空き家を売らない9つの理由を詳しく解説
空き家が増加している背景には、人口減少や家族形態の変化が影響しています。
本記事では、空き家を売らない9つの理由を取り上げ、詳しく解説します。
また、空き家を放置することによるリスクと、対策方法についても紹介。
リフォームや空き家バンクの活用、相続放棄、国・自治体への寄付など、さまざまな解決策を提案しています。
空き家の問題に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
空き家が増加しているのはなぜ?
日本で空き家が増加しているのは、以下2つの理由が挙げられます。
具体的に解説します。
理由①人口減少に伴い住宅が余っている
日本では、少子化が深刻な問題となり、人口が減少し続けています。
人口減少により、かつて人口増加を前提に建設された多くの住宅が、現在は空き家となっているのです。
特に、昭和時代に建てられた住宅は現在の生活スタイルに合わない場合が多く、入居希望者が少ない傾向に。
住宅の新築が続く中、築年数の浅い物件が入居者に選ばれるため、古い物件はさらに不利な立場に置かれています。
また、地域ごとの人口動態も影響しているでしょう。
都市部では人口密度が高く競争が激しいため、新築物件でさえ入居者を見つけるのが難しいです。
一方で、過疎地域では人口そのものが少ないため、住宅需要が著しく低くなっています。
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理由②家族形態が変化している
近年、家族形態の変化も空き家の増加に大きく影響しています。
従来の大家族から核家族、そして単身世帯へと家族構成が変わる中で、住宅に対するニーズも大きく変化しています。
若年層の単身世帯や高齢者の一人暮らしが増加しているため、大きな住宅よりもコンパクトで利便性の高い住居が求められるようになりました。
また、高齢化の進行に伴い、多くの高齢者が老人ホームや介護施設に入所するケースが増えています。
この結果、所有していた住宅が空き家となるケースが多く見られるのです。
高齢者が自宅で生活できなくなると、その家は次第に放置され、メンテナンスされないまま劣化していきます。
空き家を売らない理由
空き家を売らない理由はさまざまです。
所有者に売る気がない、売りたくても売れないケースなど、多くの理由が挙げられます。
【空き家を売らない理由】
- 物置として使っている
- 家に思い入れがある
- 家財を片付ける時間がない
- 解体費用が必要になる
- 相続トラブルが発生する
- 空き家が遠方にある
- 老朽化している
- 売却価格が安い
- 売れないと思い諦めている
一つずつ見ていきましょう。
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理由①物置として使っている
多くの空き家所有者は、空き家をトランクルームのように利用しています。
季節ごとの装飾品や使用頻度の低い家具、家族の遺品など、普段使わないけれども捨てるには惜しいものの保管場所として、空き家が使われているのです。
空き家を持つことで便利な収納スペースが確保できるため、売却をためらう理由となります。
さらに、相続した家に残っている物品の処理が面倒で、そのまま放置しているケースも多いようです。
理由②家に思い入れがある
空き家には、所有者にとって感情的な価値があるため、売却の障害となっています。
家族の思い出や親の記憶が詰まった家を手放すのは、心理的に難しいと感じる人が多いのです。
代々続く家で子ども時代の思い出が強く残る家である場合、売却を躊躇する理由となります。
家族間で感情的なつながりが深い場合、物件に対する意見の違いから、売却の決断に至らないことも少なくありません。
また、感情的な価値だけでなく、家族の歴史や伝統を守りたいという思いが強い場合、空き家を売らずに保持する選択をするケースもあります。
理由③家財を片付ける時間がない
空き家を売りたいと思っていても、家財道具や荷物の片付けが大きな障壁となることも。
親が使っていた家具や遺品の処分に対する抵抗感が強く、他人に任せることに抵抗を感じる人も多いでしょう。
また、遠方に住んでいたり、仕事が忙しかったりすると、まとまった時間を取って片付けるのが難しいのも現実。
こうした理由から空き家の片付けが進まず、そのまま放置されてしまうのです。
片付け専門の業者に依頼する方法もありますが、心理的な負担からそれを選ばない人も少なくありません。
さらに、片付けにかかる費用や手間を考えると、空き家の処理を先延ばしにするケースも多いのです。
理由④解体費用が必要になる
空き家を売却する際は、解体費用が大きな障壁となります。
建物を解体するには、物件の規模や構造、立地条件に応じて相当な費用が発生するためです。
一般的に、解体費用は数十万円から数百万円に及び、大きな物件や複雑な構造を持つ建物では、費用はさらに高額になるでしょう。
多くの所有者にとって、高額な解体費用は大きな経済的負担となります。
経済的な余裕がない場合、費用を捻出できないため、結果として空き家をそのまま放置する選択をせざるを得なくなるのです。
解体費用を負担すれば、土地を再利用したり売却したりできますが、費用の高さが決断を妨げる大きな要因となっています。
理由⑤相続トラブルが発生する
空き家が相続の対象となった場合、相続人間での意見の対立や、手続きの煩雑さが売却の障壁となるケースもあります。
相続によって物件が複数の相続人に分割されると、各相続人の意見が一致しないために、売却の意思決定が難しくなります。
また、相続手続きそのものが複雑で時間がかかるため、所有権が確定するまでに長期間を要するケースも。
さらに、老朽化した物件では相続を望まない相続人も多く、相続したくない理由で物件が放置されるのも少なくありません。
物件の相続には法律や税務の手続きも絡むため、複雑で手間がかかるのも大きな問題です。
理由⑥空き家が遠方にある
空き家が所有者の住む場所から遠方にある場合、管理や売却は一層困難になります。
遠方にある空き家は、定期的なメンテナンスや管理が難しく、所有者が現地に頻繁に足を運べないため、物件の状態が悪化しやすいのです。
例えば、庭の草刈りや建物の修繕など、定期的な管理が必要な作業が遠方だとできず、放置されるケースが多くなるでしょう。
また、遠方にある物件は、現地の不動産市場に関する情報収集や売却活動が難しく、物件の売却が遅れる要因となります。
さらに、遠方にあるために実際に物件を見学できず、買い手が見つかりにくい問題も深刻でしょう。
理由⑦老朽化している
多くの空き家は築年数が経過しており、老朽化が進んでいるため、売りたくても売れない状況にあります。
老朽化した建物は、一般の買い手にとって魅力的ではなく、購入後の修繕や改修に多大な費用がかかるため敬遠されがち。
また、仲介業者もこのような物件を売却するのは難しく、積極的に取り扱わないケースが多いです。
さらに、老朽化した空き家は倒壊のリスクもあり、所有者としては安全対策に費用がかかるのも問題となります。
このような状況下で、売却の決断を下すのは非常に難しく、結果として空き家が放置されてしまうのです。
理由⑧売却価格が安い
空き家の売却をためらう理由の一つに、売却価格が期待よりも低くなる場合があります。
立地条件が良くても老朽化した建物にはほとんど価値がつかず、売れる場合でも土地の価格のみとなるのです。
長年住み慣れた家を低価格で手放すことに、抵抗を感じる所有者も多くいます。
親が多額の費用をかけてリフォームした家であっても、市場価格にはほとんど反映されないため、売却を損と感じてしまいます。
このような経済的な理由から、空き家を売却することに踏み切れない所有者が多いのです。
理由⑨売れないと思い諦めている
市場に対する誤解や知識不足から、空き家が売れないと思い込んで諦めている所有者もいます。
不動産市場の動向を十分に理解せず、効果的な販売方法を知らないために、空き家が売れる可能性を見逃しているケースも多いのです。
実際は、特に都市部やその近郊で住宅需要が依然として高く、リモートワークの普及に伴い、都市から離れた地域でも住宅に対する関心が高まっています。
リノベーションや投資物件として再利用すれば、空き家を魅力的な物件に変えられるかもしれません。
しかし、上記のような可能性を知らずに、売れないと諦めてしまう場合が多いです。
このような誤解や知識不足が、空き家を売らない理由の一つとなっています。
空き家を売らないで放置すると起こり得るリスク
空き家をそのまま放置するのは、さまざまなリスクが伴います。
【空き家放置のリスク】
- 買い手が見つかりにくくなる
- 固定資産税が上がる
- 倒壊の恐れがある
これらのリスクは、所有者にとって経済的負担や法的責任を引き起こす可能性も考えられます。
以下で、具体的なリスクについて説明しましょう。
リスク①買い手が見つかりにくくなる
空き家が長期間放置されると、物件の劣化や周辺環境の変化により、売却が困難になります。
建物の老朽化が進むことで、屋根の破損や壁のひび割れ、雨漏りなどの問題が発生しやすくなります。
また、給排水システムの劣化による水漏れや詰まりのリスクも高まるでしょう。
これらの物理的な問題に加え、空き家の周辺地域が過疎化したり、商業施設が撤退したりすると、地域全体の価値が低下。
さらに買い手を見つけにくくなります。
市場での競争力が低下し、買い手が見つかるまでの期間が長引くと、売却の機会を逃してしまうでしょう。
このため、早めに空き家を処置すべきなのです。
リスク②固定資産税が上がる
空き家を放置することで、固定資産税の負担が増加してしまいます。
固定資産税は土地や建物の評価額に基づいて計算され、税率は地域や物件の状況によって異なりますが、標準税率は1.4%です。
また、市街化区域の土地や建物には都市計画税がかかり、通常は0.3%の税率が適用されます。
空き家が長期間放置されると、特定空き家として認定され、通常より高い税率で課税されてしまうのです。
税率の引き上げは、所有者にとって大きな経済的負担となるでしょう。
固定資産税が増加すると、空き家を維持するための費用が膨らみ、経済的に困窮する可能性も考えられます。
リスク③倒壊の恐れがある
放置された空き家は、建物の老朽化が進行し、倒壊のリスクが高まります。
建物が倒壊すると、隣接する家屋や通行人に危害を及ぼす可能性が大きいでしょう。
地震や台風などの自然災害が発生した場合、老朽化した建物は非常に脆弱であり、倒壊する可能性が高くなります。
また、放置された空き家は害虫の発生源となり、衛生的な問題も。
近隣住民に迷惑をかけるだけでなく、所有者自身が法的責任を問われる場合もあるのです。
倒壊のリスクを避けるためにも、空き家の定期的な点検とメンテナンスは必須と言えます。
しかし、遠方に住んでいる場合や管理が難しい場合は、専門の管理会社に依頼しなければいけません。
空き家が売れない場合の対策方法
空き家を売却するのが難しい場合でも、以下のような適切な対策を講じれば、問題を解決できるかもしれません。
【空き家対策】
- リフォームして活用する
- 空き家バンクに登録する
- 相続放棄する
- 国・自治体に寄付する
ここでは、空き家を有効活用するための、具体的な対策方法について詳しく説明します。
対策①リフォームして活用する
空き家が売れない場合、リフォームして新たに活用する方法があります。
老朽化が進んでいない場合や建物の構造がしっかりしている場合、リフォームによって物件の価値を向上させられるでしょう。
例えば、内装や設備を一新し、戸建て住宅として賃貸に出すことで家賃収入を得られます。
立地条件が良い場合は、リフォーム後に民泊として運営するのも選択肢の一つ。
また、太陽光発電を導入することでエコなエネルギーを活用し、経済的なメリットを享受する方法も挙げられます。
リフォームには初期費用がかかりますが、長期的に安定した収入源となるかもしれません。
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
対策②空き家バンクに登録する
空き家バンクに登録するのも、有効な対策の一つ。
空き家バンクは、自治体が運営するウェブ上のマッチングサービスで、空き家の所有者と購入希望者を結びつける役割を果たします。
この制度に参加する自治体が増加しており、多くの空き家が登録されています。
通常の不動産サイトとは異なり、空き家を探している人々が利用するため、購入者が見つかる可能性が高いのです。
ただし、空き家バンクに登録するだけでは売却が完了するわけではなく、交渉や契約手続きは自分でしなければいけません。
トラブルが発生した場合も自治体は関与しないため、自身で解決する必要があります。
対策③相続放棄する
空き家が相続によって発生した場合、相続放棄を選択するのも一つの方法です。
相続放棄とは、相続人が相続の権利を放棄することで、相続する義務も免除されます。
相続放棄するには、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きしなければいけません。
相続放棄することで、老朽化した空き家の管理や、維持費の負担から解放されます。
ただし、相続放棄すると他の財産も放棄することになるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
また、相続放棄後も一定期間は管理責任が残るため、その点にも注意が必要です。
対策④国・自治体に寄付する
空き家を国や自治体に寄付するのも、売却が難しい場合の対策として考えられます。
2023年4月に施行された相続土地国庫帰属法により、相続した不要な土地を国に返還するのが可能になりました。
しかし、この制度を利用するには、厳しい要件を満たす必要があります。
例えば、建物がある土地や土壌汚染された土地などは申請が却下されます。
自治体への寄付についても同様に厳しい条件があり、行政の中立性や将来の管理費用などが考慮されます。
土地の寄付が受け付けられるケースは限られているため、現実的には少ないと言えるでしょう。
以上の点を踏まえ、空き家の寄付を検討する際は、事前に条件をよく確認しましょう。
※参照元:法務省
まずは空き家に関する理解を深めよう
いかがでしたでしょうか?
空き家を売らない9つの理由と、それに伴うリスクおよび対策についておわかりいただけたかと思います。
また、空き家を放置することのリスクやリフォーム、空き家バンクの活用など、具体的な解決策もご紹介しました。
空き家を売りたい方は、本記事を参考にしながら売却活動してみましょう。
空き家の活用をお考えなら、「あき家ZERO」にお任せください。
「空き家が売れなくて困っている」「空き家の活用方法がわからない」とお悩みの方は、ぜひお問い合わせください。
お客様の現状をお聞きし、適切な解決策をご提案させていただきます。
この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。