空き家は更地にするべきか?更地にするメリットとデメリットについて
空き家をどうするべきか悩んでいる方に向けて、空き家が建っている土地を更地にするメリットとデメリットを解説します。
不動産は財産ではあるものの、固定資産税が課されるとのデメリットがあります。
そのため「更地にしようか?」と考える方も少なくありません。
しかし空き家が建っている土地を更地にするのには、メリットとともにデメリットがあるのも事実です。
今回の記事では空き家を更地にするメリット・デメリットや、支払う税金を抑えるためのコツについて解説。
参考にしていただければ、所有している空き家をどのようにしていくべきなのか、判断しやすくなるはずです。
目次
更地の定義
「更地」とは空き家を含めて建物などが建っていない、何もない土地のことを指します。
また借地権も付いていないため、自由度の高い土地です。
更地には建物だけではなく、樹木や庭石など、土地以外のものが存在しません。
本当にまっさらにした土だけの状態の土地を更地と呼びます。
つまり空き家が建っている土地を更地にするには、建物を壊さなければなりません。
さらに土地の中にあるものをすべて撤去した状態が、「更地」と言える土地です。
関連記事:更地の固定資産税はなぜ高い?税金の計算方法と軽減のための対策方法
空き家を更地にするメリット
空き地が建っている土地を更地にすると、さまざまなメリットがあります。
建物を建てたままにするか更地にするか迷っている方は、更地にするメリットを確認したうえで判断しましょう。
メリット①:買い手が見つかりやすくなる
まずは買い手が見つかりやすくなることです。
空き家をそのままにして売却した場合、買い主は建物をそのまま使わなければなりません。
もしその他の用途に土地を活用したいと考えた場合、建物を壊すための費用が必要です。そのため買い手が見つかりにくくなる傾向があります。
しかし空き家を壊して更地にすれば、さまざまな使い方ができるでしょう。
新しく建物を建てたり駐車場にしたりも可能です。
そのため土地を売却するのであれば、そのまま空き家を建てておくよりも、更地にしたほうが売れやすくなります。
土地の売却を検討しているのであれば、建物を壊すことで買い手が見つかりやすくなるでしょう。
メリット②:建物の維持管理費が不要になる
更地にするメリットのひとつが、建物の維持管理費が不要になることです。
空き家が建っていると、建物の管理が必要となります。
周辺の雑草を処理したり、建物の修繕をしたり、危険がないような状態にしたりしなければなりません。
以上のような建物の管理には、労力とともに費用が必要となるでしょう。
しかし更地であれば、建物が建っている土地よりも管理が楽です。
建物を修繕する必要もなく、周辺への危険性を考慮する必要もなくなります。
ただ土地だけを管理するだけで、特別な費用はかかりません。
更地にすると所有している不動産の維持管理費が不要となり、財産を持っていることによるマイナスが少なくなります。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
メリット③:建物に関するトラブルが防げる
建物に関するトラブルを防げるようになるのも、更地にするメリットのひとつです。
更地にすると地震や台風などで大打撃を受ける心配もないため、責任を負うリスクが減ります。
また建物に大きな不具合が見つかったとしても解体してしまえば、建物に関して悩む必要もありません。
もし建物が建っている状態であれば、空き家に出す前に修繕する必要性が出てくるでしょう。
修繕せずにそのまま空き家として売りに出してしまえば、借りた人や購入者からクレームが入ることもあります。
都度対応すると費用や精神的負担が大きくなるので、責任の重荷を下ろすにも更地にするのはメリットと言えるでしょう。
空き家を更地にするデメリット
空き家を更地にすることにはメリットがあるとご紹介しましたが、メリットばかりではありません。デメリットもあります。
更地にするべきかどうか迷っているなら、メリットだけではなくデメリットも把握したうえで、どのようにするべきか判断しましょう。
デメリット①:土地の固定資産税が高くなる
空き家が建っている土地を更地にすると、土地の固定資産税が高くなります。
固定資産税は小規模住宅用地として建物が建てられている場合、軽減措置が取られるためです。
200平方メートル以下の住宅用地であれば、すべての面積において保有にかかる税金が1/6になります[1]。
そのため空き家を壊して更地にすると、保有にかかる税金の軽減措置が適用されなくなります。
土地の保有にかかる税金がこれまでの6倍になると考えると、金銭的負担がかなり大きいと感じるのではないでしょうか。
更地の土地を持っているのに比べて、空き家が建っている土地を持っていると節税効果が高まります。
[1]参照:国土交通省:(PDF)固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
空き家は放置しても固定資産税が高くなることに注意
更地にすると土地の固定資産税が高くなると解説しましたが、空き家であれば放置しても保有にかかる税金が高くなることがあります。
もし空き家が「特定空き家」に指定されたとしたら、固定資産税が軽減される小規模住宅用地の特例の適用対象外となるためです。
特定空き家に指定されるのは、適切な管理が行われていないと判断された空き家です。
たとえば害虫が発生していたり、倒壊の危険性が高かったりする空き家であれば対象となるかもしれません。
特定空き家に指定されると住宅用地特例の適用対象ではなくなり、1/6の固定資産税軽減措置は受けられません。
空き家の状態によっては、そのままにしても壊しても、保有にかかる税金は変わらないことがあります。
関連記事:空き家を活用するにはどうしたらいい?事例と一緒に収益化をするアイディアを紹介
デメリット②:新しく建物を建てられなくなる場合がある
建物を壊してしまうと、更地にした後、新たな建物を建てられなくなるケースがあります。
なぜなら「再建築不可物件」とされてしまうことがあるためです。
再建築不可物件とは、都市計画区域と準都市計画区域内にあります。
建築基準法では幅員4m以上の道路に接していない土地では、建物を建てられません。
建築基準法は定期的に改正されるため、改正前には建物を建てられたものの、現在は建てられないケースもあるでしょう。
そのため空き家を壊して更地にし、新たな建物を建てようと考えている際には要注意です。
更地にしたら、もう建物を建てられなくなる可能性もあります。
デメリット③:空き家の解体にコストがかかる
最大のデメリットとも言えることが、空き家を壊すのはコストがかかることです。
建物を壊すには大掛かりな工事が必要となります。
一般的には約100万円とされていますが、住宅が大きいほどかかる費用も増加。
木造であれば抑えられ、鉄筋造、RC造の順にコストが上がっていきます。
80坪のRC造住宅であれば、400万円ほどかかることも珍しくありません。
更地にして売却や活用をしようとしても、初期投資が必要となります。
空き家を壊すには高額なコストがかかるデメリットがあることも知っておいてください。
デメリット④:解体工事の手間がかかる
建物を解体する際にお金がかかるのはもちろん、工事の手間が発生します。
解体には解体専門業者を手配したり近隣に挨拶したりと、何かと負担が大きいものです。
また、ある程度私物を破棄したり分別したりしなくてはならないケースもあります。
解体後は1ヶ月以内に、建物滅失登記の手続きをしなくてはいけません。
手続き自体に費用はかかりませんが、業者に代理で行ってもらう場合は数万円ほど報酬を払うことになります。
もし手続きを怠った場合は、不動産登記法第164条に基づいて10万円以下の罰金が課せられるので注意しましょう。
参照:e-GOV 法令検索
空き家を更地にして売却するのがおすすめのケース
空き家を更地にすることにはメリットもデメリットもあります。
しかし更地にすることでメリットが大きいケースがあることも事実です。
更地にするかどうか迷っている方にとっては、メリットが大きいほうを選びたいと思われるのは当然のこと。
それでは更地にして売却したほうが良いのは、どのようなケースでしょうか?具体的に3つのケースについて見ていきましょう。
ケース①:立地条件が良い
まずは立地条件が良い物件です。
立地条件が良い土地であれば、空き家を壊して土地活用したほうが良いでしょう。
たとえば賃貸アパートを建てたり、コインパーキングにしたり、トランクルームを建てたりなどの用途があります。
もしあまり人通りのない住宅地であれば、空き家をそのままにしたほうが良いかもしれません。
しかし立地条件が良い場所で空き家をそのままにしておくのは、土地の活用方法としてもったいないこと。
建物は壊すために高額な費用が必要となります。
しかしかかった費用を回収できるほどの利益があれば、投資も無駄にはなりません。
更地にして新たな事業を開始すれば、利益を得られることもあるでしょう。
ケース②:空き家の耐震性が著しく低い
空き家の耐震性がかなり低い場合も、解体されることをおすすめします。
古い耐震基準にて建てられている建物は、現代の建物と比べて耐震性がかなり低くなっています。
空き家を更地にせずリノベーションして、ゲストハウスにする…との方法もありますが、耐震性が低いのであればゲストハウスも不安なもの。
また耐震性の低い住宅は、「売却しにくい」ことも事実です。
なぜなら一定の耐震性を満たしていない建物を購入する際には、住宅ローン減税が受けられなくなるため。
売却するにも不利となるため、耐震性の低い空き家であれば更地にしたほうが良いでしょう。
ケース③:特定空き家になりそうなほど劣化が激しい
特定空き家に指定されそうなほど劣化が激しい住宅も、壊したほうが良いと考えられます。
たとえば倒壊の危険性があると思われる住宅などが該当します。
特定空き家となると小規模住宅用地であることによる税金の軽減措置が受けられなくなります。
また建物の状態を改善するため、行政から修繕を求められることもあるでしょう。
従わなかった場合、強制的に解体作業が行われることもあります。
強制的に解体が行われると、ご自身で業者を探して解体するのに比べて高い費用が発生することも。
特定空き家になると建物を所有しているデメリットが大きくなるため、更地にすることで負担が少なくなるはずです。
空き家を更地にする際、固定資産税のリスクを軽減する方法
空き家を更地にすると、土地の固定資産税が高くなります。
少しでも税金負担を軽減するには、解体工事や建築工事を実施する時期を調整するのがポイントです。
では、いつ頃に解体と竣工をすればよいのでしょうか。
ここでは、それぞれのタイミングを紹介しているので、更地にする前にご確認ください。
取り壊しは1月1日以降におこなう
更地予定の土地の固定資産税を抑えるなら、空き家の解体を1月1日以降に行うのがおすすめです。
土地の固定資産税は、毎年1月1日を基準にして納税額が決められます。
1月1日時点で建物があれば住宅用地の特例を受けられるため、減税対象となり例年通りの固定資産税になります。
しかし1月1日時点で更地になっている場合は特例を受けられず、高額な固定資産税が課せられるので注意が必要です。
解体業者に依頼する際に、あらかじめ1月1日以降に解体したい旨を伝えれば調整してくれます。
空き家を更地にする場合は、固定資産税の軽減対策のためにも1月1日以降に行うようにしましょう。
1月1日より前に竣工する
更地として所有しているよりも、空き家のある土地として所有していたほうが固定資産税は安くなります。
そのため、更地にしてから新しく建物を建てて空き家として出す場合は、1月1日より前に建築が完了するように計画するのがおすすめです。
1月1日時点で建物が完成していれば、住宅用地の特例を受けられて更地よりも安い固定資産税に設定されるでしょう。
なお解体と建築を1年以内に行わないといけないため、計画的に進める必要があります。
規模や資材調達、業者選びなどで時間がかかることも考慮し、全体の流れをあらかじめ決めてから解体と建築を進めるのがよいでしょう。
空き家の固定資産税を抑えるための活用方法
空き家は税金の軽減措置対象から外れてしまう可能性が高い建物です。
しかし空き家であっても、税金を抑えるための方法はあります。
更地にせずに空き家を所有しておきたいと考えている方は、次の4つの方法を参考にしながら、金銭的負担を減らしていきましょう。
関連記事:空き家の固定資産税が6倍になる理由と軽減措置を継続する方法
活用方法①:リノベーションして賃貸に出す
空き家を活用する方法として、リノベーションをして賃貸にする方法があります。
賃貸物件にすれば毎月の家賃収入が得られるようになり、土地の保有にかかる税金の負担が軽減されるでしょう。
さらに「適正に管理されている住宅」として、特定空き家として指定される確率も低くなります。
特定空き家とならなければ、住宅用地特定の対象となり、税金の軽減措置が適用可能に。利益が生まれてさらに節税効果も得られるため、収支がプラスになることもあるでしょう。
ただしリノベーションには費用がかかります。
すべてリノベーションする場合、500~2,500万円ほどが平均相場。
空き家活用のための助成金制度も活用して、賃貸にできる状態にしましょう。
活用方法②:リノベーションしてセカンドハウスにする
リノベーションをしてセカンドハウスにするのも方法のひとつです。
セカンドハウスも住宅用地特例の対象であるため、税金軽減効果がうまれます。
セカンドハウスは立地によっては、レジャーや休暇、避暑のためのスポットとして便利です。
郊外にある空き家であれば、静かな暮らしを楽しめる場所として役立つでしょう。
空き家はそのままにしておいては、ただ使われないまま古くなっていく建物です。
しかしリノベーションをしてセカンドハウスとして利用すれば、所有者の生活の質を高めてくれるものにもなります。
賃貸にしても良いですが、セカンドハウスとしての活用方法もおすすめです。
活用方法③:空き家バンクを利用する
現在注目度が高いのが、空き家バンクを利用する方法です。
空き家バンクとは空き家を移住者や交流を希望する方に提供するための物件をまとめて紹介する仕組みのこと。
賃貸物件と同じではありますが、空き家バンクを利用すると地方公共団体が提供する物件となります。
そのため一般的な賃貸物件よりも信頼度が高くなることがメリットです。
最近では郊外で暮らしたいとの需要が増えており、移住が盛んに行われています。
アクセスの良くない立地であっても、移住希望者にとってはそのほうが魅力的に映ることもあり、住んでくれる人が見つかりやすいはずです。
利用しない空き家があるなら、空き家バンクを利用してみてはいかがでしょうか。
活用方法④:売却する
売却するという方法もあります。
空き家が建っていても更地にしても、売却してしまえば税金は課されません。
固定資産税の支払いをなくしたい場合は、不動産はすべて売却するのが一番の方法でしょう。
最近では郊外に移住する方が増えています。
空き家が建ったままでも価格が安ければ、買い手が見つかる可能性も高いと考えられます。
もちろん更地にすると、土地だけを必要とする方からの需要が見込めるでしょう。
更地にするとしても空き家のままにするとしても、売却はできるはずです。
もし空き家を活用する予定がない、活用しようがないと思われるなら、売却をおすすめします。
空き家を更地にするのはメリットもデメリットも
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、空き家を更地にするメリットやデメリットがご理解いただけたと思います。
更地にするとメリットもありますが、反面、デメリットもあるものです。
しかし空き家を使わないまま所有していても、税金がかかるばかりでしょう。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
もし空き家を更地にしようかと迷っているようでしたら、活用を検討されるのがおすすめです!
この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。