空き家に税金はかかる?維持費を抑える方法も解説
「空き家にかかる税金の種類は?」
「空き家にかかる税金は誰が払う?」
「空き家の活用パターンを知りたい」
空き家は、たとえ使っていなくても、所有しているだけで維持費がかかります。
本記事では、空き家における税金について、網羅的に解説していきます。
空き家を何とかしたい、空き家を活用して利益を出したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
空き家とは
空き家とは、所有者が不明もしくは所有者がいても居住する予定がない家のことです。
近年、少子高齢化にともない空き家の件数は増えています。総務省の統計調査によると、2023年には空き家率が過去最高の13.8%になっており、大きな社会問題となっています。
一番の問題は適切に管理されず放置された空き家です。空き家となり長年放置していると、経年劣化による倒壊などで地域の景観を損ねたり、犯罪の温床になり治安が悪化したり、町の質が低下してしまいます。また、劣化した電気配線による漏電や不法侵入による放火など火災のリスクも生じるのです。
こういった問題を解決するために、国ではさまざまな対策をおこなっています。空き家の住宅用地特例措置によって固定資産税などが減額されるのも、そのうちの一つです。
参照:令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計
空き家にかかる税金
空き家の定義がわかったところで、いよいよ空き家にかかる税金について見ていきましょう。
基本的には、以下の2つが挙げられます。
- 固定資産税
- 都市計画税
それぞれ解説していきます。
関連記事:空き家の固定資産税が6倍になる理由と軽減措置を継続する方法
固定資産税
まず紹介する税金が「固定資産税」です。
固定資産税は、市町村が決めた土地の価値である「課税標準」×1.4%として算定します。
なお、市町村によって税率が異なることがあります。
また、固定資産の課税標準額が土地なら30万円、建物なら20万円に満たなかった場合は課税されません。
都市計画税
次に紹介するのが「都市計画税」です。
都市計画税は、市町村が決めた「課税標準」×0.3%として算定されます。
なお、市町村によって税率が異なることがあります。
都市計画税は空き家にかかる税金の一部であり、所有者が都市計画に貢献することが期待されています。
空き家税(非居住住宅利活用促進税)
社会問題となっている空き家対策として、京都市では全国に先駆けて2026年に空き家税が導入されます。正式には「非居住住宅利活用促進税」といい、空き家や別荘など定住を目的としない住宅に課せられる税金です。京都市では空き家の増加により、市内に住みたい若者の住宅が確保できず、市外への流出が増加しました。そこで、京都市内に居住できる住宅を増やし、人口減少に歯止めをかけるという目的のもと空き家税が導入される予定です。空き家の売却や再利用を促す空き家税は、同じ悩みを持つほかの地方自治体でも導入される可能性があります。固定資産税や都市計画税に、この「非居住住宅利活用促進税」が課税されるため、空き家を所有するリスクはますます高まるでしょう。
空き家にかかる税金は誰が払う?
空き家の固定資産税の納税義務者は、空き家の所有者であり、所有権が登記上の1月1日時点の所有者が納税義務を負います。
もし所有者が故人であれば、相続人が納税義務を負うことも押さえておきましょう。
また、不動産が年の途中で売買された場合、固定資産税の負担割合は売主と買主の間で登記の移転日に応じて取り決められるのが一般的です。
このように、納税義務者は所有者によって異なり、売買によって負担割合が決まります。
関連記事:空き家を管理する方法と注意したい潜在リスク・コストと対策方法
特定空き家に認定されるデメリット
空き家の定義は「1年以上住んでいない、または使われていない家」です。
これは「空家等対策特別措置法」によって定められており、判断基準としては、人の出入りの有無や、電気・ガス・水道の使用状況、物件の管理状況、所有者の利用実績などが挙げられます。
つまり、長期間空き家として放置されている家や、利用されずに放置されている家が、空き家とされるわけです。
そのなかでも、行政によって認定される「特定空き家」なるものが存在します。
その特徴は以下の通りです。
- 建物の破損や倒壊で保安上の危険がある
- ゴミの放置による異臭や動物・虫の繁殖など衛生上有害である
- ゴミや落書きの放置や立木・雑草の繁殖など景観を著しく損なう
- 不審者の侵入や落雪など生活環境の保全に著しい悪影響がある
「空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」によると、以下のように定義されています。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等
ここからは、特定空き家に認定される以下2点のデメリットについて見ていきましょう。
- 認定されると固定資産税が高くなる
- 行政からの勧告に応じない場合にペナルティがある
それぞれ解説していきます。
関連記事:放置空き家の割合・放置に潜むリスクと有効活用のための解決策
行政からの勧告に応じない場合にペナルティがある
特定空き家に認定されるデメリットのひとつは、行政からの勧告に応じない場合にペナルティが課されることです。
行政からの指導・勧告・命令に従わない場合、最初の段階では50万円以下の過料が課される可能性があります。
しかし、これらの指導に従わない状態を継続すると、最終的には行政代執行を受ける可能性もあるため、所有者にとっては追加的な経済的負担や法的手続きの面倒が生じるデメリットがあります。
認定されると固定資産税が高くなる
特定空き家に認定され行政から勧告を受けると、土地の固定資産税の優遇措置が外され、固定資産税が最大6倍にはね上がる可能性があります。
通常は空き家に対して特別措置があるため、固定資産税が軽減されますが、特定空き家の場合はそれが適用されず高額な税金を支払うことになります。
所有者は経済的な負担が増加するため、早急な対策・利用計画の検討が求められるでしょう。
固定資産税が最大6倍になる理由
先ほど少し触れたように、固定資産税が6倍になる理由は、土地の固定資産税の優遇措置が外されるからです。
空き家は適切に管理していれば、住宅用地特例措置によって固定資産税が最大で6分の1に減税されます。しかし、以下の条件に当てはまると、「特定空き家」に指定され、特例措置が受けられず固定資産税が6倍となってしまうのです。
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- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
引用:国土交通省 住宅局住宅総合整備課 「空家等対策特別措置法について」
税負担を増やさないためには、特定空き家に指定される条件を確認し、適切に管理することが重要です。
固定資産税6倍が決定する段階とその対策方法
上記でも述べたように、これから空き家になる可能性がある家や、すでに空き家になっている家は、自治体からの「勧告」が出た時点で、人が住んでいない(住めない)建物として認知されます。
すると住宅用地の特例という固定資産税の軽減対象から外れてしまい、固定資産税6倍が決定します。
ではどのような流れで固定資産税が6倍になるのでしょうか。
特定空き家の指定
まず、空き家が「特定空家等」に指定される必要があります。特定空家等とは、倒壊の危険がある、不衛生な状態である、景観を損ねている、またはその他の地域の生活環境を保全するために適切でないと認められる空き家を指します。空き家は担当者の見回りなどで発見されるケースと、近隣住民からの連絡で確認されるケースがあります。ただ、人が住んでいない状態であっても、この段階で十分な配慮と対策があれば、将来的に、固定資産税の特例から外れるようなことにはなりにくい傾向があります。
〈対策〉空き家の管理不十分かどうかの判断は自治体の担当者であり、「こうだと管理が悪く、これであれば大丈夫」などの明確な線引きはありません。ですので行政の見回りによる管理状態のチェックの際に、管理の悪い空き家だと判断されないようにするために、周辺の家の外観に合わせた状態になるように管理をしてください。
ただし、気を付けて管理しているつもりでも、近隣住民に迷惑をかけてしまい、問題のある家屋と見なされることがあります。例えば、害獣や害虫の増加や空き巣被害が発生すると、空き家が直接の原因ではなくても、「あの空き家を何とかしてほしい」というクレームが周辺住民から寄せられることがあります。
そのため、普段から周辺住民への配慮を忘れずに行い、空き家に関して何か気になることがあればすぐに連絡してもらえるよう、連絡先を伝えておくことが重要です。これにより、行政への通報を回避することができるでしょう。
「特定空き家」や「管理不全空き家」の指定
「特定空き家」や「管理不全空き家」の指定は、自治体によって空き家の実態を調査して判断されます。また、近隣に住む人からの訴えによって調査が入り指定に至るケースもあるようです。
空き家対策特別措置法によると、空き家は「特定空き家」と「管理不全空き家」に2つに分けられます。
簡単に説明すると、特定空き家は倒壊や衛生上の問題があったり、防犯面で治安の維持に影響を与えていたりする状態です。一方、管理不全空き家は特定空き家に指定される前段階です。現状のままだと、将来的に遠く低空き家となるリスクが高い状態のときに指定されます。
助言・指導
特定空き家および管理不全空き家に指定されたら、すぐに固定資産税が6倍になるわけではありません。まずは、現状を改善するように、助言・指導が入ります。この時点で改善すれば、特定空き家および管理不全空き家の認定は解除されます。できるだけ迅速に対応しましょう。
行政からの勧告
次に、市町村は特定空家等に指定された空き家の所有者に対して、「このままでは困るので改善してください」とお願いする「勧告」を出します。この勧告では、空き家を適切に管理したり修理したり、場合によっては解体したりすることを求められます。もし、所有者がこの勧告に従わない場合、市町村はさらに強い措置を取ることがあります。
固定資産税の優遇措置の解除
最後に、特定空家等に対する勧告が出され、それに従わなかった場合、その空き家に対する固定資産税の住宅用地特例が解除されます。通常、住宅用地は固定資産税の課税標準が軽減されていますが、この特例が解除されると、住宅用地としての特例が適用されず、結果として固定資産税が6倍に増額されることになります。
これにより、特定空家等に対する固定資産税が通常の住宅用地の6倍となるのです。
〈対策〉市町村の担当者と相談しながら、どの程度の改善が必要かを決めていきます。行政は、所有者の年齢、職業、現住所、金銭的な背景などを考慮しながら、適切なアドバイスをしてくれるので、所有者も誠実に対応することが重要です。
行政の目的は、空き家の増加による住環境の悪化を防ぐことであり、積極的に空き家を壊したいわけではありません。空き家の所有者が、行政からの指導の理由を理解し、適切な対応をすることで、固定資産税が6倍になる事態を十分に避けることができるといえます。
命令
特定空き家に指定され、なお助言・指導、勧告に対応せず空き家を放置していると、このタイミングで固定資産税の特例措置が解除され、6倍になります。この命令に従わない場合は、50万円以下の罰金が科されます。
空き家を放置し続けていたり、所有者が不明で連絡がとれなかったりする場合、自治体に管理が難しいと判断され行政代執行により解体される可能性もあります。
空き家の維持費を抑える方法
空き家の維持費を抑える方法としては、まずは有効活用するという案があります。
たとえば、賃貸や民泊などの収益を得ることで、維持費をカバーすることができます。
また、自治体が提供している補助金や助成金の制度を活用することもおすすめです。
これらの制度を活用することで、空き家の改修やリフォームにかかる費用の一部を補助してもらうことが可能です。
さらに、空き家を売却することで、将来的な維持費の負担を軽減することも考えられます。
空き家の活用パターン
ここからは、3つの空き家の活用パターンについて、網羅的に解説していきます。
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- 建物をそのまま利用する
- 建て替える
- 更地にする
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それぞれ確認してください。
関連記事:空き家の運用方法や注意点を紹介
建物をそのまま利用する
まずは、現状の建物を利用するパターンです。
空き家を現状の建物として利用する場合、再利用やリノベーションが行われます。
これにより、空き家が放置されることなく、新たな活用方法が見つかることがあります。
たとえば、空き家を賃貸物件や宿泊施設としてリノベーションすることで、地域の観光振興や経済効果を生み出すことが可能です。
また、公共施設や共同住宅、店舗などの用途に転用することもできます。
これにより、地域の賑わいや活性化に寄与することが期待されています。
ただし、耐震性や法規制などの点に留意しながら、建物の状態や利用ニーズに合わせた計画が必要です。
建て替える
次に、建て替えるパターンです。
空き家を建て替える場合、まず現状の建物を解体し、新たな建物を建てます。
建て替えには、地域の建築基準や法規制に適合する必要があります。
また、周辺環境や景観に配慮しながら、建物のデザインや機能を検討することも重要です。
建て替えにはコストや時間がかかるため、計画段階で予算やスケジュールを慎重に考慮する必要があります。
しかし、空き家の建て替えにより、地域の景観や街の魅力を向上させることができます。
また、耐震性や省エネ性など、安全性や快適性の向上も図れるでしょう。
更地にする
最後に、更地にするパターンです。
空き家を更地にするとは、現状の建物を解体し、あった建物をなくすことを意味します。
この手法は、建物が老朽化しているか、再利用や建て替えが難しい場合に適用されます。
更地にすることで、新たな用途や開発計画が可能となりますが、周辺環境や法規制にも配慮しましょう。
また、解体作業にはコストと時間がかかるため、予算とスケジュールの確保も重要です。
更地にすることで、地域の活性化や景観改善に貢献することが期待されますが、再建設や利用計画の検討が必要です。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
空き家にも税金はかかる
空き家にも税金はかかります。
その理由は、その地域に住宅需要を喚起し、街の活性化を図るため。
所有者は空き家税や固定資産税を支払い、放置を防ぐことが求められます。
くわえて都市計画税も存在し、所有者には都市計画への貢献が期待されています。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。