空き家は固定資産税が無料?課税の有無と検討したい固定資産税対策
「空き家は固定資産税が無料って本当?」「放置しておくデメリットはある?」などの疑問を抱いていませんか。
詳細がわからず不安を抱えている方は多いでしょう。
結論を最初に示すと、空き家であっても固定資産税はかかります。
また、管理を怠ると固定資産税が高くなることも考えられます。
ここでは、空き家と固定資産税の関係、固定資産税が高くなるケースを解説するとともに所有者ができる固定資産税対策などを紹介しています。
空き家の管理でお困りの方は参考にしてください。
目次
空き家の固定資産税は無料?
固定資産税は、毎年1月1日時点における固定資産(土地・建物など)の所有者に対して、その資産価値に応じた税額を市町村(東京都23区は都が課税)が課税する税金です。
以上の説明からわかるとおり、空き家であっても毎年1月1日時点で所有していれば、固定資産税を課税されます。
ここでいう所有者は、固定資産課税台帳に所有者として登録されている方です。
具体的に、どれくらいの税金がかかるのでしょうか。
その①固定資産税の計算方法
固定資産税の計算方法は以下のとおりです。
税額=課税標準額(固定資産評価額)×1.4%
1.4%は標準課税です。
具体的な税率は、市町村により異なることがあります。
また、課税標準額、税額には特例措置が設けられています。
空き家と関係が深い課税標準額の特例措置は次のとおりです。
特例措置 | 概要 |
住宅用地特例 | 200㎡以下の住宅用地(小規模住宅用地)は課税標準額を6分の1に軽減。200㎡を超える住宅用地(一般住宅用地)は、超過部分の課税標準額を3分の1に軽減。 |
上記特例と適用すると、固定資産税の計算方法は次のようになります。
税額(200㎡以下の部分)=(課税標準額×1/6)×1.4%
税額(200㎡超の部分)=(課税標準額×1/3)×1.4%
出典:総務省「固定資産税」
出典:ダイシン都市開発「空き家の固定資産税優遇措置はいくら減税される?」
空き家を放置していると固定資産税が上がる可能性もある
空き家の放置は、さまざまなトラブルを引き起こします。
そのひとつが固定資産税への影響です。
具体的に、どのような影響があるのでしょうか。
関連記事:空き家を活用するにはどうしたらいい?事例と一緒に収益化をするアイディアを紹介
影響①特定空き家
空き家を放置していると、空き家等対策措置法に基づき「特定空き家等」に指定されることがあります。
特定空き家等は、以下の状態にあると認められる空き家などです。
【特定空き家】
- 保安上の危険になる恐れがある
- 衛生上、著しく有害になる恐れがある
- 景観を著しく損ねている
- 周辺の生活環境の保全を図るため放置が不適切
市町村長から特定空き家等に該当すると認められると助言、指導が行われます。
改善が認められない場合は、勧告、命令、行政代執行へと進みます。
勧告を受けると、住宅用地特例の対象から除外されるため注意が必要です。
つまり、課税標準額の軽減(課税標準額を1/6または1/3に軽減)を受けられなくなります。
出典:e-Gov法令検索「平成二十六年法律第百二十七号空き家等対策の推進に関する特別措置法」
影響②管理不全空き家
増え続ける空き家に対処するため、令和5年12月に改正空き家等対策措置法が施行されました。
本改正により新たに設けられたのが「管理不全空き家等」です。
管理不全空き家等は、そのまま放置すると特定空き家等になる恐れがある住宅を指します。
具体的には、壁や窓が破損しているなど、管理が行き届いていない住宅といえるでしょう。
市町村長は、管理不全空き家等に対して特定空き家等になることを防ぐ指導を行えます。
改善が認められない場合は、勧告を行えます。
勧告を受けると、住宅用地特例の対象から除外されるため注意が必要です。
つまり、特定空き家等の場合と同じく、課税標準額の軽減を受けられなくなってしまいます。
出典:e-Gov法令検索「平成二十六年法律第百二十七号空き家等対策の推進に関する特別措置法」
出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
特定空き家に指定される流れ
特定空き家等の指定は次の流れで行われます。
【指定の流れ】
- 空き家の把握・調査
- 所有者などへの情報提供、その他必要な援助
- 特定空き家等の指定
- 特定空き家等に対する助言・指導
- 特定空き家等に対する勧告
- 特定空き家等に対する命令
- 特定空き家等に対する行政代執行
前述の通り、勧告を受けると住宅用地特例の対象から除外されます。
また、命令に違反すると50万円以下の過料に処される恐れがあります。
さまざまな不利益を被るため、空き家を適切に管理することが大切です。
出典:e-Gov法令検索「平成二十六年法律第百二十七号空き家等対策の推進に関する特別措置法」
関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?
空き家の固定資産税対策
空き家の固定資産税対策として、以下の4つがあげられます。
対策①売却する
固定資産税は毎年1月1日時点における固定資産の所有者に対して課される税金です。
したがって、空き家を売却すると、固定資産税はかからなくなります。
年の途中で空き家を売却した場合は、残り期間分の固定資産税を売却額に上乗せして請求することが一般的です。
また、空き家を売却すると、修繕費などの維持管理費もかからなくなります。
ランニングコストを削減できる対策といえるでしょう。
対策②家を解体し、土地活用する
空き家を解体してから土地を活用する方法も考えられます。
たとえば、更地に戻して売却するなどがあげられるでしょう(売りやすくなるため)。
主なメリットは、空き家の維持管理費がかからなくなることと「特定空き家等」の指定を回避できることです。
ただし、空き家を解体すると、住宅用地特例の対象から外れるため、固定資産税額は高くなってしまいます。
当然ながら、解体費用もかかります。
事前にメリットとデメリットを評価しておくこと、解体後の活用方法を検討しておくことが大切です。
関連記事:空き家の解体費用の相場を紹介
対策③賃貸として活用する
賃貸住宅として貸し出すことも考えられます。
固定資産税はかかり続けますが、賃料を納税資金として活用できる可能性があります。
空き家を売却、解体しなくてよい点も魅力です。
募集業務、賃料の集金、入居者対応などは、管理会社へ委託できます。
ただし、すべての空き家を賃貸住宅として活用できるわけではありません。
また、大規模なリフォームが必要になることもあります。
専門家と相談しつつ、準備を進めていくことが大切といえるでしょう。
対策④空き家バンクに登録する
空き家バンクは、空き家に関する情報を購入希望者や入居希望者などへ提供する仕組みです。
自治体やNPO法人、民間企業などが運営しています。
簡単に説明すると、売りたい人、貸したい人と買いたい人、借りたい人をつなぐマッチングサービスといえるでしょう。
空き家バンクを活用すると、購入希望者や入居希望者を見つけやすくなります。
ただし、具体的なサービス内容は空き家バンクで異なるため注意が必要です。
国土交通省は、全国の空き家バンクをまとめた「空き家・空き地バンク総合情報ページ」を運営しています。
興味がある方は、こちらからニーズに合っている空き家バンクを探してみてはいかがでしょうか。
固定資産税以外でかかる可能性のある税金
固定資産税以外にも、空き家に関係する税金はあります。主な税金は以下のとおりです。
その①所得税・住民税
空き家を売却して収入を得ると、譲渡所得に対して所得税と住民税が課税されます。
譲渡所得の計算式は以下のとおりです。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
取得費は、購入代金、購入時の仲介手数料などです。
取得費がわからない場合は、譲渡価格の5%を取得費とすることができます。
譲渡費用は、解体費、譲渡時の仲介手数料などです。
短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年以下)の税率は39%(所得税30%、住民税9%)、長期譲渡所得の税率は20%(所得税15%、住民税5%)です(復興特別所得税は除く)。
相続で取得した空き家を売却した場合は、3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。
出典:国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」
その②都市計画税
市街化区域内にある土地、建物の所有者(毎年1月1日時点)に対して、市町村が課税する税金です。
税額は以下の方法で算出します。
税額=課税標準額(固定資産税評価額)×税率(制限税率)
税率は、0.3%を超えない範囲で市町村が決定します。
都市計画税にも、住宅用地を対象とする特例が設けられています。
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は課税標準額が1/3、一般住宅用地(200㎡超の部分)は課税標準額が2/3に軽減されます。
出典:総務省「都市計画税」
その③相続税
空き家の相続により相続税を課されることがあります。
計算方法は以下のとおりです。
【相続税】
- 各相続人の課税価格を算出
- 相続税の総額を算出
- 各相続人の納付額を算出
2の詳細は次のとおりです。
【相続税の総額】
- 課税価格の合計から基礎控除を減じて課税遺産総額を求める
- 1を法定相続分で按分して各法定相続人の所得金額を算出
- 2に税率を乗じて相続税額を算出
- 3を合計して相続税の総額を算出
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出します。
この金額より課税価格の合計が少ない場合は非課税です。
各相続人の納付額は、相続税の総額に実際の按分割合を乗じて算出した税額から税額控除をして求めます。
その④登録免許税
登録免許税は、不動産の登記にかかる税金です。
以下の方法で計算します。
税額=課税標準額(固定資産税評価額)×税率
相続による所有権移転登記の本則税率は0.4%です。
つまり、固定資産税評価額に0.4%を乗じて税額を求めます。
ただし、相続で土地を所得した方が、登記を受ける前に亡くなった場合は、登録免許税を免除されます。
固定資産税評価額が100万円以下の場合も同様です(いずれも令和7年3月31日まで)。
出典:国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」
空き家でも固定資産税はかかる
ここでは、空き家の固定資産税について解説しました。
誰も住んでいない空き家であったとしても、所有している限り固定資産税はかかり続けます。
放置して特定空き家等、管理不全空き家等に指定されると、小規模住宅用地特例の対象から外れる恐れがあるため注意が必要です。
固定資産税対策として、空き家の売却や賃貸があげられます。
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この記事の監修者
寺澤 正博
高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。