空き家の放置リスクとは?手放したい方におすすめの処分方法5選
「空き家問題」とは、居住者がいない・使われていない建物が周辺環境や地域に悪影響を与える問題のことです。
相続人の高齢化が進むにつれて増えていく空き家については、国土交通省をはじめとする政府や地方自治体も問題視しており、法律の見直しと改正が進められてきました。
この記事では、空き家を放置するとどのような問題が発生するのかを取り上げ、空き家を手放したいときの処分方法や活用方法、買い手が見つかりにくい空き家の特徴について紹介します。
目次
空き家を放置するとどうなる?
「空き家」とは、1年以上居住やその他の目的で使われていない建物のことです。
空き家の分類は「売却用」「賃貸用」「二次的住宅(別荘など)」「その他の住宅」に分けられ、いずれも適切に管理されていなければ老朽化や汚損のリスクが高まります。
ここからは、空き家を放置した際に考えられる5つの問題についてみていきましょう。
関連記事:放置空き家の割合・放置に潜むリスクと有効活用のための解決策
金銭的負担がかかる
空き家を放置すると、住まいは経年劣化により老朽化していきます。居住や使用をしていれば早めに気づける汚損がそのままになってしまうので、管理が行き届かず建物の価値も下がっていってしまいます。
経年劣化が進んでから元通りに修繕しようとすると、清掃・修繕・修理・交換などに多額の費用がかかります。
一例として、「空き家にしていたら冬場の凍結で水道管が破損してしまい、水周りに多額の修理費用がかかってしまった」「親から譲り受けた家を空き家にしていたら、古い瓦屋根をそのままにしていたので地震の際に落下し、屋根ごと葺き替えなければならなかった」といったケースです。
空き家が「管理不全空き家」に指定されて行政の助言・指導に従わないと、住宅用地の特例と呼ばれる税の減免措置が受けられなくなってしまうため、6倍の固定資産税と3倍の都市計画税が課せられ、税の負担が増える可能性もあります。
管理の手間がかかる
使っていない建物を所有し続ける場合は、所有者自身が責任をもって管理しなければなりません。
税金さえ納めていれば所有者が自由にできるわけではなく、近年では空き家問題に取り組むために、空き家法と呼ばれる法律が改正されました。
この改正空き家法によって、空き家の状態によっては固定資産税が引き上げになる可能性があります。したがって、税金の軽減措置を受けるためには、適切に維持管理を行わなくてはなりません。
また、建物や敷地を不動産として所有するので、災害や犯罪への備えはもちろん、緊急的な状況が発生した際の対応も常に意識しておく必要があります。
一例として、降雪や積雪がある地域では、降雪時の管理から融雪・落雪への備えをしなければなりません。
第三者に空き家管理を依頼する場合でも、老朽化に伴う修繕や設備の交換などは所有者自身で行う必要があります。自分で管理する場合はさらに負担が大きくなります。
定期的に空き家を見に行き、老朽化しすぎないように管理するのは手間と時間がかかってしまうのです。
特定空き家に指定される
特定空き家とは、国土交通省の「改正空き家法」に定められている区分のことで、管理が不十分なために倒壊等の危険性が高い、または衛生上の問題や周辺の生活環境に悪影響を与えるおそれがあると認められた空き家です。
居住者や使用者がいなくなった建物は空き家状態となり、所有者が適切に管理せず放置状態になると、市町村は「空家等対策計画」にしたがって、危険または景観を損ねるおそれのある空き家を調査します。
空き家が発生してから一定の年数が経過し、手入れが不十分であると、2023年に新設された区分である「管理不全空き家」に認定され、行政から指導や勧告措置が入ります。それでも対応が不十分であると、特定空き家として行政による除却等の代執行が行われます。
「当面居住や使用の予定はなく、空き家にせざるを得ない」という状況であれば、早めに相続や売却、土地活用といった目的にあわせて相談先を確認し、いざというときに相談できるよう準備しておくと良いでしょう。
近隣トラブルの原因になる
空き家を長年放置していると、近隣トラブルの原因になる場合があります。例えば、屋根材や外壁材が老朽化によって剥がれ落ち、隣家の敷地や建物に落ちて破損するケースが挙げられます。
木造家屋は火災の発生リスクや、地震で家屋全体が倒壊し被害を拡げるおそれがあります。古い家ほど害虫や害獣の発生リスクも高いため、建物の中は常に清潔にしておきたいところです。
積雪の多い地域では、自宅が老朽化していなくても雪や氷が隣に落ちて邪魔になるトラブルがみられます。空き家にする場合は周辺環境に与える影響を考慮し、対策しなければなりません。
資産価値が下がる
家というものは一般的に、新築の状態がもっとも高い価値をもっています。経年劣化によって汚損してくると建物の価値は下がっていきますので、売却や譲渡を考えている方は、きれいなうちに空き家を手放す必要があります。
また、手入れされておらず景観を損ねるような空き家が残されていると、それだけで近隣の不動産にも影響するおそれがあります。
空き家の存在によって災害や事件が起きてしまうと、空き家周辺のエリア自体がハイリスクとみなされる可能性もあるため、資産価値を下げないためにも適切な空き家管理が必要です。
空き家を手放す場合の処分方法
空き家を手放すためには、無償譲渡・売却・寄付・土地や建物の活用が選択肢になります。今までは譲渡や売却が主流でしたが、近年では寄付や活用といった新たな使い道にも注目が集まっています。
ここからは、空き家を手放す5つの方法について確認していきましょう。
関連記事:空き家の運用方法や注意点を紹介
知人に無償で譲渡する
無償譲渡とは、売却を行わず(利益や対価を得ず)引き渡す行為を指します。
知人が空き家に居住または使用する予定があり、リノベーションや増改築を相手方で行うような場合には、双方の納得のもとで手続きを行い、売却のプロセスは経ずに建物や敷地を引き渡せます。
ただし、無償とはいっても費用が発生しないわけではありません。相手方が法人であれば、資産価値をもつ建物や敷地を譲り渡す行為が「一定の対価を受け取った」として、個人間での贈与ではなく時価で売却したものとみなし、「譲渡所得税」を支払わなければなりません。
相手方が一般の場合は、相手方に「贈与税」が発生します。不動産は財産の一種なので、無償とはいっても財産を譲る行為として「贈与」のカテゴリーに含まれるのです。
贈与税は、厳密には不動産の価値が110万円を超えたときに、譲渡された側に支払い義務が発生する仕組みです。
個人(所有者)から個人(知人)と、個人(所有者)から知人(法人)への無償譲渡にかかる税金は以下のとおりです。
【知人への無償譲渡にかかる税金】
譲渡する側 | 課税の有無 | 譲渡される側 | 課税の有無 |
個人(所有者) | なし | 個人(知人) | あり:贈与税 |
個人(所有者) | あり:みなし譲渡所得課税 | 法人(知人) | あり:法人税 |
所有者側が法人の場合と、所有者・知人どちらも法人の場合の税金は以下のとおりです。
【知人への無償譲渡にかかる税金】
譲渡する側 | 課税の有無 | 譲渡される側 | 課税の有無 |
法人(所有者) | あり:法人税 | 個人(知人) | あり:譲渡所得税 |
法人(所有者) | あり:法人税 | 法人(知人) | あり:法人税 |
不動産会社に無償で譲渡する
周囲に無償譲渡できる相手がおらず、売却の予定もない場合は、不動産会社に引き取ってもらう方法があります。買い手がつきにくい(つかない)土地や建物を引き取り、新たな土地活用の提案を行っている不動産会社なら、無償での引き取りに応じてもらえる可能性があります。
不動産会社は法人のため、財産である空き家を引き渡す行為には税金が発生します。ただし、必ずしも無償ではなく売却が可能な場合も多いため、まずは空き家の買い取りや活用を得意としている不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。
土地と空き家を売却する
空き家と土地を売却する場合、以下の方法が選択肢となります。
【空き家と土地の売却タイプ】
売却方法 | デメリット | メリット |
そのまま売却 | 買い手がつきにくい可能性がある | リフォームや解体工事の必要がない |
更地にして売却 | 更地にする費用がかかる | 土地のみなので買い手がつきやすい |
リフォーム後に売却 | リフォーム費用がかかる | リフォーム済みとして売り出せる |
建物・土地をそのまま売却する方法は、空き家のリフォームや解体の必要がありません。そのまま買い取ってもらえれば安上がりではありますが、古い空き家は買い手が見つかりにくい点がデメリットです。
空き家・土地を売却する場合は、地域の不動産会社や空き家を管轄する自治体の「空き家相談窓口」「空き家ワンストップ相談窓口」に相談するか、「空家空地管理士」に直接連絡をとって、方向性を検討してください。
土地と空き家を寄付する
土地と空き家については、自治体にとって利用の見込みがある場合に限り寄付(帰属)ができます。ただし、利用の見込みがないと判断されると審査に通らず、寄付は行えません。
例えば、防災拠点や復興住宅の建設地のように、地域にとって重要な目的に使用できる土地は寄付の対象になります。空き家に倒壊のおそれがあれば「土地のみ(空き家を解体し更地にする)の寄付であれば許可する」という条件がつく可能性があります。
自治体ではなく国に土地を寄付する制度としては、「相続土地国庫帰属制度」が挙げられます。相続や遺贈によって土地の所有権または共有持分を取得した権利者のみに限られますが、所有権を国庫に移すことで土地を帰属できる制度です。
法務大臣からの承認が下りれば、申請者(土地の所有者)は10年分の土地管理費相当額の負担金を納付し、土地を国庫に帰属させられます。
ただし、国庫への帰属は空き家のような建物があると引き取りが行えません。担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染や境界が不明瞭な土地、範囲について争っている土地も対象外となります。※
※参照元:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
空き家バンクを活用する
「空き家バンク」を活用して、買い手や借り手を募集する方法もあります。空き家バンク(空き家情報バンク)とは、地方自治体が提供する空き家情報の紹介制度・サービスの名称です。
空き家を活用したい所有者が登録することにより、空き家を管轄する自治体の不動産業者との媒介契約を結んで、定住や移住を希望する人とのマッチングを行います。
転勤やワーケーションなど、さまざまな理由で地方に移住する方にとっては、金銭的な負担を抑えつつ設備の整った戸建てに居住できるメリットが得られます。所有者にとっても、空き家の貸し出しや売却が行える方法のため、買い手や借り手との出会いが期待できます。
手放す前に知っておきたい空き家の活用方法
ここからは、土地や空き家を手放す前に知っておきたい活用方法について確認していきましょう。
関連記事:空き家の解体費用の相場を紹介
更地にして土地を売却する
老朽化し、倒壊などのリスクがある場合は、「特定空き家」に指定されるおそれがあります。売却の際、そのままでは買い手がつかないおそれもあるため、更地にして売却する方法が第一の選択肢になります。
建物を解体して瓦礫の撤去を行うため、多少の費用はかかりますが、土地を有効に活用したい買い手が比較的早くに見つかる可能性があります。
リフォーム後に売却する
古い住宅に多くみられるリフォームやリノベーションは、買い手を集めやすい手段のひとつです。倒壊リスクがなく、古いままでもまだ使えるような場合には、建物を有効活用するためにリフォームを検討してみましょう。
建物の劣化具合にもよりますが、壁や床などをきれいにリフォームした住宅は新築同然の仕上がりになり、買い手にとっては魅力的に映ります。
水回りやキッチンなどの設備も新しいものに交換しておくと、さらに好条件での売却が目指せます。「リフォーム済み物件」として売り出せるので、買い手にとって魅力的な条件のひとつになるでしょう。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
空き家を買取で手放す場合の流れ
空き家を買取形式で手放す場合、空き家の内部を整理して売買契約を結び、決算・引き渡しとなります。
関連記事:空き家を売りたいときの売却方法と流れ・メリットと注意点
①空き家内を整理する
空き家の売却は、不動産会社への申し込み・査定を経て売買契約を結びます。室内の広さや設備がわかるように、空き家の中はできるかぎりきれいに整理整頓し、きれいに清掃消毒を行いましょう。
ゴミや不用品、段ボールなどの資材が残っていると値引きの対象になってしまうため、本来の価格よりも低く見積もられてしまう可能性があります。ものが残っていない状態に整え、きれいに掃除をしてから査定に臨んでください。
②売買契約を結ぶ
査定が完了したら、不動産会社から見積もりが提示されます。話し合いによって納得できたら、媒介契約を結びます。
媒介契約を結ぶことで、不動産会社のサービスが利用できるようになります。契約のタイプは以下の3つです。
【媒介契約の種類】
一般媒介契約 | 空き家の所有者が複数の不動産会社と契約を結ぶ |
専任媒介契約 | 1つの不動産会社のみと契約するが、所有者自身でも買い手を探せる |
専属専任媒介契約 | 1つの不動産会社のみと契約し、所有者は買い手を探せない |
所有者自身で買い手が見つかる場合は一般媒介契約や専任媒介契約を、すべて不動産会社にお任せする場合は専属専任媒介契約を選ぶことになります。
購入希望者が現れ、売買価格や時期の交渉を行ったあと、相手方が納得できたら、買い手側と売買契約を結び、決済へと移行します。
③決済・引き渡す
売買契約書を作成して締結したあとは、仲介手数料などを不動産会社に支払い、買い手へ所有権の移転登記申請を行って物件を引き渡します。
不動産会社からの指示にしたがって必要書類を揃え、売買代金が元の所有者の口座に振り込まれます。
買い手が見つかりにくい空き家の特徴
空き家は「売却用」「賃貸用」「二次的住宅(別荘など)」「その他の住宅」の4種類に分けられ、売却を検討する際は買い手のニーズに合致している必要があります。
ここからは、買い手がつきにくい空き家に多くみられる4つの特徴を確認していきましょう。
関連記事:空き家が売れないケースとは?売却のコツと具体的な方法について
特徴①立地の利便性が低い
住まいとして使用する空き家は、買い手にとってどの程度の利便性が得られるかが重視されます。
利便性については主に以下の項目がチェックされ、当てはまる項目が少ないほど買い手がつきにくくなります。
【利便性を判断する基準】
- 利用できる交通手段が多い
- アクセス性にすぐれている
- 周辺環境が整っている
- 余暇時間も過ごしやすい
- 通勤・通学時間がかからない
目的地までの手段が多く、アクセスに時間がかからないほど利便性にすぐれていると判断できます。
一方で、アクセスに時間がかかりすぎたり、目的地まで車や徒歩でしか移動できなかったりすると、買い手は躊躇してしまうかもしれません。
ただし、徒歩であっても複数のスーパーや店舗にアクセスできるようなメリットがあれば、郊外のエリアでも利便性が高いと評価されるでしょう。
買い手の家族構成やライフスタイルによっては、公園や娯楽施設のように余暇を楽しめる環境があることも、利便性を判断する基準になります。
特徴②権利関係に問題がある
「所有者不明土地」のように、権利に何らかの問題があり売却や譲渡ができないケースもあります。
政府広報によると、土地相続の際に登記が行われなかったなどの理由で所有者がわからない土地が増えており、2022年度の地籍調査事業では、不動産登記簿だけで所有者の所在が判明しなかった土地の割合は24%にも及んでいることがわかりました。
例えば、所有者(登記名義人)は空き家の所在を把握しているが、遠方のため管理しきれていない。月日が流れ、所有者が亡くなり土地を誰も管理できなくなった、というケースは、所有者不明土地が発生する代表的な事例です。
そこで、2024年4月1日からは土地の有効活用と適正な権利関係の把握のために、不動産の相続登記が義務化されました。※
※参照元:政府広報オンライン「なくそう、所有者不明土地! 所有者不明土地の解消に向けて、 不動産に関するルールが大きく変わります!」
特徴③再建築不可物件に該当している
「再建築不可」とは、現行の建築基準法に適合しておらず、建物を再度建築できないという意味です。
再建築不可に指定された場所は、家を建てるために十分な敷地を確保できていないケースが多くみられるため、周辺の土地を新たに購入・賃借して敷地を拡げたり、敷地自体を後退させたりして、再建築が可能な状態にしなければなりません。
買い手が購入に前向きでも、再建築不可物件に指定されていると立て直しができないため、所有者側であらかじめ問題をクリアしておくか、買い手とよく話し合って売却を検討する必要があります。
特徴④市街化調整区域に位置している
「市街化調整区域」とは、市街化を抑制するために指定されている区域のことです。
具体的には、市街地から離れている郊外エリアや田畑・農地など住宅地以外の目的に使用する土地を指しており、建てられる建物は、教育機関や福祉施設、観光資源となるホテル・遊園地・ゴルフ場や墓地などです。
不動産を手放す方法としては、専門の不動産会社に土地を売るか、農地や転用して売却する方法があります。
空き家に適した活用方法をチェックしよう
今回は、空き家を手放したいときに考えられる選択肢として、売却や譲渡(寄付)の方法を紹介しました。
空き家をそのまま放置していると、税の負担が大きくなり建て替えや設備の修理にもコストがかかってきます。管理不全空き家や特定空き家に指定されないためにも、空き家の所有者は適切に維持管理し、難しい場合は売却などを検討していく必要があります。
不動産会社への仲介依頼に加えて、空き家法の整備により各自治体も空き家問題の解消に力を入れています。空き家やその土地を新たな目的に活用するケースも増えていますので、ぜひいろいろな選択肢をチェックしてみてはいかがでしょうか。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。