実家が空き家になったらどうするべき?放置空き家になる原因と対処法
「空き家問題」とは、建物が空き家状態となってから一定期間放置され、適切に管理されずに時間が経過したために、地域の生活や環境に影響を及ぼす問題です。
親や親戚から相続した実家を管理せず放置していると、建物が老朽化し土地も手入れされないため、空き家問題につながります。
空き家問題に取り組むため、国土交通省によって「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」がすでに施行されています。2024年4月1日からは新たに所有する不動産の相続登記が義務化されました。※
この記事では、実家が空き家になるケースと放置するデメリットを中心に、居住しない場合の対処法や空き家を相続した際の対応方法を紹介します。実家を空き家にしないために、ぜひ参考にしてください。
目次
実家が空き家になる主なケース
実家が空き家になる主なケースとして、以下2点が考えられます。
【実家が空き家になる主なケース】
- 親は健在だが突然空き家になってしまうケース
- 親が死亡して空き家になるケース
「親は健在だが突然空き家になってしまうケース」については、介護施設などへの入所や子どもの家への引っ越し、入院などの理由が考えられます。
また、国土交通省が行った調査によると、建物を空き家にする理由は次のとおりです。※
【建物が空き家になる理由】
- 物置として使用するため
- 解体費用をかけたくないから
- 特に(空き家でも)困っていないから
- 将来、自分や親族が使うかもしれないから
- 好きなときに利用や処分ができなくなるから
- 仏壇など捨てられないものがあるため
- 更地にしても使い道がないから
- 解体すると固定資産税が高くなるから
- 住宅の質が低い(古い・狭い)から
- リフォームの費用をかけたくないから
- 他人に貸すことに不安があるから
- 労力や手間をかけたくないから
- 満足できる価格で売却できそうにないから
- 道路付けや交通の利便性が悪いから
- 資産として保有しておきたいから
- 満足できる家賃が取れそうにないから
- 戸建てを借りる人が少ないから
- 中古戸建てを買う人が少ないから
空き家にする理由として、費用に関する悩みが多くみられます。「解体したい(しても良い)が、費用がかかる」「売りたいが簡単に売れる見込みがない・借りる人や買う人も少ない」といった現状があり、解体して更地にすると固定資産税も割高になるために、費用対効果を考えて空き家にしているというケースです。
金銭的事情以外では「住まいではない用途として残しておきたい」「将来使うかもしれないので所有している」「捨てられないものがある」など、家自体に愛着があり手放せないといった理由も挙げられています。
当事者の意思にかかわらず空き家が発生する原因として、病気・入院・死亡が挙げられます。国土交通省の調査結果には掲載されていませんが、建物が放置空き家になってしまう原因のひとつです。
※参考元:国土交通省「空き家等の現状について」
関連記事:空き家の解体費用の相場を紹介
空き家になった実家を放置する人が多い理由
誰も居住しなくなり、そのまま修理やリノベーションをせず放置されている空き家も多くみられます。
埼玉県都市整備部建築安全課の調査によると、空き家を放置する理由は次のような結果となりました。※
【空き家を放置する人が多い理由】
対象者 | 放置理由 |
本人(所有者) |
|
相続人 |
|
共通 |
|
空き家状態にしてから放置してしまう理由には、所有者本人の問題と相続人の事情がかかわっています。所有者が認知症のような病気を抱えたために空き家の対処ができなくなっているケースは、放置理由の代表例といえます。
荷物があるから家ごと残している、また住むかもしれないという理由で家を手放せない方もみられますが、共通の項目にもあるとおり、特に空き家にしていても困っていないために放置状態を継続しているケースもあるようです。
また、高齢化社会の到来により、所有者だけではなく相続人が入院や施設への入所によって管理が行き届かず、放置状態になるケースも深刻化しています。相続を受けた子ども自身も実家を空き家にしたまま施設に入ってしまったり、認知症を発症して実家の存在を忘れてしまったりする場合があります。
※参考元:埼玉県都市整備部建築安全課「令和5年度 埼玉県空き家対策連絡会議 新任者研修会 空き家の現状について 2023.4.26」
関連記事:放置空き家の割合・放置に潜むリスクと有効活用のための解決策
空き家になった実家を放置するデメリット
空き家になった実家を放置すると、建物や塀の劣化・庭の荒廃と害虫の発生・固定資産税を支払う義務がリスクになる可能性があります。
それ以外のデメリットについても、詳しく確認していきましょう。
デメリット①建物の劣化が進む
空き家になった家は、人が住んでいる状態よりも劣化の程度が早いといわれています。春から秋にかけては高温多湿になりやすく、湿気以外にも台風や豪雨によって屋根や天井が傷むおそれもあります。
換気や清掃が定期的に行われていれば劣化を防ぐことができますが、空き家かつ放置状態になると、空気の入れ替えがないためカビやダニが発生しやすく、壁や床を傷める原因になります。
特にシロアリのような害虫が発生すると、構造部分を食べてしまうため、シロアリが繁殖するおそれがある地域では特に注意が必要です。
デメリット②敷地内の庭木や雑草が生い茂る
家を放置状態にすると、敷地内に木々や雑草が生い茂っていきます。芝生や植え込み、庭の木々が伸びて家の周囲を覆いつくし、雨どいや屋根から隙間に入り込んで、建物を変形させていきます。
すぐに崩れるおそれはありませんが、年数が経つほど生い茂った植物によって空き家が自然の力で老朽化します。また、森のように生い茂った植物の中で害虫や害獣が繁殖するおそれがあります。
ツタのように生命力が強く、長く伸びていく植物は近隣の建物や敷地にも伸びていくため、空き家の放置は実家だけの問題ではなく、近隣に迷惑をかけるおそれもあるのです。
デメリット③近隣住民の不安材料になる
放置された空き家は手入れが行き届かないため老朽化が進み、地震や台風のような自然災害でさらに荒廃していきます。
庭木の繁茂によって通路や道路の通行を妨げるおそれ、家屋の倒壊や隣家の敷地への建材の落下など、さまざまな問題が発生しやすくなるため、近隣住民にとっては放置空き家自体が不安材料となります。
放置期間が長くなるほど近隣への影響リスクが大きくなるため、空き家の使い道や処分は、可能なかぎり早めに取り掛からなければなりません。
デメリット④加害責任を問われるケースがある
空き家の管理が不十分なために、近隣の家や土地の建物・塀に被害が発生したり、通行人がケガなどの事故に遭ったりした場合、民事訴訟により損害賠償責任を負う可能性があります。
瓦屋根の家を放置し、適切に屋根のメンテナンスをしていなかったために、台風で瓦が飛ばされ近隣の窓を破るようなケースでは、窓ガラスの修繕費用を請求されます。さらに、窓のそばにいた人がケガをしていれば、治療費や入院費の支払いも求められます。
デメリット⑤罰金が科されるケースがある
国土交通省が定める「空き家等対策の推進に関する特別措置法」では、一定期間放置された空き家は近隣の生活環境に影響を与える「特定空家」に認定されます。特定空家とは、約1年以上建物への出入りがなく建物の老朽化や庭木の繁茂によって地域の景観を乱している状態です。
特定空家に指定されると固定資産税の特例が適用されなくなり、年間の固定資産税額が上がるほか、50万円以下の過料が課せられます。※
※参考元:デジタル庁 e-GOV法令検索「平成二十六年法律第百二十七号空家等対策の推進に関する特別措置法」
デメリット⑥固定資産税を払いつづける必要がある
居住の有無にかかわらず、固定資産税はすべての不動産に適用されます。空き家として所有するあいだも固定資産税は発生するため、放置するほど支払う税額は大きくなります。
固定資産税の特例から除外されると、通常の税額よりも割高な金額を支払わなければなりません。税の免除は受けられないため、土地や建物は適切なタイミングでメンテナンスや売却を行いましょう。
デメリット⑦第三者に管理を委託する必要がある
空き家にすることは禁じられていませんが、不適切な管理状態のまま放置することは罰則の対象になります。そのため、空き家になってからもその建物に一定の間隔で訪問し、清掃や換気を行う必要があります。
遠方に住んでいる、病気やケガで入院中であるといった理由で所有者が空き家を管理できない場合は、清掃業者のような第三者に管理を依頼します。自身で管理するよりもコストがかかるため、固定資産税やその他の費用とあわせて金銭的な負担が増える可能性があります。
空き家になった実家に住まない場合の対処法
空き家になった実家に居住する予定がなければ、建物と土地の新しい利用方法を検討しましょう。
ここからは、空き家になった実家に住まない代わりの方法として、賃貸・売却・解体・空き家バンク・サブリースについて紹介します。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
賃貸に出す
空き家状態になった家をリフォーム・リノベーションし、賃貸物件として貸し出す方法です。住宅地では単身者からファミリー層までを対象に中長期の住まいとして、外国人の往来が多いエリアでは民泊として貸し出されるケースが多くみられます。
築年数が経っている建物もメンテナンスや清掃を行えば、宿泊施設として営業できます。観光地を中心に件数が増えている「古民家宿」が代表例です。
売却する
建物と土地を売却する方法は、完全に空き家とその周辺の土地を手放す方法です。所有する不動産すべての売却以外に、一部だけの売却も可能です。
不動産会社や仲介業者に依頼すれば、使わない土地や空き家を直接買い取ったり、購入を希望する第三者に仲介形式で売却したりといった方法が選択できます。
貸し出しても借り手が見つからない、借り手が集まる見込みがないときは、売却がひとつの手段になるでしょう。
家を解体する
建物は居住や貸し出しの予定がなく不要、または売却しようとしていたが買い手がつかなかったときいは、土地だけを残して家を解体する方法が選択肢に入ります。
駐車場や畑のように敷地のみを活用する際にも、建物を解体する必要があります。居住用の建物がなくなるため固定資産税の特例は受けられなくなってしまいますが、空き家を放置せず土地を有効活用する際に向いた方法です。
関連記事:空き家の解体費用の相場を紹介
空き家バンクを利用する
空き家バンクとは、地方自治体が空き家の情報をまとめて管理し、借りたい・買いたい人に情報提供をする方法です。
空き家バンクは「空き家バンク制度」とも呼ばれ、この制度は地方自治体が独自に提供するものです。地域活性化や管理不良物件の解消を目指して、空き家のリフォームや家財道具の処分、管理費用の一部をまかなうために補助金や助成金が給付されています。
自宅を自費で解体・貸し出し・売却するのはコストがかかりますが、空き家バンクとして貸し出しや売却を行う方法であれば負担が抑えられます。
サブリースを利用する
サブリースとは、不動産会社が空き家を借りて第三者の入居者を募集し、入居者と賃貸契約を結んでオーナーに一定の賃料を支払う契約形態です。
日本語で「又貸し」「転貸(てんたい)」とも呼ばれるように、所有者自身ではなく不動産会社が仲介者として間に入るため、借り手を募集する手間がなく家賃収入も期待できます。
空き家の所有者は、サブリース契約を結んでからは独自に入居者を探す必要がありません。自身が所有する建物を貸し出せるので、契約が満了すれば売りに出すといった方向性の変更も可能です。
空き家を相続した場合に対応すること
空き家を相続した際、必ず行わなければならない3つのポイントがあります。「相続登記」「不法侵入対策」「不用品の処分」です。
それぞれどのような点に注意しなければならないのか、詳しくみていきましょう。
相続登記
相続登記とは不動産を相続して所有することになった人の情報を登録する、名義変更手続きのことです。
以前まで相続登記は義務ではなかったため、長年放置されて土地を管理する者の所在がわからない「所有者不明土地」が現在も数多く残されています。しかし、所有者不明土地が増えるほど自治体の所有者情報の探索には負担がかかってしまうため、制度の見直しや整備が行われ、義務化が決定されました。
相続登記の義務化は2024年4月1日から正式に開始し、土地や建物の相続人は所有権の取得を知った日から3年以内に申請をしなければなりません。※
※参考元:法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
不法侵入の対策
空き家は残存する家財道具やその他の物品を狙う窃盗犯のターゲットになりやすく、不法侵入への対策が必要です。
人の目がないことから放火や落書き、所有者に無断で居住する事例も報告されています。
埼玉県警は2024年4月11日付けで、空き家の所有・管理者に向けて侵入窃盗被害を防止するために、適切な維持管理への協力を呼びかけています。※
※参考元:埼玉県警察「空き家を狙った侵入窃盗が増えています!」
関連記事:空き家を管理する方法と注意したい潜在リスク・コストと対策方法
不用品の処分
犯罪者による窃盗目的の不法侵入を予防し、カビやダニの繁殖を防ぐ意味でも、不用品は早めに処分したいところです。
空き家内の使えるものはそのままにせず、所有者や相続人の現住所に引き取るか、売却や処分に出して家の中が管理しやすい状態に整えておく必要があります。
空き家はリフォーム・売却・サブリースといった用途に利用できますが、不用品は売り出しや買い取りの前に処分しなければなりません。直前になって処分しようとすると余分な費用がかかるため、リノベーションや売却の前に搬出または撤去を行ってください。
未使用の空き家は放置せず新しい活用方法をチェック
今回は、実家が空き家になり放置される「空き家問題」について、原因や注意点・居住しないときの対処方法を紹介しました。
2024年4月から相続登記が義務化された流れに加え、政府と地方自治体が一体となって空き家問題に取り組みはじめています。不動産の所有者自身も、土地や建物の適正利用に向けて、新たな方向性を早めに検討することが大切です。
空き家の活用には多額の費用がかかるイメージがありますが、「あき家ZERO」ではリフォームにかかる費用を全額負担し、賃貸運用や売却をサポートしています。
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この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。