埼玉エリアの空き家活用方法と利活用に使える制度・補助金
日本では、少子高齢化や都市部への一極集中といった変化による「空き家問題」が深刻化しています。
空き家のまま放置され、建物が老朽化して景観を乱したり、周辺住民の安全や生活の妨げになったりするケースも報告されています。
ここでは、埼玉県における空き家の現状について詳しく取り上げています。
空き家の活用方法や埼玉県の空き家活用事例、県内で利用できる補助金と制度も紹介していますので、空き家の利活用を検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
埼玉県における空き家の現状
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によれば、埼玉県の総住宅数の推移は次のとおりです。(※)
都道府県 | 総住宅数 | 空き家率 |
埼玉県 | 338万戸(2018年)
355万戸(2023年) |
10.210%(2018年)
9.4%(2023年) |
2023年の総住宅数は、関東エリアでは東京都・神奈川県についで多く、5年間で17万戸増加しています。一方、空き家率は2018年が10.210%、2023年は9.4%と、5年間で0.81%減少しました。
総住宅数に対する空き家率を実数に直すと2018年は34.5万戸、2023年は33万戸で、総住宅数が増えているのに対して空き家数は減少しています。
※参照元:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
関連記事:空き家の運用方法や注意点を紹介
埼玉県の空き家を活用する手段
埼玉県で空き家を活用する場合、次の方法が選べます。
【空き家の活用】
- リノベーションして自分で住む
- 賃貸物件にリノベーションして貸し出す
- 空き家バンクに登録する
- 売却する
それぞれの方法について確認していきましょう。
方法①リノベーションして自分で住む
住宅をリノベーションして持ち主が居住する方法は、低コストで住居を獲得できる方法です。
リノベーションとは、空き家を改修して老朽化した建材や設備を新しいものに刷新する方法です。
リノベーションにあわせてバリアフリー化や耐震改修工事を施すケースもみられます。
老朽化が激しい建物や築年数が経っている空き家は手厚く修繕しなければなりませんが、土地の購入やゼロから建て直す必要がなく、リノベーション費用のみで住まいが手に入ります。
方法②賃貸物件にリノベーションして貸し出す
リノベーションとは、古くなった建材や設備を刷新したり、外観や内観を大きく変更したりすることです。
賃貸物件として貸し出す方法は、不動産を有効に活用できる方法です。
賃貸住宅だけではなく事業用の物件としても貸し出せるため、立地条件や需要などをリサーチし、リノベーションを施しましょう。
方法③空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、全国の地方自治体が抱える空き家物件の情報をまとめて、提供者と利用者をマッチングする制度・システムです。
空き家の持ち主は空き家を購入または借りられる状態に整え、購入または賃貸希望者に提供します。
空き家バンクに登録するだけで希望者とマッチングできるため、スムーズな空き家活用が期待できるでしょう。
埼玉県では、次の地域で自治体ごとに空き家バンクが設置されています。(※)
【設置場所】
- さいたま市
- 県央地域
- 東部地域
- 南部地域
- 南西部地域
- 西部地域
- 川越比企地域
- 利根地域
- 北部地域
- 秩父地域
自治体のまちづくり推進課や建築家、開発建築課などが空き家バンクを管轄していますので、詳しくはお問い合わせください。
※参照元:埼玉県「市町村空き家バンクのご紹介」
方法④売却する
使用の見込みがなく、リノベーションやリフォームも検討していなければ、売却が選択肢となります。
建物(空き家)に需要があれば清掃や片付けを行い、必要に応じて設備の入れ替えなどを行って売りに出すことができますが、建物を活用するめどが立たない場合は解体・更地にして土地だけを売却します。
さいたま市など人口が多いエリアでは、土地だけでも一定の需要が期待できます。
郊外の地域でも、駐車場や地域コミュニティのためのスペースとして利活用が期待できますので、早めに空き家の売り方を考えたいところです。
関連記事:空き家を売りたいときの売却方法と流れ・メリットと注意点
埼玉県の空き家活用事例
ここからは、埼玉県で行われている空き家の活用事例をみていきましょう。
事例①コミュニティスペースへの活用事例
埼玉県秩父市で、明治末に建てられた町家の母屋と蔵を改装し、地域のコミュニティスペースにした事例です。(※)
県文化振興課の助成事業に申し込み採択された結果、内外装や瓦屋根の補修・塗装、耐震補強工事や外構の整備が行われました。
特定非営利活動法人の芸術活動拠点(アートセンター施設)として整備され、コンサートや展示などが行われています。
※参照元:埼玉県「空き家利活用事例集」
事例②作家・ファンの交流場所の活用事例
埼玉県北本市で築100年の歴史をもつ納屋と、築年数が不明の戸建住宅を、現代美術作家の制作・発表の場や交流拠点として改装した事例です。(※)
住宅を和室から洋室に変更し、納屋はギャラリーとして改装しました。
北本市近郊でものづくりを行う作家・アーティストのほかに芸術に興味をもつ人々を募り、カフェ・料理教室・製品の制作展示・イベントなどに活用されています。
※参照元:埼玉県「空き家利活用事例集」
事例③ポケットパークとしての活用事例
埼玉県本庄市では、住宅が密集しているエリアの空き家対策として、管理不全状態となった空き家の除却を行い、ポケットパークとして整備している事例です。(※)
本庄市中心部でのポケットパークの整備は、地域のコミュニティ活動の推進や公園愛護精神の高揚のほか、災害時の避難場所としても活用が期待されています。
また、火災発生時の延焼防止や緑化推進、狭隘道路の解消にも役立つとされています。
※参照元:埼玉県「2 活用事例集 (2)まちづくり方策の事例」
関連記事:空き家を活用するにはどうしたらいい?事例と一緒に収益化をするアイディアを紹介
空き家をリノベーションして活用する際にかかる費用の相場
空き家をリノベーションし、活用するためには、内外装や屋根、水回りなどの設備を修繕・刷新する必要があります。
リノベーションにかかる費用の相場は次のとおりです。
施工場所 | 内容 | 費用の目安 |
屋根 | 再塗装
葺き替え 瓦の交換 |
20〜80万円
90〜250万円 70〜120万円 |
外壁 | 外壁材の再塗装
サイディング貼り替え |
50〜150万円
80〜200万円 |
内壁 | クロス貼り替え
クロス珪藻土化 |
6〜30万円
18〜30万円 |
床 | 畳交換
フローリングへの変更 クロス貼り替え |
6〜12万円
15〜60万円 6〜30万円 |
窓 | 内窓追加
サッシ交換 雨戸交換 |
6〜12万円
5万円〜 70〜150万円 |
その他 | 階段リフォーム
バルコニーリフォーム 耐震補強 |
リフォーム内容・規模によって異なる |
リノベーションは部分的に施すものもありますが、空き家が老朽化している場合は、空間すべてを修繕する大掛かりな工事が多くみられます。
減築や古民家再生のように、外構も含めたリノベーションは2,000万円を超えるものもあるため、業者と相談し見積もりをとる必要があります。
関連記事:空き家のリノベーションにかかる費用と期間・コストを下げる方法
埼玉県の空き家活用に関する補助金・助成金制度
埼玉県では、空き家活用に関する補助金・助成金制度を整備しています。
ここからは、埼玉県で実施している空き家活用の補助金をみていきましょう。
その①空き家の改修に関する補助金
埼玉県越谷市では、「越谷市空き家の改修・除却費用補助金」として、空き家の改修・除却にかかる費用の一部を補助しています。(※)
【越谷市空き家の改修・除却費用補助金】
申請期間 | 令和6年4月8日〜(先着順・予算に達し次第締め切り) |
対象者 | 次のいずれかに当てはまる方
|
助成額 | 補助対象経費の3分の2(上限30万円) |
備考 | 改修する空き家を地域活性化のために10年以上継続して活用することを事前に説明し、補助対象となるか確認を受ける。事業計画書や団体概要書を提出する |
改修工事に補助金を利用する場合は、越谷市の都市整備部建築住宅課へ事前相談が必要です。
※参照元:越谷市「空き家の改修・除却費用の一部を補助します!」
関連記事:空き家の解体に補助金が使える?その理由と条件について解説
その②空き家の解体に関する補助金
埼玉県深谷市では、「深谷市危険空家等除却補助金」として空き家の除却(解体)にかかる工事費用の一部を補助しています。(※)
【深谷市危険空家等除却補助金】
申請期間 | 令和6年7月1日〜令和6年11月30日(予算に達し次第締め切り) |
対象者 | 次のすべてを満たす方
|
助成額 | 次の1,2のいずれか低い金額
|
備考 |
|
補助金の交付が決定してから令和7年1月31日までに工事を完了しなければなりません。
※参照元:深谷市「老朽化した危険な空き家の除却(解体)を補助します!(深谷市危険空家等除却補助金)」
その③空き家の取得に関する補助金
埼玉県東松山市では、市内にある空き家を有効活用し転入者の移住を促進するため、「移住促進空き家利活用補助金交付制度」として、空き家の取得に関する補助金を交付しています。(※)
【移住促進空き家利活用補助金交付制度】
申請期間 | 事業完了後30日以内または令和7年3月14日のいずれか早い日 |
対象者 | 空き家の利用者で東松山市空き家バンクの利用申込書を提出し、市外から転入して5年以上居住する意思のある方 |
助成額 |
|
備考 | 次の方は補助を受けられません
|
本制度では、市外からの転入者が空き家を利活用できるように、購入費およびリフォーム工事費の一部を補助するものです。
詳細は東松山市の住宅建築課へお問い合わせください。
埼玉県で空き家の活用を相談できる窓口
埼玉県で空き家の活用を相談できる窓口は、市町村のまちづくり推進課や建築課などの窓口か、空き家相談の総合窓口である「空き家相談窓口」を活用しましょう。
「空き家相談窓口」は、専門的な知識と経験をもつ空き家コーディネーターが相談に対応し、専門家の紹介や費用の試算、所有者と利活用希望者とのマッチングを行っています。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
多用途に空き家を活用できる
今回は、埼玉県内の空き家の現状と活用事例、活用に使える補助金制度について紹介しました。
さいたま市を中心に、都市部では空き家を地域住民の交流の場や多用途な施設へ活用するケースが増えています。
防災にも役立つポケットパークなど、土地にも高い需要が見込まれています。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
売る・貸す・建てる・管理する・壊すといったあらゆる方法を検討できます。
土地や建物の活用を考えている方は、ぜひご相談ください。
この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。