアルタイムに掲載され、買い手が見つかったものは掲載から外れていきます。所有者自身で買い手を探す必要がなく、売りたい人と買いたい人の双方をサイト上でマッチングする仕組みです。
空き家バンクを活用すれば、専用のホームページで常時買い手を募集できるので、不動産会社に依頼せず空き家バンクから売却が進められます。
空き家を売却するメリット
空き家は老朽化するほど資産としての価値が下がってしまいます。メンテナンスにもコストがかかるため、建物・土地はできるかぎり有効に活用したいところです。
ここからは、空き家を売却する際に期待できる3つのメリットを確認していきましょう。
メリット①維持費がなくなる
空き家を売却すると、税金や管理費用といったさまざまな維持費がかからなくなります。
空き家を所有し続けるためには、土地や建物などの不動産にかかる「固定資産税(都市計画税)」に加えて、火災保険・水道・電気・ガスなどの契約が必要です。
定期的に敷地内を回り、ゴミやホコリをきれいに取り除くために清掃も行わなければなりません。所有者自身ではなく管理会社に依頼する場合は管理費用として請求されます。
設備が壊れていたり屋根や外壁が剥がれてきたりした場合は、そのまま放置しているとさらに破損が進んでしまうため、修繕をしなければなりません。
建物の劣化具合や立地環境にもよりますが、高額な管理費用がかかってくる場合もあるため、維持費がかからないように売却を進めたいところです。
メリット②管理の負担を軽減できる
空き家といっても、清掃や設備のチェックは定期的に行わなければなりません。具体的には、以下の項目を一つずつ満たしていく必要があります。
【空き家管理のチェック項目】
管理前の準備 |
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修理・相談先の確認 |
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建物の老朽化の防止 |
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トラブルの早期発見 |
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周辺環境への配慮 |
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空き家管理では、清掃や点検作業の前に服装や清掃用品の準備をしなければなりません。漏電や故障など、緊急に対応が必要になった場合に備えて業者への連絡先も控えておく必要があります。
敷地と建物内の見回り以外には、町内会や周辺地域への連絡・挨拶が必要になる場合もあります。空き家の売却では、建物や土地を次の所有者に引き渡すため、維持管理のための時間や費用は一切発生しません。
メリット③近隣住民への迷惑を減らせる
空き家を売却すれば、メンテナンスや清掃にかかる負担だけではなく、近隣に迷惑をかける心配もなくなります。
メンテナンスをしていない家は、ごくわずかなヒビ割れや歪みが原因となって老朽化していきます。地震や台風のような災害で、建物が歪んだり外壁が剥がれたりするトラブルが発生しやすく、古い木造家屋では倒壊のおそれも出てきます。
周辺の家と距離が離れている場合でも、台風や強い風によって敷地内の物が飛ばされ、周辺の家に飛び込むおそれもあります。降雪や積雪のある地域では空き家とその敷地に雪が積もったままになり、道路を塞いだり隣家に迷惑をかけたりする場合があります。
耐震工事を施している頑丈な空き家でも、室内に湿気がこもりダニやカビが発生する、害虫や害獣がすき間から入り込んで住みつくケースが考えられます。人の居住や使用がないために、本来防げるトラブルが放置状態となり、近隣に思わぬ迷惑をかける可能性があるのです。
空き家を売却する場合の流れ
空き家を売却する方法としては、不動産会社の絞り込みと決定、査定依頼や問い合わせを経て、仲介会社の選定・売り出し価格の決定へと至ります。買い手が見つかったタイミングで交渉に入り、双方が納得すれば売買契約が成立します。
それぞれの流れを詳しくみていきましょう。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
①査定を依頼する
まず、空き家のある場所を取り扱っている不動産会社を探します。地域密着型の会社から、全国の不動産を幅広く扱っている大手まで、いろいろな不動産会社をチェックしてください。
会社選びのポイントとして、古い不動産物件や空き家の売買に実績があるか、強みをもっているかを確認しましょう。
古い空き家については、会社によっては「売却が難しい」「売却できるかがわからない」と伝えられる可能性もあります。築古や経年劣化の程度が激しい空き家については、取り扱いが可能かをまず確認するようにしてください。
不動産会社が見つかったら、空き家を売却したいという旨を伝えます。申し込み後に、現地調査を行わない机上査定か、または実際に建物の状態を目視する訪問査定が行われます。
②仲介会社を選定する
査定は1社だけではなく、複数の会社に依頼すると良いでしょう。同じ建物でも、会社によって見積もり額が変わる場合があります。
3社程度から見積もりをとり、その後売買を仲介してくれる1社を選定します。個人売買は専門的な知識やリスク回避のための対策が必要なため、慣れていない方は仲介を依頼しましょう。
不動産取引では、売り手と買い手の間で仲介を行うために媒介契約を締結します。媒介契約には3つのタイプがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
【媒介契約の種類】
一般媒介契約 | 空き家の所有者が複数の不動産会社と契約を結ぶ |
専任媒介契約 | 1つの不動産会社のみと契約するが、所有者自身でも買い手を探せる |
専属専任媒介契約 | 1つの不動産会社のみと契約し、所有者は買い手を探せない |
一般媒介契約とは、所有者自身が複数の不動産会社と契約し、買い手探しを依頼できる方法です。所有者自身でも買い手を探せるので、自由度の高い方法といえるでしょう。
専任媒介契約・専属専任媒介契約はどちらも1社のみと契約します。専属専任媒介契約は買い手探しも含め、すべてを不動産会社に依頼する方法です。所有者側でも買い手を探したい場合は、専任媒介契約が適しています。
場合によっては、仲介形式ではなく買取を提案されることがあります。買取とは、不動産会社が直接空き家とその敷地を買い取って、改修や解体を施して売り出す方法です。
仲介と買取のどちらを選ぶかは、空き家の状況や所有者の意向にもよるため、話し合いによって納得をしたうえで、方向性を決定してください。
③売り出し価格を決定する
査定の結果を受けて、売り出し価格を決定します。売り出し価格が決まったら、不動産会社が責任をもって空き家の情報を掲載し、買い手を募ります。
不動産会社のホームページでは、住所・売り出し価格・土地面積・建物面積・間取り・築年月が画像とともに掲載されています。
外壁や屋根の再塗装・リノベーションやリフォームの有無・車庫やガレージの有無・用途地域・接道状況といった細かい情報が記載されていれば、買い手とのマッチングがスムーズです。
老朽化した空き家などは買い手がつくまでに数ヶ月以上の期間がかかる場合もあるため、時間をかけたくない場合は売り出し価格の変更や買取も含めて検討しましょう。
④買主と交渉する
買い手が購入を申し出ると、不動産会社が仲介に入ります。売り手に対して買い手がついた旨を連絡し、売り手と買い手の間で売買契約を結びます。
売買契約の際には、契約書への押印や手付金の受領、仲介手数料の支払い(50%)を順に行い、物件の引き渡しへ移ります。
⑤契約後に引き渡す
契約が成立したら、物件を買い手に引き渡します。不動産会社に成功報酬として仲介手数料の残り50%を支払い、鍵の引き渡しを行って空き家の売却は終了します。その後固定資産税や確定申告を行い、精算を済ませればすべて完了です。
空き家の売却にかかる費用
空き家の売却にかかる税金や費用は以下の通りです。
おもな費用 費用の目安
譲渡所得税 保有期間5年超:15%
保有期間5年未満:30%
相続登記費用 登録免許税額:空き家の固定資産税の0.4%
必要書類の取得:1万円~2万円
相続登記申請:4万~8万円(基本的な相続手続き)
仲介手数料 ~400万円以下:18万円(上限)
400万円超:取引価格の3%+6万円
印紙税 売買金額によって異なる
一つずつ詳しく説明していきます。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に仲介を依頼する際に支払うサービス料金です。
数多くの不動産を扱う会社が、所有者の資産である土地や空き家の情報を適切に取り扱い、責任をもって買い手を探すために支払う料金でもあります。
相続登記費用
相続登記費用(相続による所有権移転登記)とは、土地・建物の所有者が亡くなった際に、遺産として引き継いだ方の名義に変更する手続きのことです。※1
申請方法は相続人が申請書を作成して申請する「本人申請」と、司法書士に代理を依頼する「代理申請」の2種類に分けられ、費用には以下の項目が含まれます。
【相続登記費用】
- 登録免許税
- 書類の取得費用
- 司法書士への報酬
- 申請にかかる交通費など
上記のうち、登録免許税は不動産の固定資産税評価額に0.4%の税率がかかります(2025年3月31日までは免税)。免税を受けるためには、免税の根拠となる法令条項を申請書に記載します。
不動産の価額が100万円以下であれば、2025年3月31日までは登録免許税の免税措置が適用になりますが、相続登記自体は必ず行わなければなりません。※2
登記が完了していないと相続した空き家を売却できないため、早めに登記の手続きを済ませておきましょう。
※1参照元:法務省「相続登記はお済みですか?」
※2参照元:法務省「相続登記の登録免許税の免税措置について」
譲渡所得税
空き家を売却した際に出た利益に対して、譲渡所得税が課せられます。
課税額は空き家を保有していた期間によって変わります。
短期譲渡所得(保有期間5年未満) | 長期譲渡所得(保有期間5年超) | |
所得税 | 所得額の30% | 所得額の15% |
住民税 | 所得額の9% | 所得額の5% |
なお、2013年~2037年までは、復興特別所得税が2.1%上乗せされます。
印紙税
印紙税とは、契約書や領収書の作成時に文書に課される税金のことです。
印紙税法(別表第1に挙げられている課税物件表に詳細が記載)では、主に商取引で交わされる文書が課税の対象となります。このうち、不動産取引では「不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機又は営業の譲渡に関する契約書」や「地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」が該当します。
空き家を売却し、取引金額が1万円以上であれば必ず印紙税が発生します。売却価格が600万円の場合、印紙税は5,000円です(2024年1月現在)。※
【印紙税(本則税率と軽減税率)】
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
※参照元:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
不動産譲渡の際にかかる印紙税は、2024年3月31日までに作成される10万円以上の契約書について軽減措置の対象となっています(2024年4月1日以降は、以下の本則税率に戻ります)。
売却時に利用できる公的制度
空き家を売却する際には、税制の特例や補助金などの公的制度を活用できます。これらを事前に理解しておけば、売却時に手続きすることで経済的な負担を軽減できるでしょう。
居住用財産の3,000万円特別控除
所得税から3,000万円までの控除が可能な制度です。
<適用条件>
・居住を終了してから3年以内の12月31日までに売却すること
・解体する場合は、解体後1年以内に売買契約を結ぶこと
・前の2年間に同じ特例を適用していないこと
相続空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家について、譲渡所得から最大3,000万円までの控除が適用されます。
<適用条件>
・相続前に空き家に他の居住者がいなかったこと
・相続開始後、3年以内の12月31日までに売却すること
・建築が昭和56年5月31日以前であること
・売却価格が1億円以下であること
・区分所有建物ではないこと
相続した空き家の取得費加算の特例
譲渡所得を算出する際に、取得費に相続税の一部を加算できる制度です。
<適用条件>
・相続や遺贈で空き家を取得し、相続税を支払っていること
・相続開始翌日から、相続税申告期限の翌日から3年以内に売却すること
10年超所有軽減税率の特例
長期譲渡所得税の税率が低くなる制度です。
<適用条件>
・空き家の所有期間が、売却年の1月1日時点で10年以上であること
・解体する場合は、解体後1年以内に売却すること
・居住しなくなってから3年以内の12月31日までに売却すること
・前年や前々年に同じ特例を利用していないこと
空き家解体の補助金
空き家の解体で受けられる補助金です。
<適用条件>
・自治体による
公的制度には細かな要件があるため、適用可能かを確認することが重要です。これらの要件を満たすように売却を進めることで、空き家の売却時にかかる税金を節税し、利益の減少を防ぐことができます。
関連記事:空き家の解体に補助金が使える?その理由と条件について解説
どんな売却方法がいいのか
「結局どの売却方法がいいの?」と迷ったら、以下を参考にしてみてください。
築20年以内の場合
空き家の築年数が20年以内で、まだ住める状態であれば、「中古住宅」として売却することをおすすめします。次に紹介する「古家付き土地」と比較すると、建物にも付加価値があるため、土地だけで売るよりも高く売れる可能性が高いです。
築20年というのは明確な基準ではありませんが、まだ住めるかどうかが判断の目安となります。また、築20年を超えると住宅ローン控除を受けられなくなるため、買い手が見つかりにくくなることも考慮する必要があります。
築20年超の場合
築20年以上経過している場合や、住まなくなって劣化が進んでしまっている空き家を売る場合は、古家付き土地として売却するのが良いでしょう。
「古家付き土地」とは、経済的な価値がほぼない状態の住宅が建っている土地をいい、住宅ではなく土地の分類で販売されます。築年数に明確な基準はありませんが、大体築20年を超える住宅は古家とされることが多いようです。
古家付き土地を購入した買い手は、購入後に古家を解体して土地を活用するため、解体費用が掛かることを踏まえて更地の状態の物件より価格は下がる傾向にあります。
空き家の劣化が激しいのなら更地にするか買取
空き家が劣化し、倒壊の危険性がある場合は、解体して更地にして売却するか買取してもらう方が適しています。なぜなら、そのまま売却を試みても、買い手に好印象を与えるのは難しく、行政からの指導も受ける可能性があります。
解体には一般的に、木造の場合で1坪あたり3〜6万円程度かかり、総額としては100万円以上が必要です。そのため、解体前に不動産会社に買取を依頼するのも良い方法です。古家でも買い取ってもらえる場合が多いので、まずは買取金額を確認してみましょう。
早く売りたいのなら買取
仲介売却では買い手を見つけるまでに時間がかかるかもしれませんが、買取ならすぐに売れます。
現金化して相続人に分配したい場合や、固定資産税の支払いを考慮したい場合、相続空き家の3000万円特別控除を受けるためにも、期限までに売却する必要があります。買取は売却金額が下がることもありますが、古い家やリフォームが必要な空き家でも買い取ってもらえることが多いです。
一度相談してみる価値はあります。
売却時の不動産会社の選び方
不動産売却の成功には、信頼できる不動産会社の選択が不可欠です。不動産会社の担当者の経験や物件との相性は、売却のスピードや売却額に影響することがあります。
このセクションでは、いつ不動産会社と連絡を取るべきか、信頼できる会社をどのように選ぶかについて詳しく説明します。
不動産会社を選ぶタイミング
不動産会社を選ぶタイミングは、主に以下の2つです。
①空き家査定
不動産の査定方法には、「机上(簡易)査定」と「訪問査定」の2種類があります。どちらも不動産会社に依頼します。
机上査定では、建物や土地の平米数、築年数などの情報を提供し、不動産会社が類似物件の売却実績などから相場を算出します。一方、訪問査定では不動産会社が物件を実際に訪れて調査し、査定額を算出します。
②媒介契約
媒介契約は、不動産の売却を仲介するために売り主と不動産会社が結ぶ契約であり、査定額や提示された売却プランを考慮して決定されます。この契約には下記の3つの種類があり、それぞれの契約条件が異なります。
一般媒介契約
一般媒介契約は2社以上の不動産会社と同時に契約
複数社との契約ができるので、一般媒介契約は不動産会社間で競争が起こります。そのため、結果的に早期売却が目指せるのです。
専任媒介契約・専属専任媒介契約
1社のみの契約
売却に時間や手間をかけられない方には、「専属専任」と「専任媒介契約」がおすすめです。
一般媒介では複数の不動産会社と契約するため、やりとりに手間と時間がかかりますが、「専属専任」と「専任媒介契約」は1社との契約のため、売却活動がスムーズに進みます。忙しい時でも売却がしやすいでしょう。
「専属専任媒介」では週に1回以上、「専任媒介」では2週に1回以上の報告が義務付けられています。売主は不動産会社に販売状況を問い合わせる必要がありません。
さらに、「専属専任」と「専任媒介契約」には、売却ができない場合の買取保証を付けることも可能です。急いで売却したい場合には、買取保証がある不動産会社を選ぶと安心できます。
参考URL:宅地建物取引業法
費用を抑えて空き家を売却するためのコツ
空き家の売却時、少しでも費用を抑えて売却を進めるためには、公的制度や優遇税制の利用を検討してみてください。
相続または遺贈によって取得した家屋・敷地等を2016年4月1日から2027年12月31日までの間に売却し、さらに一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得金額から最高で3,000万円まで控除が受けられます。※1
また、空き家を解体して売却する際に、地方自治体が設けている補助金制度を利用できる場合があります。一例として、埼玉県秩父市では危険な空き家を解体し、敷地の有効活用を進めるために、最大30万円の「空き家解体補助金」を助成しています。※2
関連記事:空き家の解体費用の相場を紹介
※1参照元:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
※2参照元:秩父市「空き家解体補助金を助成します」
空き家を売却する場合の注意点
空き家の売却方法として、「名義変更の確認」「地盤の状態確認」「更地にするタイミング」の3点が重要です。それぞれの注意点について、詳しくチェックしていきましょう。
関連記事:空き家の解体に補助金が使える?その理由と条件について解説
注意点①空き家の名義変更がされているかを確認する
空き家の名義変更が行われているか、早めに確認をしてください。
共有名義の場合は全員の合意がなければ、すべての土地や建物を売却することができないため、共有者全員に連絡のうえ、売却の相談を行ってください。
注意点②地盤の状態を確認する
空き家に多くみられる「隠れた瑕疵」の問題にも注意が必要です。
隠れた瑕疵とは、見た目だけではわからない欠陥部分のことで、具体例では泥や水分を含んだ「軟弱地盤」が挙げられます。
土地の特性にもよりますが、地盤の状態が悪ければ買い手がついた後に瑕疵担保責任を求められる可能性が高くなります。地盤に問題があるときは事前に調査のうえ、告知を行って買い手の了解を得る必要があります。
注意点③更地にするかどうかは査定をしてから決める
空き家を解体し更地にして売却したい場合、まずは不動産会社に依頼して査定をしてから決断しましょう。更地にしても売れなければ、所持している限り固定資産税を支払う必要があります。また、更地にしたことで、住宅用地の特例措置が受けられず、税負担が増えてしまいます。
とくに古い空き家の場合、建築基準法の法改正により、現在の基準では住宅を建てられない可能性もあります。
売れる見込みがあるのかどうかプロの目で見極めてもらってから、更地にするか決めましょう。
※
注意点④相続の場合には相続人全員の同意がいる
空き家を相続する際、法定相続人であれば売却することも可能です。しかし、法定相続人が複数いる場合、一人の判断で勝手に売却はできません。たとえば、実家の相続で兄弟全員が相続人となっている場合、たとえ空き家でもそのうちの一人が反対していると売却することはできないのです。売却はお金の問題なども絡んでくるため、兄弟全員の合意が必要です。
意見が対立し、解決が難しい場合は、弁護士など専門家に入ってもらうのもよいでしょう。
空き家を出来るだけ高く売却するためのポイント
なるべく高く、そして早く、損せずに空き家を売却するためのポイントは4つあります。必ず事前に目を通して、後悔しないように売却活動を進めていきましょう。
スタート価格は高めに設定する
空き家を売却する流れでも説明しましたが、多くの場合、希望販売価格からの値下げを求められることがあります。買い手は少しでも安く購入したいと考えるのが普通だからです。
売却活動にある程度の余裕があるなら、初めは価格を少し高めに設定することで、値下げ交渉があっても柔軟に対応できます。
逆に、問い合わせがなかなか来ない場合には、販売価格を下げることも検討すべきです。
長期戦を覚悟して計画を立てる
空き家を売却する際には、ある程度の長期戦を覚悟してスケジュールを立てることが重要です。
空き家は年々増えており、築年数や立地条件によっては購入希望者がすぐに見つからないことも考えられます。そのため、「絶対に1カ月以内に売却したい」といった短期間での売却を目指すと、早期に価格を下げざるを得なくなり、結果的に損をする可能性があります。
特に、空き家の場所が地方都市にある場合や、建物が古い場合は、売却に時間がかかることを前提にしておくべきです。その上で、一定期間内に売却できなければ買取を検討するなど、計画を立てておきましょう。
また、売却までにかかる維持費(固定資産税やメンテナンス費用など)も事前に準備しておくことが大切です。
3年以内に売却すること
ある程度の長期戦を覚悟しつつ、住まなくなってから3年以内(または相続してから3年以内)に売却することを目指しましょう。
なぜなら、3年以内であれば税金面での特例や控除を受けられるためです。
相続した場合
相続開始から3年以内なら
「取得費加算の特例」「相続空き家の3,000万円特別控除」を適用できる
住まなくなった場合
住まなくなってから3年目の年末までに売却すれば
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を適用できる
※各特例や控除を利用するには、期間以外にもさまざまな要件を満たす必要があります。全ての要件を満たしている場合にのみ、特例や控除が適用されます。
例えば、3,000万円の特別控除が適用されれば、売却益(売却額から取得費などを差し引いた金額)が3,000万円以下であれば税金を納める必要がなくなり、税金面で非常に有利になります。
さまざまな方法を検討して空き家を活用
今回は、空き家の売却方法や売却の流れ、売却にかかる費用について紹介しました。
従来では不動産会社に仲介を依頼し、買い手を募集する方法が一般的でしたが、現在では日本全国の自治体が「空き家バンク」を提供しています。
建物と土地をあわせた売却以外では、土地のみの売却や不動産会社による直接買取、空き家バンクを経由して第三者へ貸し出すことも可能です。多角的な視点で、空き家の有効活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
この記事の監修者
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。