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空き家を相続する際に注意したい点と相続した空き家の活用方法
COLUMN

空き家を相続する際に注意したい点と相続した空き家の活用方法

公開日 2024.08.20 更新日 2024.11.15

「空き家の相続で気をつける点はある?」「相続した空き家の活法方法を教えて欲しい」などと考えていませんか。
初めての経験で戸惑っている方は多いでしょう。
空き家を相続する前に、管理方法や活用方法を考えておくことが大切です。
これらを考えずに相続すると、資産運用をうまく行えなかったり、周辺住民とトラブルになったりすることがあります。
ここでは、空き家を相続する際に注意したいポイント、資産価値がある空き家の活用方法、資産価値がない空き家の対処方法などを解説しています。
空き家の相続でお困りの方は参考にしてください。

 

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空き家を相続する際に確認すべきポイント

空き家を相続する際は、以下のポイントを確認しましょう。

【相続ポイント】

  • 空き家の権利関係
  • 資産価値があるかどうか
  • 空き家の維持費

各ポイントについて解説します。

 

関連記事:空き家を活用するにはどうしたらいい?事例と一緒に収益化をするアイディアを紹介

ポイント①空き家の権利関係

相続する空き家の権利関係は複雑になりがちです。
相続人を決めないまま所有者が亡くなると、すべての相続人に空き家を相続する権利が生じるためです。
民法では、被相続人の配偶者と一定の血族が相続人(法定相続人)と定められています。
ここでいう一定の血族は、子(第1順位)・直系尊属(第2順位)・兄弟姉妹(第3順位)です。
被相続人の配偶者(いる場合)に加え、順位の高い方が相続人になります。
相続人が複数いる場合は、1人で空き家の相続手続きを進められません。
また、相続する空き家が共有名義で、既に権利関係が複雑になっていることも考えられます。まずは、現在の権利関係を整理することが大切です。

ポイント②資産価値があるかどうか

空き家の活用方法は、資産価値で大きく異なります。
資産価値が高ければ、売却して現金化することや賃貸にだして賃料収入を得ることが考えられます。
一方で、資産価値が低い場合も、扱い方を検討しなければなりません。
所有しているとコストがかかるうえ、さまざまなリスクも生じるためです。
詳しくは後述しますが、倒壊してトラブルになる恐れや特定空き家等に指定される恐れなどがあります。
相続後の活用方法を検討するため、資産価値を正しく把握しておくことも大切です。
空き家の資産価値は、固定資産税の納税通知書に記載されている固定資産税評価額などを参考にできます。

ポイント③空き家の維持費

空き家の維持管理費もチェックしておきたいポイントとしてあげられます。
相続後の活用方法に影響を与えるためです。
たとえば、資産価値が低く、維持費が高い空き家の活用方法は売却が適切かもしれません

空き家の主な維持費として、固定資産税があげられます。
固定資産税の計算式は以下のとおりです。

固定資産税額=課税標準額(固定資産税評価額)×1.4%(市町村が決定)

課税標準に対する次の特例が設けられています。

【住宅用地特例】

  • 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):課税標準額を1/6に軽減
  • 一般住宅用地(200㎡超の部分):課税標準額を1/3に軽減

この他にも、都市計画税、修繕費、光熱水費などがかかります。

 

出典:総務省「固定資産税」

空き家を相続する際の手続き

続いて、空き家の相続に関する基本的な手続きを紹介します。

手続き①遺産分割協議をする

空き家を含む相続財産は、相続人全員の共有に属します。
共有している相続財産の分け方に関する話し合いを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議のポイントは、相続人全員が参加することと相続人全員が納得するまで話し合うことです。
遺産分割協議に期限はありませんが、被相続人の死亡を知った日から10カ月以内に相続税の申告を行わなければならないため、早めに行うことが大切です。遺産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します(必須ではありませんが相続登記で必要です)。
相続人全員が署名・押印して、各人が1通ずつ保管します。

 

出典:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」

 

関連記事:相続放棄した空き家の管理義務と管理義務から逃れる方法

手続き②相続登記を申請する

空き家を相続する方が、法務局に登記申請書などの必要書類を提出して、相続登記を行います
相続登記には、以下の登録免許税がかかります。

登録免許税額=課税標準額(固定資産税評価額)×税率(0.4%)

ただし、土地を相続した方が相続登記の前に亡くなった場合は、この方を土地の所有権の名義人とするための登記にかかる登録免許税は免除されます。
対象となる土地の価額が100万円以下の場合も同様です(いずれも2025年3月31日まで)。

また、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化しています。
遺産分割協議が成立した場合は、成立した日から3年以内に相続登記を行う必要があります。
違反すると10万円以下の過料に処される恐れがあるため注意が必要です。

 

出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

出典:国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」

出典:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地!~」

空き家を相続する際の注意点

空き家を相続する際は、以下の点に注意が必要です。

注意点①売却する場合は、3,000万控除の特例を適用する

相続で取得した被相続人の居住用財産(空き家とその土地)を売却して、一定の要件にあてはまる場合は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を適用し、譲渡所得金額から最高3,000万円を控除できます
被相続人の居住用財産(空き家)は以下の条件を全て満たす空き家です。

【要件】

  • 建築した時期が昭和56年5月31年以前
  • 区分所有建物登記をしていない
  • 相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかった

また、相続の開始があった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却しなければなりません。
売却代金が1億円以下であることも求められます。
詳しくは、国税庁公式サイトでご確認ください。

 

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

 

関連記事:空き家を売りたいときの売却方法と流れ・メリットと注意点

注意点②小規模宅地の特例を適用する

相続した土地に高額な相続税を課すと、相続人がこの土地に住んだり、この土地で事業を営んだりできなくなります
このようなトラブルを防ぐため設けられているのが「小規模宅地等の特例」です
同特例を適用すると、住居用などに用いられていた土地のうち一定のものは、所定の面積までの部分について相続税の課税価額に算入する価額の計算で減額を受けられます。
具体的には、被相続人などの居住用に用いられていた宅地で、特定居住用宅地などに該当するものは、330㎡を限度として80%の減額を受けられます。
特定居住用宅地は、所得者などの要件を満たす宅地です。
細かな要件が定められているため、詳しくは国税庁公式サイトでご確認ください。

 

出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

 

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相続する空き家に資産価値がある場合の対処法

資産価値がある空き家は、以下の活用方法を検討できます。

【活用方法】

  • 賃貸に出す
  • 自分が住む
  • 売却する

各活用方法について解説します。

活用方法①賃貸に出す

資産価値のある空き家は、賃貸物件として活用できます。
賃貸にだす主なメリットは、家賃収入を得られることです。
戸建て住宅など、ファミリー向けの物件は、入居者の入れ替わりが少ないため、安定した家賃収入を期待できます
固定資産税などの維持費を家賃収入で賄うことも可能です。
ただし、貸出前のリフォームなどに費用がかかる恐れがあります。
入居者対応を行わなければならない点や空室リスクがある点にも注意が必要です。
事業の継続性を確かめておくことが重要といえるでしょう。
不安を感じる場合は、専門家に相談することをおすすめします。

活用方法②自分が住む

相続した空き家に自分が住むことも考えられます。
メリットを感じやすいケースは次のとおりです。

【メリットを感じやすいケース】

  • 賃貸住宅に住んでいて家賃の負担が重いと感じている
  • 住んでいる家よりも相続した空き家のほうが便利

家賃の負担を抑えたい方は、満足できるケースが多いでしょう。
相続した空き家のほうが職場や学校へアクセスしやすい方なども同様です。
仕事用、週末用などの目的でセカンドハウスとして利用することも考えられます。
セカンドハウスも居住用財産であるため、条件を満たせば固定資産税などの軽減措置(住宅用地特例)を受けられます
この点も自分が住むメリットです。

 

関連記事:空き家のリノベーションにかかる費用と期間・コストを下げる方法

活用方法③売却する

資産価値がある場合は、相続した空き家の売却も検討できます。
この方法のメリットは、空き家を現金化できることと維持費がかからなくなることです。
対するデメリットは、譲渡所得(売却金額-(取得費+譲渡費用))に対して所得税がかかることといえるでしょう。
ただし、一定の要件を満たす場合は、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できます(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)。
また、空き家の売却は、遺産分割協議がまとまらないときの対策にもなりえます。
空き家を現金化(換価分割)すると、公平に遺産を分割できるためです。
空き家の相続で意見が対立するときに検討するとよいかもしれません。

相続する空き家に資産価値がない場合の対処法

相続する家に資産価値がない場合もあります。
続いて、このようなケースの対処法を紹介します。

対処法①相続放棄する

相続放棄は、被相続人のあらゆる財産を承継しないことです。
相続放棄を選択すると、空き家の管理に悩まされることはなくなります
手続きの期限は、相続の開始を知った日から3カ月以内です。
この期間内に家庭裁判所へ申し出ます。
ただし、相続放棄を選択すると、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も承継できません。よく考えて選択する必要があります。
また、空き家のリフォームなどを行うと、相続の意思があるみなされて、相続放棄を選択できなくなります。
専門家に相談しつつ、準備を進めることが大切です。

対処法②解体する

空き家の解体も検討したい対策のひとつです。
解体のメリットは、管理の手間がかからなくなることと特定空き家等に指定される恐れがなくなることです。
次のケースなどに向いています。

【向いているケース】

  • 空き家の劣化が進んでいるケース
  • 管理に手間とコストをかけられないケース

ただし、空き家を解体すると固定資産税の住宅用地特例を受けられません。

解体にかかる費用は、空き家の構造で異なります。

 

構造 相場
木造 30,000~50,000円/坪
軽量鉄骨造 50,000~70,000円/坪
鉄筋コンクリート造 60,000~80,000円/坪

作業効率なども影響するため、具体的な金額は個別の確認が必要です。

 

関連記事:空き家の解体に補助金が使える?その理由と条件について解説

対処法③寄付する

自治体の中には、空き家の寄付を受けているところがあります。
ただし、無条件で受けているわけではありません。
自治体でも活用できない場合は、寄付を受けてくれないことがあります
活用方法の例として、地域の憩いの場、地域の防災倉庫などが考えられます。
具体的な対応、条件はさまざまです。
興味がある方は、自治体の窓口で相談するとよいでしょう。

 

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空き家に資産価値がなくても放置してはならない理由

資産価値がない空き家の管理に、手間とコストをかけたくないと考える方は多いはずです。気持ちは理解できますが、放置はおすすめできません。
さまざまなトラブルが発生するためです。
ここからは、空き家の放置が勧められない理由を解説します。

 

出典:REXSOLイエポタ「空き家の放置はデメリットしかない!所有者が抱えるリスクとその解決方法を解説」

出典:兵庫県「空き家を知ろう。」

理由①倒壊・火災によって損害賠償が求められる可能性がある

空き家を放置すると、短期間で劣化が進みます。
湿った空気が建物内に滞留してカビや木材腐食菌が繁殖しやすくなったり、雨樋がつまって溢れでた雨水が外壁に浸水したりするためです。
空き家の劣化が進むと、倒壊して近隣の住民に損害を与えることがあります。
損害賠償を求められる恐れがあるため、空き家の放置はおすすめできません。

放置されている空き家には、火災のリスクもつきまといます。
失火で隣家が延焼しても、失火者が損害賠償責任を負うことはありません。
ただし、失火者に重大な過失がある場合は除きます。管理を怠っていると、損害賠償責任を認められる恐れがあるため、空き家の放置には注意が必要です。

 

出典:e-GOV法令検索「明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)」

理由②特定空き家に指定される場合がある

空き家を放置していると、特定空き家等に指定されることがあります。
特定空き家等は、次の状態にあると認められる空き家です。

【特定空き家等】

  • 放置すれば倒壊の恐れがある
  • 放置すれば衛生上有害となる恐れがある
  • 景観を著しく損ねている
  • 周辺の生活環境の保全を図るため放置が不適切

市町村長は特定空き家等に対して、必要な措置をとるように助言・指導を行えます。
状態が改善しない場合は、勧告、命令、行政代執行へと進みます。
勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例の対象から外れる、命令に違反すると50万円以下の過料に処されるため、空き家の放置は勧められません

 

出典:e-GOV法令検索「空き家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)」

理由③不法投棄・放火など犯罪の温床となるおそれがある

空き家を放置していると、犯罪に巻き込まれる恐れもあります。
身近な例としてあげられるのが不法投棄です。
雑草が覆い茂っているなど、管理が行き届いていない空き家は、ゴミ捨て場として活用されることがあります。
悪臭や害虫が発生するうえ、撤去にも費用がかかります。
適切に管理して、不法投棄を防ぐことが大切です。

また、空き家は放火のリスクも高いと考えられています。
人の気配がないうえ、敷地内にモノを放置しているケースが多いためです。
手入れの行き届いていない空き家は、放火犯から狙われる恐れがあります
この点も放置を勧められない理由です。

 

関連記事:空き家の活用事例を紹介!建物を壊さない利活用とは?

相続した空き家を適切に管理・活用しましょう

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ここでは、空き家の相続について解説しました。
空き家を相続する場合は、権利関係や資産価値を確かめておくことが大切です。
資産価値があれば、賃貸にだしたり売却したりできます。
資産価値がない場合は、放置しないように注意しましょう。
管理を怠ると、特定空き家等に指定されたり、倒壊して近隣住民から損害賠償を求められたりする恐れがあります。

 

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この記事の監修者

寺澤 正博

サワ建工株式会社 代表取締役

一級建築施工管理技士

二級建築士

高等学校を卒業後、東京トヨペットに3年間勤務。その後、「お客様の気持ちに寄り添った工事をしたい」という思いから独立をし、1989年にサワ建工株式会社を設立。空き家事業だけではなく、新築工事やリフォーム、不動産業など、人が安心して暮らせる「住」を専門に約30年間、東京・埼玉・千葉を中心に地域に根付いたサービスを展開している。東京都の空き家問題に本格的に取り組むべく、2021年から「あき家ZERO」事業を開始。空き家を何とかしたい、活用したいと考えている人へサービスを提供している。

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