所有者不明の空き家はなぜ発生する?対処法や新たなルールについても
「所有者不明の空き家はなぜ増えるの?」
「そのまま放置したらどうなる?」
「問題を解決するには?」
所有者不明の空き家は、保安、税制、衛生面で多くの問題を引き起こします。
本記事では、所有者不明の空き家が発生する原因、放置した際のリスク、所有者を特定する手順や、判明した後の対処法を詳しく解説しています。
さらに、所有者不明の空き家に対する、新たなルールについても紹介。
空き家問題に直面している方、解決策を探している方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
所有者不明の空き家が発生する原因
所有者不明の空き家が発生する主な原因は、不動産の相続に関する手続きの未実施にあります。
関連記事:放置空き家の割合・放置に潜むリスクと有効活用のための解決策
登記手続きについて
不動産を取得した際、その所有者は通常、法務局で「登記」という手続きを行います。
登記は、不動産の基本的な情報および、権利関係を登記簿に記載することで、所有者が公式に第三者に対して所有権を主張できるようになるのです。
相続登記の未実施
問題は、所有者が亡くなった後の相続登記。
相続登記とは、不動産の名義を故人から相続人へと変更する所有権移転登記のことです。
しかし、2024年3月までは相続登記は義務化されておらず、実施しない場合の罰則も存在しなかったため、相続登記が行われていない状態が多くありました。
特に資産価値が低い地方の土地については、登記費用を支払うことなく相続を放棄するケースも少なくありません。
所有者が亡くなり、相続人が登記を行わないまま年数が経過すると、元の相続人も次第に亡くなり、誰が正式な相続人であるかが不明確になってしまうのです。
相続人との関係
加えて、「相続人全員が相続放棄をした」「被相続人に身寄りがなく、相続人がいない」といったケースもあります。
さらに、相続人が多数おり、共有者の一部が行方不明または亡くなっている場合にも、所有者の特定が難しくなるでしょう。
所有者不明の空き家が増えると生じる問題点
所有者不明の空き家が増加することで、以下3つの問題点が生じてしまいます。
- 保安面の問題
- 税制面の問題
- 衛生面の問題
一つずつ確認していきましょう。
関連記事:空き家を管理する方法と注意したい潜在リスク・コストと対策方法
保安面の問題
所有者不明の空き家がもたらす大きな問題として、管理者が不在であることです。
管理されていない空き家は、時間の経過とともに急速に劣化し、雨漏りや構造部材の腐朽などによって建物の強度が低下。
自然災害時における倒壊リスクの増加と直結し、周辺住民に対する脅威となり得ます。
さらに、放置された空き家は犯罪の温床となることも。
空き家を利用した犯罪事件なども発生しており、地域の治安悪化を招く原因となります。
税制面の問題
税制面では、所有者不明の空き家が、自治体の税収に影響を及ぼす点が問題視されます。
固定資産税は通常、不動産の所有者に課税されるものですが、所有者が不明の場合、税金の徴収が難しくなります。
この問題に対応するため、令和2年度の税制改正では未登記の不動産においても、使用者が明確な場合には、使用者に対して固定資産税を課すことが可能になりました。
また、所有者の死亡後、相続登記をせずに不動産を使用している人々にも、税負担を求めることを可能にしました。
衛生面の問題
衛生面での問題も深刻です。
誰も住んでいない空き家は、害虫や害獣の住処となりやすく、シロアリやネズミなどが繁殖するとその影響は空き家にとどまらず、周辺地域にも及びます。
害虫や害獣は病気の媒介、建物の損傷を引き起こし、近隣住民の生活環境にも悪影響を及ぼすでしょう。
さらに、動物の糞尿や不法投棄されたゴミが原因で悪臭が発生し、近隣の衛生環境を悪化させることもあります。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
所有者不明の空き家を放置するとどうなる?
所有者不明の空き家が放置されると、さまざまなリスクが発生し、最終的には行政による代執行が行われます。
具体的には、特定空き家に指定された後、一連のプロセスを経て行政代執行が行われることになります。
関連記事:空き家の固定資産税が6倍になる理由と軽減措置を継続する方法
特定空き家に指定される
「空き家等対策特別措置法」の下で、特定の基準に基づき危険性が高いと認められる空き家は、「特定空き家」として指定されます。
倒壊の恐れや衛生的な問題、周辺環境への影響などが基準となります。
特定空き家に指定された場合、自治体は所有者や管理者に対して改善を求めるための助言や指導を実施。
しかし、所有者不明の空き家の場合は、これらの対応が難しくなります。
行政代執行が認められる
所有者不明の空き家が特定空き家として指定され、かつ改善の指示に応じられない場合、自治体は行政代執行を行うことができます。
代執行に至るまでのプロセスは、初めに指導と助言、その後勧告、さらに命令と進みます。
命令に従わない場合、最大50万円の過料が課せられ、最終的には行政が直接介入して空き家を撤去することに。
撤去費用は後日、所有者や管理者に請求されることになります。
行政代執行は、所有者不明であっても有効です。
自治体が不動産登記を通じて所有者の調査を行い、所有者が特定できない場合は代執行に進むことができます。
行政代執行の施行により、放置された空き家が周囲に及ぼす潜在的なリスクを軽減することが期待されています。
所有者不明の空き家の所有者を明らかにするための手順
所有者不明の空き家問題に取り組む際、所有者を明らかにすることが第一歩となります。
- 登記事項証明書を確認する
- 住民票を取得する
- 公共機関や周辺住民に聞き込む
ここでは、所有者を特定するための具体的な手順を解説します。
関連記事:空き家の放置リスクとは?手放したい方におすすめの処分方法5選
手順①登記事項証明書を確認する
最初のステップとして、空き家の所有者を確認するためには「登記事項証明書」を取得します。
登記事項証明書には、不動産の所有者(登記名義人)の氏名と住所が記載されており、現在の所有者が誰であるかを明らかにします。
証明書は、空き家が位置する地域を管轄する法務局で取得でき、オンラインでの申請も可能。
不動産の詳細情報を把握する上でも重要な情報となります。
手順②住民票を取得する
登記事項証明書で特定した所有者の現在の状況を確認するため、次は「住民票」を取得します。
ただし、一般の人が他人の住民票を取得することはできないため、弁護士や司法書士などの専門家へ依頼が必要です。
住民票によって、所有者が現在生存しているか、転出もしくは死亡しているかが明らかになります。
空き家の所有者がすでに亡くなっていると判明した場合、次に行うべき手順は、所有者の戸籍謄本を取得することです。
戸籍謄本には故人の家族関係、結婚歴、子供の有無などが詳細に記されており、これらの情報を基にして空き家に対する潜在的な相続人を探し出します。
手順③公共機関や周辺住民に聞き込む
住民票を取得した後、所有者の居住状況を確認するためには、実際の住所を訪問し、周辺住民や公共機関に聞き込みを行います。
そうすると、所有者が現在その住所に住んでいるか、もしくはその他の場所に移動しているかが判明します。
聞き込みはデリケートな作業であるため、トラブルを避けるためにも専門家に依頼することが望ましいでしょう。
不明だった所有者が判明した空き家への対処法
所有者が判明した空き家には、さまざまな対処法があります。
- 相続土地国庫帰属法を活用する
- 自治体に寄付する
- 空き家バンクに登録する
- 無償で譲渡する
- 賃貸に出す
- 売却する
ここでは、考えられる対処法について紹介していきます。
関連記事:空き家を売りたいときの売却方法と流れ・メリットと注意点
①相続土地国庫帰属法を活用する
相続土地国庫帰属法は、令和5年4月27日より施行された制度で、相続や遺贈によって取得した土地を、国が引き取るプログラムです。
しかし、相続土地国庫帰属法はいくつかの厳しい条件があり、例えば建物が建っている土地や、土壌汚染がある土地などは引き取り対象外となります。
このため、空き家を国に引き取ってもらうには、まず建物を解体し、管理費用を自己負担する必要があることを覚えておきましょう。
②自治体に寄付する
もう一つの方法は、空き家を自治体に寄付することです。
自治体に寄付することで、所有者は空き家を抱えるリスクから解放される可能性があります。
寄付をするには、自治体の空き家に関する相談窓口に連絡し、必要書類を提出します。
ただし、自治体が空き家を受け入れることは稀であり、多くのケースで寄付を受け入れられないことを理解しておきましょう。
③空き家バンクに登録する
空き家バンクに登録する方法もあります。
空き家バンクは自治体が運営するサービスで、空き家の売主と買主をマッチングさせる仕組みです。
登録は無料で、地域活性化の一環として全国的に取り組まれています。
ただし、空き家バンクに登録しても必ず売れるわけではなく、個人間での売買契約が必要となるため、自己責任で対応することが必要。
また、一部の自治体では仲介業者と提携していないため、売買に際しては注意が必要です。
④無償で譲渡する
無償譲渡は、空き家を無料で他人に譲る方法です。
知人や友人など、空き家を利用したい希望者がいれば、譲渡する形で空き家の管理責任から解放されます。
ただし、受け取る側は固定資産税や贈与税がかかるため、この点を十分に認識しておく必要があるでしょう。
また、財産価値のある空き家を無償で譲るのは損失になる可能性もあるため、財務的な側面も考慮してください。
⑤賃貸に出す
賃貸経営は、空き家をリフォームし賃貸物件として貸し出す方法です。
空き家の状態が良く、適切な立地にある場合に適しています。
リフォームには初期投資が必要ですが、適切に管理すれば安定した収入源となるでしょう。
ただし、地方や不便な立地にある空き家では、入居者を見つけるのが難しいため、事前の市場調査が必須です。
⑥売却する
売却は、空き家を市場に出して現金化する方法です。
空き家の維持管理に関する責任から完全に解放されると同時に、資金を得ることができます。
また、売却方法には不動産会社を通じた仲介と、直接買い取りを行う買取業者の二つです。
市場価値の高い空き家:仲介業者を通じた売却
空き家の状態が良く、立地条件に優れている場合は、仲介業者を通じて売却する方法が有効です。
仲介業者は、広告やネットワーキングを通じて買い手を探します。
特に、最寄駅から近く、商業施設や教育機関などのインフラが整っているエリアの空き家は、高い市場価値を持ち、仲介を通じて適正な価格で売却することが可能です。
一般的に市場価格に近い価格で売却が期待でき、適切な買い手とのマッチングが期待できるでしょう。
築年数が経過し立地条件が劣る空き家:買取業者による直接売却
築年数が経過しており、立地条件が劣る空き家の場合、買取業者に直接売却する方法が適しています。
買取業者は、物件の現状をそのまま引き受け、迅速に現金化することが可能です。
この方法は、市場価値が低く通常の仲介では売却が難しい物件に対して有効といえます。
老朽化が進んでいる場合や、地方や不便な立地にある場合に特に推奨されます。
買取業者はリフォームや再販のノウハウを持っており、物件を再生させることが強みなのです。
所有者不明の空き家に対する新たなルール
所有者不明の空き家の問題に対応するため、日本政府は新たな法律と規制を導入しました。
- 相続登記の義務化
- 相続土地国庫帰属法の創設
- 所有者情報変更の登記義務化
- 管理不全空き家の創設
これらの新規則により、所有者不明の土地や建物に関する問題の解決を促進し、効果的な土地利用を目指しています。
相続登記の義務化
相続登記の義務化は、2024年からスタートしています。
相続によって不動産を取得した場合、相続人は3年以内に登記を完了しなければなりません。
違反すると、最大10万円の過料が科せられる可能性があります。
相続登記の義務化により、所有者不明の土地や建物が発生するリスクが大幅に減少し、土地の有効活用促進が期待されています。
また、登記手続き自体も改正され、相続人個々の単独申請が可能になりました。
相続に伴う登記手続きの負担が軽減されるとともに、手続きの効率化が図られています。
相続土地国庫帰属法の創設
2023年4月27日に施行された相続土地国庫帰属法は、相続によって得たが不要な土地を国に渡すことができる新たな制度です。
不動産の効率的な活用と所有者不明土地の予防を目的としています。
ただし、制度を利用するためには特定の条件を満たす必要があり、一部の土地は対象外となります。
また、申請者は土地の評価に基づいた10年分の管理費用を負担する必要があり、申請手続きにも一定の費用を納めなければいけません。
所有者情報変更の登記義務化
2026年4月から、所有者の氏名や住所が変更された場合、変更日から2年以内に所有者情報の変更登記を義務付ける新規制が施行されます。
これにより、所有者の情報が最新の状態に保たれ、所有者不明空き家の抑制が期待されています。
義務化は所有者情報の透明性と追跡性の向上を目的としており、期限内に変更登記を行わない場合には、最大5万円の過料が課されることに。
そのため、土地の所有者は自身の情報を常に更新し、管理責任を果たすことが求められます。
管理不全空き家の創設
管理不全空き家とは、倒壊や衛生上の危険性が高い可能性がある空き家を指します。
特定空き家になる前段階の状態を示しており、窓や屋根の破損、草木の過剰な成長などが特徴です。
新たなカテゴリーの創設により、空き家の早期発見と適切な対応が可能になります。
2024年3月末まで有効であり、管理不全空き家には住宅用地の特例措置が適用され、固定資産税が軽減されるメリットがあるのです。
一方で、特定空き家は住宅用地として認められず、税制上の優遇措置は受けられません。
空き家の有効活用は所有者の特定から
いかがでしたでしょうか?
所有者不明の空き家の発生原因と、その問題点についてお分かりいただけたかと思います。
また、所有者を特定する手順や判明後の対処法、新しいルールについても解説しました。
所有者不明の空き家は多くの問題を引き起こし、適切な対応が必要です。
本記事を参考にしながら、空き家問題を解決していきましょう。
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この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。