東京23区・多摩エリアの空き家活用方法と利活用に使える制度・補助金
「空き家問題」とは、人の住まなくなった家が適切に管理されず放置されることで起こるトラブルの総称です。
持ち主の所在がわからない・活用されないまま1年以上放置されている・周辺の建物や土地に何らかの被害を及ぼすおそれがある場合には、各自治体による代執行などの措置がとられます。
この記事では、東京都における空き家の現状について紹介します。東京都で行われている空き家活用の政策も取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
東京都における空き家の現状
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によれば、東京都の総住宅数の推移は次のとおりです。(※)
都道府県 | 総住宅数 | 空き家率 |
東京都 | 767万戸(2018年)
820万戸(2023年) |
10.6%(2018年)
11.0%(2023年) |
総住宅数は2023年・2018年ともに全国でもっとも多く、5年間で50万戸以上の住宅が増えています。
空き家率は10%台にとどまっており、日本全体でみると低い割合ですが、総住宅数の11.0%ということで90.2万戸が空き家となっています。
調査で得られた総住宅数と空き家率を実数に直すと、東京が全国でもっとも空き家の多いエリアであることがわかります。
※参照元:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
関連記事:空き家の運用方法や注意点を紹介
空き家活用に関する東京都の政策
東京都では、自治体として直接補助金や助成金を提供していませんが、市区町村に対して空き家対策のための予算を割り当てています。
個人や法人に対しては、市区町村が主体となって空き家活用の取り組みや事業を推進しています。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
東京都の空き家活用手段
東京で空き家を活用する場合、次の方法が選べます。
【空き家活用法】
- リノベーションして自分で住む
- 賃貸物件にリノベーションして貸し出す
- 空き家バンクに登録する
- 売却する
それぞれの方法について確認していきましょう。
方法①リノベーションして自分で住む
リノベーションとは古くなった箇所や壊れた部分を修繕し、新しくする方法です。
完全な建て替えとは異なり、建物の基礎などをそのまま活かせるので、解体工事の必要がなく経済的です。
老朽化した住まいがリノベーションによって美しい見た目に生まれ変わると、不動産としての資産価値に良い影響を与えます。
将来的に賃貸物件として貸し出したり、土地ごと売却したりする方法を考えている方にもおすすめの方法です。
築年数が比較的新しい空き家は設備の入れ替えなどを中心に部分リノベーションにとどめることもできますが、老朽化した空き家はフルリノベーションが必要なケースも少なくありません。
耐震基準を満たしていない建物や居住者のためのバリアフリーリフォームを施す場合は費用がかかる場合もあります。
方法②賃貸物件にリノベーションして貸し出す
賃貸物件として空き家を貸し出す方法は、既存の土地や建物を活かして賃貸収入を得られる不動産投資の一種です。
空き家のまま貸し出す方法もありますが、リノベーション済みの住宅には清潔感があり、住み心地の良さから買い手や借り手がつきやすいため、間取りの変更や建材・設備を刷新するリノベーションを検討したいところです。
方法③空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、全国の市区町村がそれぞれの空き家情報を集めて物件情報を提供する制度・仕組みの名称です。
空き家バンクに物件の所在地や画像、売却・賃貸価格を登録すること
補助金以外の東京都で利用できる空き家活用支援制度
で、その物件に興味をもった人とマッチングが行えます。
東京都には住宅への高い需要があります。
事業用の物件やワーケーション・ノマドワーク・海外からの中長期旅行者が住まいを求めるケースも多いため、空き家バンクへの登録をおすすめします。
方法④売却する
空き家の状態でも、建物や土地を所有する際は固定資産税や都市計画税がかかります。
手入れをしていない空き家は固定資産税の特例が外れるリスクもあるため、早い段階で用途を決めることが大切です。
居住用の住まいや賃貸物件にする予定がなく、リノベーションもしない場合は、有償譲渡や贈与、または売却を選択することになります。
誰かに譲る可能性がなければ、土地や建物の資産価値が下がらないうちに売却を検討しましょう。
空き家の売却では、不動産会社による直接買い取りまたは仲介によって第三者に売却を行います。
直接買い取りに対応していない不動産会社もあるため、事前に確認のうえ相談してください。
建物が老朽化しており売却の見込みがなくても、土地が売却できます。
更地にしてきれいな土地の状態にすれば、買い手がつきやすくなる可能性があります。
更地にする際は建物を解体し、瓦礫を取り除く必要がありますが、自治体からの補助金を活用できるケースもあるため、不動産会社や自治体の窓口にご相談ください。
関連記事:空き家を活用するにはどうしたらいい?事例と一緒に収益化をするアイディアを紹介
東京都の空き家活用事例
ここからは、東京都が行った空き家の活用事例をみていきましょう。
事例①保育室や交流の場への活用事例
東京都大田区大森北の木造空き家を、子どもを中心に受け入れる保育室に活用した事例です。
昭和49年に増築された2階建ての空き家を平成27年に保育室として運営開始しました(現在は活動終了)。(※1)
2つめの事例は、大田区西蒲田にある木造空き家を、区民活動団体の活動拠点兼事務所として利用開始した事例です。
平成2年に建てられた木造スレート葺きの家屋について、平成28年にマッチングが成立し、地域のコミュニティ拠点として英会話サロン兼事務所に活用しました。(※2)
※1,2参照元:大田区「空き家活用事例(マッチング成立事例)」
事例②店舗✕街歩きイベントの活用事例
東京都渋谷区では、空き家を店舗として活用する開業サポートと、プロジェクトを通してできた店舗をスタッフが案内する街歩きイベントを組み合わせた「渋谷Local Street Project」を不動産会社と協働で実施しています。(※)
街歩きイベントでは、空き家の活用によって変化した地域の魅力や見どころを発信し、出店希望者同士の交流や地域の人との交流も行われています。
※参照元:渋谷区「渋谷Local Street Project」
事例③一人親向けシェアハウスの活用事例
東京都豊島区では、区内の空き家率が23区でもっとも高いことから、空き家の利活用が課題となっていました。
そこで、一人親の居住支援を行うための試みとして、2023年に第1号の事例となる一人親向けシェアハウスが完成しました。(※)
このシェアハウスはリフォームを施して売り出されていた物件で、国の「住宅セーフティネット制度」の「セーフティネット専用住宅」に登録されているため、通常の賃料よりも低額で入居できる点がメリットです。
※参照元:豊島区「「ひとり親向けシェアハウス」を官民協働で実現します~「空き家利活用」と「ひとり親の居住支援」の同時解決を実現!~」
東京都で空き家活用する際に押さえるべきポイント
東京都で空き家を活用する際に押さえたいポイントは、不動産需要が高いエリアと低いエリアで異なります。エリアごとに押さえるべきポイントをみていきましょう。
ポイント①不動産需要が高いエリアの場合
都心部のように不動産需要が高いエリアでは、物件の買い手や借り手、土地だけがほしい人などさまざまな需要が見込めます。
高い不動産需要が見込めるエリアでは、建物を解体して土地を売却しても一定の利益が期待できます。
利便性の高い中心部のエリアほど住宅への需要が高く、空き家のままでも資産価値がなかなか下がらない点がメリットといえるでしょう。
建物と土地に需要があれば、空き家のままで貸し出しや売却ができます。
ただし、空き家が老朽化しており売却が難しい場合は、リノベーションやリフォームを施してから売りに出す必要があります。
関連記事:空き家となった実家を解体するのにかかる費用と注意したいポイント
ポイント②不動産需要が比較的低いエリアの場合
不動産需要があまり高くない郊外などのエリアでは、都内の中心部ほどマッチングがうまく進まない可能性を考えておく必要があります。
リノベーション済みのきれいな住宅でも、立地によっては買い手や借り手がすぐにつかない可能性があるのです。
空き家の方向性を決めるときには、空き家活用サービスや不動産会社のサポートを受けて売却を進めるといった方法を検討してみてください。
空き家活用サービスでは、持ち主が住まなくなった空き家をリノベーション・リフォームして、使える状態にしてから貸し出すことができます。
東京都で利用できる空き家活用関連の補助金制度
東京都は、区市町村に対して空き家活用のための事業を支援しています。(※)
【空き家活用の事業】
- 空き家利活用等区市町村支援事業(基本型・企画提案型)
- 先駆的空き家対策東京モデル支援事業【チャレンジ型】
- エリアリノベーション推進支援事業
空き家利活用等区市町村支援事業(基本型・企画提案型)はそれぞれの区市町村が実施する空き家の実態調査、対策計画の策定や改修工事、管理不全空き家等への対応といったさまざまな取り組みを支援する事業です。
先駆的空き家対策東京モデル支援事業ではSNSを活用した空き家の可視化など、先進的かつ高度なノウハウをともなう空き家対策事業をサポートしています。
エリアリノベーション推進支援事業は、区市町村ごとのまちづくりの方向性を踏まえて、特定のエリアで空き家を活用するための「まちづくりプロデューサー」の業務や事業を支援するものです。
上記の他にも、民間事業者への支援や区市町村ごとの支援制度が提供されています。
関連記事:空き家は固定資産税が無料?課税の有無と検討したい固定資産税対策
補助金以外の東京都で利用できる空き家活用支援制度
東京都内で利用できる空き家活用のための支援制度には、大田区の「空き家等地域貢献活用事業」や青梅市の「青梅市空き家バンク」が挙げられます。
ここからは、2つの支援制度をチェックしていきましょう。
関連記事:日本国内の空き家の現状と増加している原因・問題点や活用方法を解説
その①大田区「空き家等地域貢献活用事業」
東京都大田区の「空き家等地域貢献活用事業」は、区内にあり空き家となっている一軒家・共同住宅について、空き家の所有者・管理者が利用希望者と合意を形成できるようにサポートするものです。(※)
地域交流や防災、国際交流(観光)や福祉といった公益目的に活用するための取り組みを進めています。
※参照元:大田区「空き家等地域貢献活用事業」
その②青梅市「青梅市空き家バンク」
東京都青梅市の「青梅市空き家バンク」は、空き家の有効活用と青梅市への移住・定住を促進するために、空き家の情報をまとめてホームページで公開し、利用希望者に情報を提供する制度です。(※)
ホームページ上で公開しない非公開物件も扱っており、青梅市空き家バンクに登録された新しい物件を登録者に提供するサービスも実施しています。
※参照元:青梅市「青梅市空き家バンク」
東京都の空き家には需要が多い
今回は、東京都の空き家の状況と活用方法、利用できる補助金制度について紹介しました。
東京は23区と23区外に分かれており、立地条件に恵まれたエリアほど住宅や土地に需要が期待できます。
郊外の市区町村も空き家の解消に向けて事業や取り組みを進めているため、支援制度や補助金を活用して、空き家の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
空き家を利活用するためのプランを豊富に揃えています。売る・貸す・建てる・管理する・壊すといったあらゆる方法を検討できます。
土地や建物の活用を考えている方は、ぜひご相談ください。
この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。