空き家を管理する方法と注意したい潜在リスク・コストと対策方法
所有者不明、または放置状態にある空き家の問題は、少子高齢化社会に伴って年々深刻化しています。土地や建物が管理しきれない場合は、どのような方法を検討するべきなのでしょうか。
この記事では、空き家を管理する場合の選択肢と注意しておきたい3つの潜在リスク、4つの管理方法について紹介します。固定資産税・管理費用に関するポイントや、空き家にしないための対策についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
空き家を管理する場合の選択肢
空き家を管理する際、選択肢として「管理会社への依頼」「自分自身で管理する」という2つの方法が選択肢として挙げられます。それぞれの方法について詳しく確認していきましょう。
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管理会社に依頼する
空き家状態にある建物を管理する場合、ノウハウがない方や空き家の遠方に住んでいる場合には、管理会社への依頼がおすすめです。
一般の不動産会社やNPO法人、不動産業務全般を扱うゼネコンなどが空き家の管理業務を請け負っており、持ち主が所有している空き家を当人に代わって巡回しながら、定期的に清掃や換気を実施します。
管理業務以外にも、土地活用や建て替えの相談ができる会社もあります。将来的に空き家を活用したい、または手放す予定がある方は、複合的に不動産業務を手掛けている会社に相談してみてはいかがでしょうか。
自分で管理する
空き家を持ち主自身が管理する方法もあります。こちらは管理費用が発生せず、自分のペースで清掃や手入れが行なえます。
家の庭や隣家との境目に汚れ・雑草が発生していないかを定期的に見回り、不審火・落書きがないか、不審者が住みついていないかも含めて防犯管理を行いましょう。
建物の内部は、老朽化や破損している箇所がないか、使えない設備の交換や修理点検、定期的な換気と清掃を実施します。
倒壊やその他の危険があると行政による調査の対象となるため、管理会社に委託しない場合でも適切に管理を続けていかなければなりません。
空き家の管理に潜むリスク
ここからは、空き家の管理に潜む3つのリスクとして「管理不全空き家・特定空き家の認定」「価値の下落」「所有者責任」について確認していきましょう。
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リスク①特定空き家に認定される
国土交通省が定め2015年から施行されている「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」では、空き家の中でも以下に該当するものを特定空き家として規定しています。
【特定空き家の定義】
- 放置すると著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切に管理が行われていないことにより著しく景観を残っている状態
「保安上危険となるおそれのある状態」とは、建物の倒壊や屋根材・外壁材の落下リスク、火災や害虫・害獣の発生による建物の損傷・倒壊リスク、不法滞在者の侵入や敷地内への不法投棄・犯罪の発生リスクが挙げられます。
害虫や害獣の発生は衛生的にも有害になるおそれがあり、建物を汚損して景観を損ねるリスクもあります。
これらのリスクがあると判断された場合、空き家法によってその不動産は特定空き家となり、強制的に取り壊しが行われます。取り壊し費用は所有者に請求されるため、あらゆるリスクを想定したうえで維持管理を行ってください。
※2023年12月からは、特定空き家の前段階として「管理不全空き家」の区分が新設されました。
リスク②価値が下落する
空き家を所有したまま活用せずにいると、不動産としての価値が下がってしまうおそれがあります。建物については、新築の状態がもっとも高価値であるのに対し、経年劣化をどの程度メンテナンスできているかがチェックされます。
空き家として放置状態にしていると、経年劣化によって建物が汚損しやすくなります。家具・家電・設備がそのまま残され、不具合や劣化への対応が滞りやすくなります。
外から入り込んだ風雨や室内にこもる湿気が設備故障につながるおそれもあり、不動産としての総合的な価値が下落する原因になるのです。
リスク③所有者責任が課される
空き家といっても、所有し続ける限りにおいては「所有者責任」が課せられます。
民法第717条「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」では、建物の所有者は無過失であってもその不動産に対して責任を負うものと定められており、建物が倒壊・破損して事故を起こした場合は、その責任を負わなければなりません。
一例として、空き家の屋根瓦が老朽化していたために落下し、隣家の建物に損害を与えた場合は、補修やその他の賠償責任を所有者自身が負うことになります。
リスク③所有者責任が課される
空き家の所有者には所有者責任が課せられており、適切に管理する義務があります。たとえ、自分に非がなくても、空き家が倒壊するなどのトラブルがあれば所有者が責任を負う必要があるのです。これは民法で定められており「工作物責任」といいます。
たとえば、災害で家屋が倒壊した場合、所有者が責任をもって修繕する必要があるということです。
また、空き家はほとんどのケースで火災保険に加入できず、修繕に保険が使えないため金銭的負担も大きくなります。管理が行き届いていないと管理不全空き家や特定空き家に指定され、税負担が増えますが、これも管理を怠った自己責任と言えるでしょう。
空き家の適切な管理方法
ここからは、空き家を適切に管理するための方法を確認していきましょう。
定期的に掃除する
建物の維持管理には、定期的な掃除が必要不可欠です。密閉性の高い建物の場合は、室内に湿気がこもりカビが発生し、ダニやシロアリのような害虫の発生リスクがあります。
水まわりはカビ取り作業を定期的に行い、駆虫・防虫作業も数ヶ月〜数年に一度は必ず実施しましょう。
建物の周りも確認し、外から飛んできたゴミや落ち葉も含めてきれいに片付けてください。隣家・隣地とのあいだにあるゴミも確認し、取れるものはきれいに取り除いておきましょう。
換気を徹底する
どの建物でも、湿気によって老朽化が早まります。日本は高温多湿な環境のため、換気はこまめに行ってください。
建物に入ったら、水回りを中心にすべての部屋を換気します。屋根裏・小屋裏収納・地下室のように窓がない場所もサーキュレーターや扇風機を活用して、風が行き渡るように工夫します。
通水する
通水とは、水栓をあけて排水管に水を流す作業です。
通水をすると、排水口から排水管に繋がる部分の「封水」が新しく溜まります。封水とは排水管の奥から臭いや害虫が登ってこないようにするための水で、時間が経つと蒸発するため、不衛生の原因になってしまいます。
キッチン・手洗い場・洗面所・浴室・トイレ・その他の水周りを含め、すべての蛇口をあけて水を数秒間流してください。
雨漏り対策を行う
経年劣化した建物は、屋根から天井にかけて雨漏りを起こすおそれがあります。
修理点検が行き届いていれば問題はありませんが、設備が古くなっている場合は屋根そのものの葺き替えや屋根材の交換を検討して、雨漏り対策を実施してください。
その他
庭木がある場合は定期的に選定しましょう。枝を生い茂ったままにしておくと強風で折れて飛んでいく可能性があるからです。最悪の場合、近隣の家の窓が割れてしまうおそれもあるため、できるだけきれいにしておきましょう。
また、ポストにチラシがたまってあふれていたり、屋根や外壁が剥がれそうになっていたりする場合も同様です。郵便ポストまわりや家の外壁、屋根のチェックも忘れてはいけません。
とくに、雑草は景観を損ねるだけではなく、家の中が見えにくくなるため不法侵入などのリスクも高まります。遠方に住んでいる場合は、管理会社に依頼し定期的に清掃してもらうという方法もあるため、きちんと管理できる体制を整えておきましょう。
空き家を管理するうえで押さえておきたいコスト
空き家を管理する際、自分自身で管理すれば第三者への委託費用はかかりません。一方で、固定資産税・管理費用が必ず発生します。
ここからは、押さえておきたい2つのコストについてみていきましょう。
関連記事:空き家の固定資産税が6倍になる理由と軽減措置を継続する方法
固定資産税
固定資産税は、土地や建物(不動産)を資産として所有している人に課せられる税金です。
毎年1月1日時点で不動産を所有していると、その所有者には納税義務が生じます。税率は市区町村ごとに異なるため、空き家のある地域の税率を確認のうえ、納税を行ってください。
管理費用
管理費用とは、空き家と土地を清掃・管理し、危険のないように維持するためにかかる費用です。
企業やNPO法人に管理を委託する方法もあり、サービス料金(委託費用)が発生します。所有者自身で管理する場合は、清掃や設備の修理点検に個別の費用が発生します。
空き家にならないための対策
所有している建物を空き家にしないためには、以下に紹介する3つのポイントを押さえておきましょう。
事前に家族で話し合っておく
建物の用途や管理者、管理方法については、空き家を管理・相続する人たちで事前によく話し合う必要があります。
あとから「知らなかった」「聞いていない」とならないように、空き家の将来性や維持管理の方法、空き家を解体・建て直す計画やスケジュール、税金や費用に関しても話し合いを進めましょう。
荷物を整理しておく
空き家を有効活用したいと思ったときは、まず荷物の整理から始めてみてください。
第三者に貸し出す場合、建物の中にあるものをすべて片付けてしまうか、第三者にも使ってもらえるように残すかを考えて仕分けをします。
一例として、雪国で家を貸し出す(空き家対策)場合は、除雪作業に役立つスコップやシャベル、除雪機は残しておいても良いかもしれません。
空き家に関する制度を調べておく
建物を処分する場合は、空き家対策として提供されているさまざまな制度を活用しましょう。
日本全国の市区町村では、空き家対策のために解体や建材の除却工事にかかる費用の一部を助成しています。
また、空き家を処分せずに貸し出したい場合は、「空き家バンク(空き家情報バンク)」に登録して借り手を募集できます。便利な制度を活用し、建物を有効に活用してみてください。
早期に空き家の活用・処分方法を検討する
今回は、空き家の管理について具体的な方法や考えられるリスク、対策方法を紹介しました。
空き家をそのままにしていると、老朽化が進んで資産価値が下がり、有効活用できないまま取り壊し処分に至るおそれがあります。
所有する建物の活用・処分について、事前によく話し合いを重ねながら、便利な制度の利用もご検討ください。
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この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。