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空き家の行政代執行が行われる際のリスク・費用と流れについて解説
COLUMN

空き家の行政代執行が行われる際のリスク・費用と流れについて解説

公開日 2024.08.20 更新日 2024.11.15

使っていない空き家を保有している方に向けて、空き家の行政代執行について解説します。

「空き家特別措置法」が制定されてから、「自分が保有している空き家はどうなるのか?」と不安に思われる方が増えたはずです。
実際にそのまま放置しておくと、行政代執行によって強制的に解体され、高額な費用が請求されることもあります。

そこで今回の記事では、空き家の行政代執行について解説します。
参考にしていただければ、行政代執行の概要や避けるための対策法についてご理解いただけるはずです。

 

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空き家特別措置法とは

「空き家特別措置法」とは、2015年に施行された空き家を対策するための法律です。
2015年以前から、少子高齢化や相続によって全国各地で空き家が増加していることが問題視されていました。
空き家の軒数は20年間で約1.5倍にも増えたとのデータもあります[1]。
空き家が増えると害虫が発生したり、景観が損なわれたりする可能性が高くなります。地震や火災による延焼被害を拡大する要因となるとも限りません。
そこで施行されたのが「空き家特別措置法」です。
空き家が及ぼす悪影響を未然に防ぐため、強制的な取り壊しを命じたり、必要な措置を取ったりなどを講じるために制定されました。

空き家における行政代執行

空き家特別措置法では、空き家において「行政代執行」を行えます。
行政代執行とは、行政が空き家を適正管理するための権限のことです。
一般的に不動産は、所有者が管理をしなければならず、行政とは言え勝手に管理はできません。
しかしもし空き家が「特定空き家」に指定されたなら、所有者の許可を得なくても行政が適切な管理を行えるようになります。
特定空き家として指定されるのは、倒壊の危険性がある、不衛生である、近隣の生活環境を妨げているなどの悪影響が懸念される空き家です[1]。
行政代執行では樹木の伐採や建物の修繕だけでなく、建物の解体が行われることもあります。

 

[1]参照:環境省:(PDF)空き家対策の推進に関する特別措置法の概要

 

関連記事:空き家の運用方法や注意点を紹介

 

行政代執行の対象になる空き家

行政代執行の対象となる空き家は、具体的に次のような条件に該当する建物です。

【行政代執行の対象となる空き家[1]】

  • そのままにしておくと倒壊する危険性がある
  • 害虫の発生など不衛生な状況になる可能性が高い
  • 周辺環境を乱している
  • 地域の景観を乱している

トータルで考えると、「そのままにしておいては危険である」と判断された空き家が対象となります。

たとえば軽い地震などでも倒壊しそうな空き家や、害虫や害獣が住み着いている空き家。そして周辺環境を見出していると考えられる場合も、行政代執行の対象となります。
条件に当てはまると、行政代執行が行われることもあるでしょう。

 

関連記事:いらない空き家を放置するリスクとは?処分方法と売却時の注意点

 

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行政代執行のリスク

行政代執行はただ単に行政が行うだけのものではありません。
所有者の許可を得ずに行われることですが、所有者にとってのリスクもあります。
空き家の行政代執行が行われると、所有者の方は次のようなリスクを背負います。

リスク①:解体費用を請求される

まずは解体費用の請求です。
空き家の行政代執行では強制的な建物の解体が行われることがあります。
しかし解体費用は無料ではありません。
解体にかかった費用は建物所有者に請求され、場合によっては1,000万円ほどの金額になることもあります
また行政による解体では、費用を重視した解体が行われるわけではないでしょう。
そのためご自身で解体業者を探して依頼するよりも、高額な請求がくる可能性が高くなります。
建物の解体費用は決して安くありません。
特定空き家とされたことを放置しておくと、突然高額な解体費用請求が届くことも考えられます。

 

関連記事:空き家の解体に補助金が使える?その理由と条件について解説

リスク②:財産が差し押さえられる

ふたつめのリスクは、財産が差し押さえられることです。
財産の差し押さえは、前項で解説した解体費用を支払えなかった場合に起こりえます
費用を支払うべき時期を過ぎて胎嚢をすると、2~3週間後に財産の差し押さえがなされることもあるでしょう。
行政によって、次のようなものが差し押さえられてしまいます。

【差し押さえ対象】

  • 現金
  • 貯金
  • 株式
  • 自動車
  • 貴金属
  • 給与の一部

以上のように、借金を滞納したときと同じような差し押さえが行われます。
所有している空き家で行政代執行が行われると、所有者の生活が制限されてしまうことも考えられるでしょう。

リスク③:個人情報が公開される

最後に解説するのは、個人情報公開のリスクについてです。
行政代執行はいわば、法律違反を犯した後の対処と言えます。
そのため、ニュースで報道されてしまうリスクはゼロとは言えません。

特にインターネットでは、詳細な個人情報がさらされる危険性が高まります
行政代執行のあった空き家の所有者は個人情報が公開され、社会的信用を失ったり、近隣住民から厳しい目で見られたりすることもあるでしょう。

行政代執行が行われると、解体費用の請求や財産の差し押さえだけに加え、生活自体が危うくなってしまう可能性もあります。

行政代執行が行われた空き家の事例

それでは行政代執行が行われた空き家の事例についてご紹介します。
空き家等対策特別措置法によって行政代執行が行われた空き家は、次のようにすでにいくつも存在します。

事例一覧

 

対象空き家 請求費用
北海道室蘭市 一戸建て解体 約800万円
北海道旭川市 一戸建て解体 約410万円
新潟県十日町市 一戸建て解体 約270万円
長野県高森町 屋根・外壁の解体 約30万円
千葉県柏市 建物解体 約1,040万円
東京都葛飾区 一戸建て解体 約180万円
東京都品川区 ゴミ撤去 約200万円
東京都品川区 一戸建て解体 約423万円
神奈川県横須賀市 一戸建て解体 約150万円
奈良県桜井市 一戸建て解体 約250万円
兵庫県明石市 一戸建て解体 約100万円
兵庫県神戸市 一戸建て解体 約160万円
広島県広島市 一戸建て解体 約520万円
山口県宇部市 一戸建て解体 約265万円
大分県別府市 アパート解体 約510万円

 

 

関連記事:空き家を活用するにはどうしたらいい?事例と一緒に収益化をするアイディアを紹介

全国各地で行われている空き家行政代執行

一覧でわかるように、行政代執行は全国各地で行われています。
一戸建て解体にかかる費用は、およそ100~500万円ほど。中にはゴミの撤去だけで約200万円もの費用を請求された方もいました。
空き家の行政代執行は、近隣住民からの苦情によって行われるケースが多いものです。
もし空き家をそのまま放置するのであれば、苦情があがらないようにしっかりとした管理をすることが求められるでしょう。

 

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空き家が行政代執行される際の流れ

空き家の所有者にとって恐怖となる行政代執行。
もし特定空き家と指定されそうな空き家を所有しているなら、行政代執行の流れについてあらかじめ知っておきたいものです。
行政代執行は突然行われるものではありません。
次のようなステップを踏んだうえで行われるものです。
通告があった際に気づけるように、行政代執行の流れについて知っておきましょう。

 

関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?

STEP1:特定空き家として指定

まずは行政から「特定空き家」としての指定を受けます。特定空き家として指定されるのは、次のような建物です。

「特定空き家等」とは、

  1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

にある空き家等をいう。(法2条2項)

出典:環境省:(PDF)空家等対策の推進に関する特別措置法の概要

主に「環境を保つためには危険な建物」が特定空き家に指定されます
倒壊する恐れがあったり、害虫が住み着いていたり、犯罪の温床になりそうであったり、見た目が美しくなかったり。
以上のような建物が、行政から「特定空き家」として指定を受けます。

STEP2:助言・指導

特定空き家に指定されると、行政から保有者に対して助言や指導が行われます。
空き家の危険性や衛生的問題について説明され、説明に従った対処が求められます
たとえば倒壊の危険性があるなら、解体や建物の修繕が求められるでしょう。
衛生的な問題があるなら除草や樹木の伐採、ゴミの撤去などを行う必要があります。
助言・指導の内容に沿った対策を練ってください。

STEP3:勧告

助言や指導を受けても改善されない場合、まずは勧告が行われます。
助言・指導よりも強い指示であり、「改善してください」との要請です。
勧告の段階にくると、固定資産税の住宅用特例も受けられなくなります。
住宅用特例とは、土地に人が住むための建物がたてられている場合、固定資産税が軽減される措置のことです。
空き家にも適用されます。
しかし特定空き家に指定され、勧告を受けた場合は、固定資産税が通常の税率で課されるようになる仕組みです。

中には固定資産税節税のために、空き家をそのままにしておく人がいます。
しかし勧告を受けると節税効果とのメリットもなくなってしまうのです。

STEP4:命令

行政からの勧告を無視すると、次は「命令」へと移行します。
勧告は法的効力がありませんでしたが、命令にはあり、違反した場合は最大50万円の過料に課せられてしまいます
建物を所有している人は、命令に従わなければ罰金が課せられることに。命令段階となると猶予期間が提示されるため、期間内に命令に従うようにしましょう。

STEP5:戒告

命令に従わなかった際に出されるのが「戒告」です。
戒告は行政から文書で送られてきます。
指定期間内に実施されなかった場合、行政代執行が行われる可能性があるため内容を必ず確認してください。
戒告は行政代執行が行われる直前に行われるものです。
そして履行期限も設定されます。
履行期限内に適切な対応がなされれば、空き家への行政代執行も行われません。

しかしもし緊急性が高ければ、戒告の通知が行われないまま行政代執行が行われることもあります。
そのため命令の段階で、適切な対処を行わなければなりません。
戒告は最終段階であると考えたほうが良いでしょう。

STEP6:代執行令書による通知

戒告の時点で空き家への対応がなされない場合、行政代執行を行う旨が期待された代執行令書が送付されます。
行政代執行を行うとの通知です。
通知の中には、必要となる費用が記載されているはずなので、確認しておきましょう
ただし緊急性が高い場合には、前項で解説した戒告の場合のように、通知が行われずに行政代執行が行われることもあります。
したがって命令の段階での指示を放置した場合、通知なしに行われるリスクがあることになるでしょう。
代執行令書まで待つのではなく、命令の段階での対応が望ましいと言えます。

STEP7:行政代執行

代執行令書の通知を受け取った後は、実際に空き家への行政代執行が行われます。
行政代執行の内容は空き家の状態によって異なるでしょう。
しかし一般的に、所有者自身で行った場合よりも費用が高くなる傾向があります
行政では費用を気にして業者を選ぶことなく、作業を依頼するためです。
もし代執行指令書を受け取ったなら、所有している空き家に対して何らかの措置が行われると考えてください。

行政代執行の費用について

行政代執行の作業にてかかった費用は、すべてが所有者に対して請求されます
どのくらいの金額がかかったかにかかわらず、全額が所有者負担です。
さらに請求は納付期限もあり、支払いができない場合は財産の差し押さえへと発展することも少なくありません。
もし行政代執行が行われそうであれば、ご自身で業者に依頼するほうが費用を安く抑えられるでしょう。
また財産差し押さえのリスクなくないため、通知がくるまでに空き家の適正管理をしてください。

STEP8:費用の請求

空き家への行政代執行が行われたら、最終的に費用の請求が行われます。
前述のとおり、行政代執行の費用は、すべて空き家を所有している人の負担です。
そのため解体であれば解体にかかったすべての費用が、適正処置であればその分の費用全額が行政より請求されます。
支払えなければ財産や給与の差し押さえ措置が行われることもあるため、必ず期限内に支払うようにしましょう。

空き家が行政代執行の対象にならないためにできる対策

空き家を所有している方にとって、最も不安なことは行政代執行の対象となることでしょう。
しかし行政代執行の対象にならないために、空き家に対してできる対策があることも事実です。
それではどのような対策を行えば行政代執行の対象とならないのか、そのためのポイントについて解説していきます。

 

関連記事:空き家はどうするべき?方法やお得になる制度を紹介

対策①:指摘された箇所の修繕や改善を図る

まず最も大切なことは、行政から指摘された箇所の修繕や改善をはかることです。
行政代執行は突然行われるわけではありません。
助言や指導、勧告、命令などを経て、それでも改善されない空き家に対して行われるものです。
そのため指摘を受けた箇所の修繕や改善をはかれば、行政代執行が行われることはありません。
行政代執行は最終手段です。
指摘を受けたら無視をせず、指摘されたとおりに改善するようにしてください。

対策②:いつまでに修繕や撤去をするのかを届け出る

行政に指摘されたら修繕・撤去を行う時期を届け出るようにしましょう。
助言・指導・勧告のすべてにおいて同じです。
もしすぐに指摘箇所を改善できないようであれば、いつまでに改善できるのかを申告すれば行政代執行を避けられるかもしれません。
指摘箇所が合ったとしても、状況によってすぐに改善できないこともあるでしょう。
しかしそのまま放置していれば、行政代執行の対象となるとも限りません。
修繕・撤去を行える日程を行政に連絡しておけば、届出た期間まで待ってもらえる可能性が高まります

対策③:助成金制度やローンを利用して解体する

助成金精度やローンを利用して解体することも対策のひとつとなるでしょう。
建物の解体費用は決して安くありません。
行政代執行にて解体が行われれば、1,000万円を超えることもあります。
そこで利用したいのが、助成金精度やローンです。
各自治体では、空き家を解体するために利用できる助成金制度を準備しています。
金融機関によっては解体ローンが用意されていることもあるでしょう。
上記のような金銭的支援を受ければ、高額な費用がかかる解体作業への負担も少なくなるはずです。
お住まいの自治体に利用できる助成金制度やローンがないか、対策の前にかならず確認するようにしてください。

空き家を所有しているなら行政代執行は避けるべき

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いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、空き家の行政代執行についてご理解いただけたと思います。

行政代執行が行われると高額な費用を請求される可能性がありますが、突然行われるわけではありません。
執行前の段階があるため、実施される前に対策を行えば避けられます。

 

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この記事の監修者

寺澤 正博

サワ建工株式会社 代表取締役

一級建築施工管理技士

二級建築士

高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。

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