空き家の相続人がいない場合の対処と生前からできる対策法について
空き家の扱いに困っている方に向けて、相続人がいない空き家への対処法についてまとめました。
亡くなった人が所有していた空き家があっても、相続人がいないケースもあります。
費用がかかる、相続人が死亡を知らなかった、もしくは受け継ぐ人がいない空き家を所有している人もいるでしょう。
そこで今回の記事では、相続人がいない空き家の対処法について解説します。
生前からできる対策法もご紹介しますので、空き家を遺す人、残された人のいずれも参考にしていただけるはずです。
目次
空き家の相続人がいない5つのケース
空き家には相続人がいないケースもあります。
たとえば次のような5つのケースでは、受け継ぐ人がいなくなってしまうかもしれません。
ケース①:相続人が一人もいない
まずは相続人自体が1人もいないケースです。
亡くなった方の相続人になるのは、配偶者、子ども、兄弟、親族など。
しかし中には、配偶者も子どももいない方もいるでしょう。
兄弟や親族がすでに全員亡くなっていれば、相続人は1人もいなくなります。
すると空き家があったとしても、「所有者は死亡していて誰も相続していない」ことになるでしょう。
ケース②:相続人と連絡が取れない
相続人と連絡が取れないケースも考えられます。
たとえば子どもがいたとしても、連絡が取れない状態であれば相続ができません。
連絡が取れない状態が7年以上続いた場合、失踪宣言を申し立てることにより、法律上の「死亡」とできます。
失踪宣言が行われると相続人としての権利を失うため、空き家の相続はできません。
もし相続人が複数いたとしても、全員と連絡が取れないようなら空き家の相続人がいない状態となります。
ケース③:相続人全員が相続放棄した
相続人全員が相続を放棄することもありえます。
「相続」と聞くと、財産を受け継ぐイメージがあるかもしれません。
しかし実際には、亡くなった方の負債もともに受け継ぐことになります。
たとえば亡くなった方に100万円の財産があったとして、1,000万円の負債もあったとしましょう。
すると1,000万円の負債もともに受け継ぐことになります。
上記のようにマイナスの財産が多い場合、相続人全員が相続を放棄することも少なくないでしょう。
また空き家の管理に困って、相続を放棄することもあるかもしれません。
すると空き家は相続人がいない状態となります。
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ケース④:相続人が相続欠格・相続廃除になった
続いては相続人が相続欠格になったり、相続廃除になったりした場合についてです。
相続人は法定上の相続の立場を必ず守れるわけではありません。
たとえば遺言書を書き換えたり破棄したり、相続争いで他の相続人を殺害したりすると相続ができなくなります。
相続の資格を失うことが「相続欠格」です。
そして「相続廃除」とは、亡くなった方が遺言書で「相続人にしない」と明記したことで相続権を失うこと。
どちらのケースでも相続はできないため、残された空き家の相続もできなくなります。
ケース⑤:特別縁故者はいるが、遺言書がない
空き家に相続人がいない最後のケースは、特別縁故者がいたとしても、遺言書が存在しない場合です。
特別縁故者とは、内縁関係にある親族以外の人のことを指します。
たとえば亡くなった人とずっと一緒に暮らしていたり、療養看護を行っていたりした人のことです。
つまり生前に大きく貢献していた人が特別縁故者とされます。
特別縁故者は相続人になれますが、相続を受けるには遺言書がなければなりません。
遺言書がなければ財産の相続が認められないため、空き家の相続もできなくなります。
特別縁故者が家庭裁判所に申し立てをした場合、相続できるようになることもあるでしょう。
しかし基本的には、遺言書がなければ特別縁故者でも相続はできません。
空き家の相続人がいない場合の対処法
それでは空き家の相続人がいない場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?
前項でご紹介したケースに当てはまったとしても、次の3つの方法で対処できます。
対処法①:相続放棄者へ連絡する
相続が放棄されていたなら、相続放棄者に連絡をしてください。相続を放棄したとしても、空き家の管理を行う義務は生じます。民法940条には次のように記載されているためです。
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
もし連絡が取れるようであれば、空き家の管理を任せられるでしょう。
対処法②:相続財産管理人の選任申し立てを行う
次の対処法は、相続財産管理人の選定申立を行うことです。
相続放棄者に連絡をすれば、義務として空き家の管理を任せられます。
しかし連絡が取れないこともあるはずです。
連絡が取れないようであれば、「相続財産管理人」の選定申立を行ってください。
相続財産管理人とは特別縁故者の申立によって行われます。
空き家を含む財産を弁済する手続きを取ったり、特別縁故者に財産分与をしたりすることが仕事です。
空き家に相続人がいて特別縁故者がいるようであれば、相続財産管理人の選定申立を行いましょう。
対処法③:国庫へ帰属する
国庫に帰属させることも対処法のひとつです。
民法では処分できなかった相続財産は、国庫に帰属することと示されています。
(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
国に管理してもらうことになるため、空き家に相続人がいない場合でもその後の管理は必要ありません。
生前にできる相続人のいない空き家の対策
もし空き家の相続人がいないことがわかっていれば、生前に対策が行えます。
対策①:遺言書を作成する
特別縁故者がいるなら、遺言書を作成しましょう。
遺言書があれば特別縁故者を相続人にできます。
ただし記載に不備があると認められないこともあるため、不安であれば公証人に作成してもらった方が良いかもしれません。
遺言書があれば、ご自身が渡したい方に財産を相続させられます。
対策②:空き家を贈与する
空き家を贈与するのもひとつの方法です。
生前の贈与であれば、本人が希望する方に空き家を贈与でき、贈与を受けた人は自由に利用できるようになります。
管理を任せたいと思う人がいるなら、生前贈与がおすすめです。
対策③:空き家を売却する
生前に売却してしまう方法もあります。
売却すれば現金が手に入るでしょう。
空き家を遺すと固定資産税の支払いが必要となったり、どのように活用するかアイデアが浮かばなかったりすることも。
管理の手間もかかって、現金より手間が必要となります。
そこで売却してしまえば買い取り金を老後資金にしたり、特別縁故者のために遺したりできるため、住宅よりは使い勝手が良いはずです。
今後使わない空き家であれば、売却してみてはいかがでしょうか。
空き家の相続人がいないなら生前から対策を
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、空き家の相続人がいない場合の対策がご理解いただけたと思います。
空き家の相続人がいないケースはさまざまに考えられます。
生前から対策をしておけば、より有効活用できるかもしれません。
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この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。